封鎖への強さ決める3要素(The Economist)

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2020/4/21 0:00
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新型コロナウイルスの感染拡大で世界各国の生産活動は計り知れぬ打撃を受けている。今や問題は事態がどれほど悪化するかだ。国際通貨基金(IMF)は14日、世界経済は1929年に始まった大恐慌以来、最悪の不況を経験する可能性が高いと指摘した。

エコノミスト誌の調べではギリシャがロックダウンによる影響を最も受けやすいとされる=ロイター

エコノミスト誌の調べではギリシャがロックダウンによる影響を最も受けやすいとされる=ロイター

しかし今回のパンデミック(世界的流行)は極めて深刻で、ロックダウン(都市封鎖)がいつまで続くかも見通せない。このため第2次世界大戦後の景気循環に基づいたエコノミストの予測モデルは、ほとんど役に立たない。米スターバックスや米デルなどの一部企業は年間の業績予想を撤回し、今後の見通しを示さないことに決めた。ただ、これだけ先行きが不透明な中にあっても、はっきりしていることが1つある。一部の国は他の国よりもはるかに苦しい状況に陥るという点だ。

経済危機では構造的な弱点が露呈し、それがさらに悪化する。本誌(The Economist)が各国の過去50年間の国内総生産(GDP)のデータを分析したところ、豊かな国のGDP伸び率は景気拡大局面では収れんする傾向があり、経済基盤が最も脆弱な国でもこれにけん引されることが分かった。だが不況期には、各国の経済状況には大きな差が生じる。2000年代前半、先進国の中で最も成長率が高い国と最も低い国との年間成長率の差は、平均5%だった。だが金融危機後の08~12年の景気後退局面では、この差が10%に広がった。

産業構造、企業の構成、財政刺激策の有効性が影響

この傾向は今回の不況でも全く変わらないだろう。景気が悪化した際、さらなる苦境に陥るのか否かを左右する3つの要素がある。その国の産業構造、企業の構成、そして財政刺激策の有効性だ。本誌はこの3つの指標に基づき、主要33カ国(経済協力開発機構=OECD=加盟国)の景気悪化による影響を大まかにランク付けした。南欧諸国などは米国や北部欧州よりもはるかに脆弱といえる(表参照)。

まず産業構造からみてみよう。ロックダウンは労働集約型産業に依存している国に大きな打撃を及ぼすだろう。多くの中欧諸国など建設業が主要産業である国はロックダウンの影響を受けやすい。観光業に依存している国も同様だ。南欧では非金融部門の雇用者の8分の1を観光業が占める。他方で、それほど多くの労働力を必要としない鉱業が主力の国には抵抗力がある。この点でカナダは、比較的影響を受けにくいといえそうだ。

産業構造は在宅勤務が可能な人の割合にも関係し、ロックダウンによる最悪の混乱を回避できるかどうかのカギになる。米シカゴ大学のジョナサン・ディンゲル氏とブレント・ニーマン氏は10日に発表した論文で、スイスでは45%の仕事が在宅勤務でできるだろうと推測した。スイスでは金融業界などパソコンさえあれば仕事ができる業界で働く人が多いからだ。

在宅勤務ができる仕事が多い国は優位

他の国はそれほど恵まれていない。製造業の一大拠点であるスロバキアでは、在宅勤務でできる仕事は3分の1に満たない。在宅勤務が難しいのは南欧も同じだ。求人検索サイトの米インディードとアイルランド中央銀行が実施した調査では、コロナ禍でも在宅勤務があまり普及していない国ほど、オンライン求人広告の数が大きく減っている。

第2の要素はどんな企業が多いかによる。小規模企業の割合が高い国は、長期休業によるダメージを受けやすい。小企業は余裕資金があったとしてもごくわずかで、収入が尽きれば存続が難しくなる。米シカゴ大学、ハーバード大学、イリノイ大学の研究者らによる調査によると、米国の小企業の4分の1は、1カ月分の手元資金さえ保有していない。イタリアとオーストラリアでは従業員10人未満の企業で働く労働者が全体の半数近くに上る。一方、英国ではこの割合は約2割で、米国ではさらに低い。

厳しい経済苦境に陥るかどうかを左右する第3の要素は財政支援策の性質だ。主要国は過去最大規模の景気刺激策を打ち出している。最も控えめな試算でも、こうした刺激策の規模は08~09年の2倍以上にのぼる。だが、その規模は国によって様々だ。大半の国の数字を見る限り、米国と日本の支援策がGDP比では最も手厚い。投資家は、日本や米国の国債は投資対象として安全とみなしているので喜んで購入するだろう。

だが、債務水準が高い一部のユーロ圏の国は慎重だ。通貨同盟の加盟国であるため、欧州中央銀行(ECB)から十分な支援を受けられないのではないかとの懸念が足かせとなっているのだろう。フランス、スペイン、イタリアによる財政支援策の規模の平均は、GDP比でみるとドイツの約半分にとどまる。

もっとも、規模と同じほど重要なのが刺激策の中身そのものだ。大まかにいえば、主要国は生活水準維持のために2つのアプローチのうちのいずれかを採用している。一部の国は家計収入の補てんに力を入れつつある。米国は家計に小切手を配り、きわめて手厚い失業給付を提供しようとしている。

日本は減収世帯に現金を給付する方向だ(編集注、日本政府は1世帯30万円を給付する措置を撤回し、国民1人あたり10万円を給付する方針を決めた)。これに対し、北部欧州とオーストラリアの支援策は、賃金を補てんして雇用を維持するのが主な狙いだ。

雇用確保を約束するのはマイナス

政府が雇用を守ると約束するのは、通常は愚策だ。労働者が衰退しつつある産業から有望な産業へと移るのを妨げ、景気回復を遅らせるからだ。しかし、コロナ不況は特別かもしれない。ロックダウンが近く解除されれば、欧州の一部の国はすぐに生産を再開できるだろう。一方で、労働者が新しい仕事と雇用先を探さなくてはならない国もある。

米国では仕事を見つけるよりも失業給付をもらい続ける方が得する労働者さえ出てくるだろう。米ウィスコンシン大学マディソン校のノア・ウィリアムズ氏によると、米6州の失業給付額は平均賃金を3割上回る可能性がある。つまり、ロックダウンが解除されても、GDPがコロナ前の水準に戻るにはもっと長い時間がかかる。新型コロナによるダメージは数カ月どころか、はるかに長期に及ぶ恐れがある。

(c)2020 The Economist Newspaper Limited. April 18, 2020 All rights reserved.

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