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1本80円や10円も? 大阪の格安自販機に迫る

とことん調査隊

大阪市の堂島川沿いに知る人ぞ知る「10円自動販売機」が存在する。文字通り10円玉を入れると飲料が出てくるのだが、何が出てくるか分からない。ちょっと勇気のいる自販機だ。そもそも大阪の街を歩くと、80円や100円など相場より安い自販機をよく目にする。格安の売値でなぜビジネスモデルが成立しているのか。記者(32)がその謎に迫った。

JR野田駅から徒歩15分。市街地の一画に10円自販機があった。通常の自販機のように商品の陳列はなく、招き猫のイラストが描いてある。「何の飲み物が出るのかお楽しみ!」。言われるがままにコインを入れてボタンを押した。ガタンと落ちてきたペットボトルは「熱中対策水」。あまり聞いたことのない商品だが、メーカー名には赤穂化成(兵庫県赤穂市)とあった。

「廃棄するなら安値でも販売した方がいい」。10円自販機を置く大阪地卵(大阪市)の釜坂晃司社長が話す。鶏卵や冷凍食品の卸売業の同社は清涼飲料も大量に仕入れている。自販機で販売しているが、賞味期限が近づくと、10円でさばく。その時々の在庫の状況を反映し、売る商品の内容も変わる。大阪府外から車で買いにくるほどの人気だ。原価割れだが、廃棄より赤字は少ない。業界関係者によると、廃棄には1キログラムあたり30円程度かかるという。

10円は極端だが、大阪には大手飲料メーカー系列より安い自販機をよく目にする。もうかるのだろうか。

大阪市や兵庫県尼崎市などで格安自販機を展開するドリンクボックス(大阪市)を訪ねた。2009年に約30台でスタートし、現在は500台規模に増えた。道端寛之社長は「格安自販機の多くは飲食料品卸が展開している」と話す。

飲料メーカーはジュースや缶コーヒーの在庫の賞味期限が残り3カ月ほどになると、卸価格を3分の2程度に落とす。在庫を廃棄するリスクを考えると、安くても出荷した方が良いとの判断だ。いち早く情報を聞きつけた卸業者がこれを買い取り、格安自販機で販売している。

大手系列の自販機にはないメーカーの飲料も充実している。例えば、「みっくちゅじゅーちゅ」で知られる日本サンガリアベバレッジカンパニー(大阪市)。「学生や若いサラリーマンがゴクゴク飲める飲料をたくさん考案してくれた」(道端社長)という。こうした中堅メーカーは地元の関西を中心に事業展開しているため、飲料を運ぶ配送料も抑えやすいようだ。

「格安自販機は薄利多売の文化のある大阪から広まった」。こう話す道端社長によると15~20年前、ある業者が安く仕入れた飲料を100円で売ったところ、「ワンコイン」の響きに消費者が集まり「飛ぶように売れた」。他の業者もまねるようになり、ここまで普及したという。ある大手飲料メーカーも「東京などにもあるが、大阪は特に多い」と指摘する。

日本自動販売システム機械工業会(東京・新宿)によると、国内の清涼飲料の自販機は18年に212万台で、過去5年で見ても減少傾向にある。コンビニエンスストアと競合するうえ、消費増税のタイミングで値上げすれば消費者の足が遠のく。価格競争が厳しい世界だ。

勝ち残る努力を続けているのがダイドードリンコだ。国内飲料事業に占める自販機での販売比率が80%以上と業界全体(30%)より高い。飲料だけでなく全国の道の駅で紙おむつを売るなど売り上げ拡大に取り組んでいる。

手ごろな値段で買える格安自販機は消費者にとってはうれしいが、その裏には激しい競争がある。持続可能なビジネスモデルについて広く議論する必要があるかもしれない。自販機のボタンを押す前に立ち止まって考えるようになった。

(杜師康佑)

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