中国、南シナ海に新行政区を設置 ベトナムは反発
【北京=羽田野主、ハノイ=大西智也】中国政府は19日までに、各国が領有権を主張する南シナ海に新たな行政区を設置すると発表した。中国民政省が海南省三沙市に行政区の「西沙区」と「南沙区」を新たに設けることを承認した。南シナ海の実効支配を強める中国にベトナムが反発しており、緊張が高まっている。
南シナ海の諸島について、中国政府はこれまで海南省三沙市が管轄すると主張してきた。今後は三沙市に、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島とその海域を管轄する「西沙区」、南沙(同スプラトリー)諸島とその海域を管轄する「南沙区」を新設する。行政組織も設ける。

西沙区政府の所在地は永興(英語名ウッディー)島、南沙区政府の所在地は永暑(英語名ファイアリクロス)礁となる。いずれも中国が軍事拠点化を進めている。
両諸島の領有権を中国と争うベトナムの外務省報道官は19日、地元メディアに「ベトナムの主権に対する侵害で強く反対する。間違った決定を取り消すべきだ」とコメントし、中国側の行為を非難した。
南シナ海を巡っては4月に入り、中国海警局の船がベトナム漁船に体当たりして沈没させた。トランプ米政権は「深刻な懸念」を表明した。
中国国営の新華社によると、4月中旬に中国の空母「遼寧」をはじめとする艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過し、台湾とフィリピン間のバシー海峡を経て南シナ海に向かったという。
周辺国からは「新型コロナウイルスへの対応に各国が追われる中で、中国がすきを突く形で実効支配を強めている」との指摘が出ている。