「クロスオーバー投資家」の新興投資にもコロナの影

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コラム(テクノロジー)
2020/4/27 2:00
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 新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動にも影を落とす中、上場企業・未上場企業どちらにも投資する「クロスオーバー投資家」のスタートアップへの資金供給が減速しつつある。クロスオーバー投資家による2020年1~3月の世界全体でのスタートアップへの投資額は、過去最高だった19年10~12月に比べ3割減少した。20年4~6月も減少傾向の見込みで、スタートアップにとって厳しい環境が続きそうだ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

「クロスオーバー投資家」は従来、公開市場で投資していたが、未公開市場でも投資し始めた一握りの投資家を指す。資産運用会社、ヘッジファンド、年金基金、投資信託運用会社、投資銀行、政府系ファンド、多角経営の金融サービス会社などが含まれる。

ベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達する企業へのクロスオーバー投資家の投資件数は19年4~6月に過去最高に達した。だが足元では新型コロナの感染拡大が影を落としているようだ。

世界全体では、20年1~3月のクロスオーバー投資家が参加したVC投資件数は前の期比25%減だった。前年同期比では16%減少した。

20年1~3月期の世界のクロスオーバー投資家の活動は鈍化
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

20年1~3月期の世界のクロスオーバー投資家の活動は鈍化
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

20年1~3月のクロスオーバー投資家が参加したVC投資額は、過去最高だった19年10~12月から30%減少した。前年同期比では7%減だった。

投資が減少している理由は明確だ。クロスオーバー投資家はリスク特性の異なる様々な資産に投資を分散しており、投資全体に占めるベンチャー投資やスタートアップ投資の割合は総じてごく小さい。こうした投資家は市場の転換点にはリスク資産の配分を減らすため、スタートアップなどリスクの高い投資を手控えることが多い。

例えば、サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)や米ヘッジファンドのローン・パイン・キャピタルなどは、19年には複数のスタートアップ投資に加わったが、20年1~3月には1件も参加しなかった。

■米国

米国では、クロスオーバー投資家は厳選した投資先に重点投資したため、こうした投資家が参加したVC投資の件数は減少したが、金額は増えた。20年1~3月の投資件数は前の期比8%減だったが、投資額は30%増えて過去最高だった19年4~6月の水準だった。

米国ではクロスオーバー投資の件数は減ったが、金額は増加
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

米国ではクロスオーバー投資の件数は減ったが、金額は増加
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

20年1~3月にはローン・パイン・キャピタルなどいくつかの米投資家が投資を見合わせた。ローン・パインはこれまで国際送金サービスの英トランスファーワイズ(TransferWise)、スーツケースの米アウェー(Away)、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」の米スナップ、米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズなどに出資してきたが、20年1~3月期には1件も投資しなかった。

ローン・パインが19年に参加したVC投資は、サラダ販売を中心としたファストフードチェーン「スイートグリーン」のシリーズI(7~9月期に実施、調達額1億5000万ドル)、トラック配車サービスの米コンボイのシリーズD(10~12月期、4億ドル)だった。

■アジア

新型コロナの感染拡大でアジアでの投資活動は大きな影響を受けている。19年10~12月にはクロスオーバー投資家が参加した投資は件数も金額も急増したが、20年1~3月には件数は39%減、投資額は半分近くに減少した。

アジアではクロスオーバー投資家の活動が激減
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

アジアではクロスオーバー投資家の活動が激減
(19年1~3月期から20年1~3月期のクロスオーバー投資家が参加したVC投資の件数と金額、単位10億ドル)

20年1~3月にスタートアップ投資を見合わせたアジアの投資家は、サウジのPIFなどだった。PIFはこれまでにウーバーやデリバリー専用レストランを手がける米クラウドキッチンズ(CloudKitchens)などに出資してきた。直近では、19年7~9月に企業価値が10億ドルを超えるユニコーンの英バビロンヘルス(Babylon Health)、19年10~12月にロシアの石油プラントメーカー、ノボメット(Novomet)に出資している。

■今後の見通し

クロスオーバー投資家は20年4~6月もVC投資に慎重な姿勢を維持するだろう。新型コロナの収束は見通せず、経済面では債務や失業の増加が見込まれるため、リスクの高い環境がすぐに大きく変わるとは予測してないからだ。さらに、特に産油国の政府系ファンドは原油安の悪影響を受けるとみられる。

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