「コロナ危機、ESG投資を止めるな」 国連関連団体

みんなのESG
2020/4/22 7:15
保存
共有
印刷
その他

ESG(環境・社会・企業統治)に配慮した投資を求める国連のPRI(責任投資原則)への署名機関が急速に増えている。世界の投資家の間でESG投資が広がっている背景や、新型コロナウイルス問題下での投資家のあり方について、事務局機能を担当する「The PRI」の最高経営責任者(CEO)、フィオナ・レイノルズ氏に聞いた。

国連PRI CEO フィオナ・レイノルズ氏
オーストラリアのディーキン大卒。同国で退職年金受託者協会の最高経営責任者(CEO)を7年務めるなど金融・年金分野の経験は約25年にのぼる。2013年から現職。

国連PRI CEO フィオナ・レイノルズ氏
オーストラリアのディーキン大卒。同国で退職年金受託者協会の最高経営責任者(CEO)を7年務めるなど金融・年金分野の経験は約25年にのぼる。2013年から現職。

■経営失敗企業との対話を薦める

──PRIの署名機関数が急速に増え約3000になったのはなぜですか。

「PRIが誕生した2006年の署名機関数は30社程度だった。ここ数年で急速に広がったのは、各国政府によるパリ協定とSDGs(持続可能な開発目標)の合意がある。気候変動リスクが大きな問題と認識されるようになり、今の投資先のリスクと見るのと同時に、低炭素社会への移行では新しい投資機会もあると考えるようになった」

「ESG投資の初期は運用収益を諦めるという誤ったコンセプトがあった。現在は多くの研究や責任投資をしてきた投資家の運用実績が、リターンを犠牲にする必要はないことを示している。日本のスチュワードシップ・コードをはじめ世界で500以上の規制が責任投資を後押ししている」

──PRIの署名機関は十分なESG投資をしているのですか。

「責任投資の方針を持たない、担当者を置かないなど、最低限の水準を満たせない署名機関は少数だが存在する。今後、除名する方針だ。2年前、こうした機関は160社程度あったが、今では大半が水準をクリアしている」

──コロナ危機でESG重視の流れが鈍化するとの見方もあります。

「責任ある長期投資はこれまでよりも重要だ。新型コロナとESG要因は本質的に関連している。生態系の破壊は、人間と動物の間で病気が広がるにつれ、さらなるパンデミック(世界的な流行)を招くリスクがある。パンデミックで数百万人の労働者が不安定な立場に追いやられるのを目の当たりにするにつれ、人権と労働権という社会的な問題にもつながる」

「今はESG投資を止める局面ではない。世界の金融機関が、社会的な側面と環境面の結果を伴う回復を描きながら危機に対応できることを示す時だ。今後数週間、数カ月、場合によっては数年の間に私たちがとる行動は、これまで以上にステークホルダー(利害関係者)がけん引する持続可能な経済のための基礎を築くだろう」

──投資家はコロナ危機下でどんな行動をとるべきでしょうか。

「投資家は長期の株主としての役割を意識し、企業に説明するよう呼びかけなくてはならない。金融セクターの頂点にいるアセットオーナーの出番だ。長期に焦点をおき、企業が新型コロナで本当に直面している問題を理解するよう務める必要がある。PRIは投資家に対して『危機下での経営に失敗している企業との対話』や『投資の意思決定時に長期の焦点をあてること』などを勧めている」

「今回、PRIはコロナ危機への対応で署名機関が参加する2つのグループを作った。1つは短期的な反応で、責任あるESGのアプローチが投資活動の前面にあるかに焦点を当てている。もう1つは将来の経済回復局面にフォーカスし、持続可能な結果を出すには金融システムはどう機能すべきかを考えるものだ」

■気象変動と人権、重要テーマに

──重要なESGテーマを教えてください。

気候変動の影響について企業に情報開示を求める動きが広がっている=ロイター

気候変動の影響について企業に情報開示を求める動きが広がっている=ロイター

「気候変動は間違いなく重要だ。15年に約190カ国が合意したパリ協定では、地球の気温上昇を産業革命前と比較して1.5度に抑えることを必要としている。だが、今のままいくと3度上昇してしまう。気候変動問題は早急に取り組むべきもので、企業も投資家も温暖化ガスの排出量削減への貢献が求められている。投資家は気候変動問題が今の投資先に影響を与えると認識しており、石油・ガス企業への投資は今後数十年のうちに減り、再生可能エネルギーに資金が向かうだろう」

「人権も重要なテーマだ。国連によると4000万人が奴隷のような扱いを受けている。7割が女児を含む女性だ。投資家は、企業のサプライチェーンの中で何が起きているかに目を向ける必要がある」

──ESGは投資の主流になりましたか。

「今は重要な投資手法として受け入れられた段階。次の10年の間には完全に主流になるだろう。人は簡単にそれまでのやり方を変えられないが、金融業界に入ってくる若者は考え方が異なる。米国証券アナリスト(CFA)の資格をとる際に、サステナビリティについて学ぶ。中銀や政府が重視するなか、投資家もサステナビリティを考えざるを得ない」

──日本でPRIの年次総会を開催する計画です。

「アジアの責任投資の半分を占める日本にとって、海外の主要な投資家にスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードなどを含めた取り組みを紹介するよい機会となるだろう。気候変動が企業に与える影響の情報開示を求める『気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)』では、世界の中で日本がリーダーシップを発揮している」

「ただ、PRIとしてはもっと多くの日本のアセットオーナーに署名してほしい。署名機関数は世界で約3000まで拡大しているが、日本からはわずか82。アセットオーナーはその3割だ。拡大の余地は大きい」

(聞き手はESGエディター 松本裕子)

「みんなのESG」は日経ヴェリタスとの連動企画。世界的に関心が高まるESGについて、知っておきたい最新トレンド、投資マネーの動き、先進企業など様々な観点から取り上げます。

クリックするとビジュアルデータへ

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]