OB訪問や説明会…機会激減 コロナで売り手市場一変
就活探偵団

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2020/4/22 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

就活生が例年にない逆風にさらされている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業の説明会が相次ぎ中止になり、選考活動を一時停止している企業も増えている。学生優位の「売り手市場」だった昨年までとは一変し、危機感を持ち始めた就活生たちは今何を考えているのか。探偵団がリポートする。

イラスト=強矢さつき

イラスト=強矢さつき

「OB訪問が全くできないので焦っています」

中央大4年の男子学生はこう嘆く。志望業界は不動産デベロッパーだが、まだ内定はない。15社程度にエントリーし、日々自室にこもりパソコンに向かって、ウェブ説明会やビデオ面談を細々と受け続けている。

今一番困っているのがエントリーシートでアピールすることがないことだ。OB訪問をしていれば「御社の○○様に直接お話を伺いました。△△だということで魅力に感じました」などと書けるが、それができない。ウェブ説明会で直接質問できる機会は少なく、会社のウェブサイトをのぞくだけでは書ける内容に厚みを出せない。

「同じ状況のような人と面と向かって直接話ができないのがつらい。ストレスがたまります」。外出自粛で悩みを打ち明ける場も少なく、苦悩する状態が続く。

■滑り込みセーフ

明治学院大4年の男子学生は大手流通A社の内定を3月中旬に獲得し、就活を終えた。最初は不動産や人材、化粧品業界を志望していて、A社に行く気はなかった。

A社のほかにエントリーをしたのは5社程度。ほかの企業の選考が始まっていない段階でA社の面接を重ねた。「君は何をしたい? ウチなら何でもやれるよ」など誘い文句を言われるうちに、「いい会社かも」と思うようになったという。

もしコロナがなければもっと業界研究をして違う会社に行っていたかもしれない。しかしコロナの影響で各社の説明会がどんどんなくなり情報を得る機会がなくなってしまった。周りには内定を一つもとれていない友人も多く、それに比べれば恵まれているとも思う。「僕はなんとか滑り込めて良かった」と今は自分に言い聞かせている。

新型コロナの収束が見えないなか、危機感は高まる。マイナビ(東京・千代田)が3月下旬に実施した2021年卒業予定の学生向け調査によると、先輩と比較して自分たちの就職活動が「かなり厳しくなる」「多少厳しくなる」と回答した人の合計が前年同月比61ポイント増の83%に達した。

例年盛んな合同会社説明会も今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でみられない(写真は2018年5月、都内)

例年盛んな合同会社説明会も今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でみられない(写真は2018年5月、都内)

不安の広がりとは裏腹に、現時点のデータ上では内定を持っている学生は昨年より多い。大手就職情報会社のディスコ(東京・文京)の調査では4月1日時点で34.7%と前年同月を8.3ポイント上回った。その理由はインターンシップ(就業体験)。参加したかどうかが勝負の分かれ目になっているようだ。

「今年の就活は始める時期が勝敗を決めたんですよ」。慶応大4年の男子学生はこう断言する。大手自動車メーカーが2月に開いた冬のインターンに参加。早期選考の機会を得て3月に内定を得た。ほかにも外資系コンサルティング会社の内定も持つが、本命は金融業界だ。内定を2つ持ちながらも、現在はウェブ面接をはしごする。

■来年の就活はもっと過酷?

新型コロナは早くも次年度の就活にも影響を与え始めているようだ。

「3年生向けのインターンがゴールデンウイークにあると先輩に聞いていたのに……」。こう嘆くのはメディア業界を志望する都内私大3年の男子学生。当てにしていた早期インターンの告知が今のところなく、早くも就活戦線に不安を隠せない様子だ。

就活のアピールのため受けようとしていた英語能力テスト「TOEIC」は3、4、5月が中止になった。大学で有志で開いていたメディア試験向けの作文セミナーも、4月にキャンパスが閉鎖されできなくなった。

大学の春学期は当初7月半ばまでの予定だったが、8月半ばまで延びることに。インターンは8月前半に実施するところも多いので、テストの日程と重なってしまう。「インターンは採用にもつながるので、なんとしても出たいのですが……」。不安は募るばかりだ。

では21年卒の就活はどうなるか。当初の7都府県から16日には全国に拡大された緊急事態宣言を受け、既に一部の大手企業ではエントリーシートの締め切りを遅らせたり、ウェブ上を含む面接選考をいったん停止したりする動きが出ている。

ディスコが3月下旬に実施した企業向け調査によると、採用活動を終える時期については当初の予定通りと答えた企業は24%にとどまり、「大幅に遅れる見込み」「やや遅れる見込み」が合わせて52%と半数を超えた。

さらに21年卒の採用予定数を当初計画から下方修正する見込みだと答えた企業は9%、昨年より減らすとした企業は17%に達する。業績悪化の懸念から企業の経営層からは採用を抑制しようと考える動きも出ているようだが「まだ末端の人事担当者にはその情報が下りてきていない状態だ」(採用コンサルタントの谷出正直氏)。現状は1次、2次と順調に初期面接を突破したとしても「最終面接でごっそり落とされる可能性もある」(谷出氏)との見方もある。

慶応大4年の男子学生は「内定切りのリスクに備えるために、10月の内定式まで、今持っている内定はできる限りホールドするつもりだ」と話す。厚生労働省によると新型コロナの影響で20年卒の内定を取り消した企業数は17日時点で32社で、大卒などの人数は計74人に上る。内定を入社直前まで複数持ち続ける動きは「リーマン・ショック後に多く見られた」(谷出氏)といい、今年も自己防衛に走る就活生が増えそうだ。

異例の状況下での就活。オンラインのOB・OG訪問や就活相談のサービスを利用するなど尽くす手はまだある。この状況を悲観するのではなく、今できることを着々とこなしていくことが重要だ。

(企業報道部 鈴木洋介、結城立浩、矢崎日子、永森拓馬)

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