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「練習の鬼」ベン・ホーガンが贈る珠玉の金言集(下)

2020/5/4 3:00
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フェアウエーを見つめる鋭い眼光から「ホーク(タカ)」、ラウンド中に一言も発しない冷徹なプレーぶりから「アイスマン(氷の男)」と呼ばれたベン・ホーガン(米国)。プロになってから長い間、活躍できずにいたが、猛練習によって実力を上げ、米PGAツアー屈指のプレーヤーとなる。飛ばし屋のドローヒッターで賞金王に5回も輝くが、メジャータイトルが取れず、フェードに変えた30代後半からメジャーを次々に制し、グランドスラマーに。そんなホーガンがのこした練習における名言を贈る。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ 2020特別編集号」から)
ホーガンの教え・その6「練習ではボールを打ち続けてはいけない。25球打ったら、小休止して考える」

ホーガンは休みの日になるとホームコースのグレンガーデンCCの練習場で、1日6~8時間もボールを打っていた。その熱心さぶりは有名だが、実際にその練習を見た人は、続けてボールを打っていたわけではないと証言している。

ホーガンは球拾いをしてもらう少年キャディーを立たせ、その少年を目標にボールを打つのだが、それは決まって25個。ボールはすべて少年の前で落下して足元に転がってくる。だから球拾いはとても楽なものだった。この練習の重要な点は25個のボールを使うということにある。

ホーガンは言っている。

「ボールは25個しか使わない。それ以上ボールがあると、何も考えずにどんどん打ってしまうからだ。25個であれば、一球一球、どんなショットだったか、どんなスイングだったか、しっかりと把握できる。打ったボールはキャディーが拾って、私のもとへ持ってくるわけだが、その間小休止でき、打ったショットのことをしっかり考えることができる。注意すべきこと、また矯正すべきこと、さらに試したいことがあれば、それを次の25球で実践する。そうした考える練習をすることが、球数を打つことよりも、ものすごく大事なのです」

また、ホーガンは、考えるといっても多くのことを考えて練習してはいけないと付け加える。

「25球を打つときに、実践するテーマは1つだけ。特にスイングについては1つのことだけをテーマにして打つこと。2つも3つもテーマにしたら、何を練習しているのかわからなくなってしまう。1つのことだけをテーマにして練習するから、そのことを克服することもできるのです。1つずつ克服していけば、それが積み重なり、やがて完璧なスイングで完璧なショットが打てるようになります。ショットもスイングも一気に作り上げることなどできず、いっぺんに良くすることもできません。1つずつの積み重ねが大事なのです。練習はマシンガンのようにボールを打っても上達できません。悪い癖を覚えてしまうのがオチです」

ホーガンの教え・その7「練習ノートを作り、練習したことを克明にメモしておく」

テーマを1つだけ決めて、それができるようにすることが上達の秘訣だとホーガンは言ったが、実はそれだけではいけないのだ。

「私はその日に練習したことを手帳に書き付けていました。どんなショットを練習したかといった漠然としたことではなく、何をどう解決したかをなるべく詳細に記しておきました」

ホーガンのゴルフ手帳である。我々ならば、ゴルフノートを作ることだ。

「その日に練習したテーマや問題点はもちろん、どのようにしてうまく打てたのかの理由や、どのようなミスが生じたか、その原因なども克明に書いておくのです。私は、その手帳はいつもキャディーバッグに入れておきました」

練習してうまく打ててしまうと、何が問題だったか、どんなことに悩んでいたのかといったことはすっかり忘れてしまう。ましてやどうしてうまく打てたかといったことはすぐに忘れてしまうものだ。ホーガンはそのことを実感し、練習したことを手帳にメモしていたのだ。

「手帳を開いてみると、驚くことがあります。それは同じミスや悩みが繰り返し生じていること。解決してはまた逆戻り。根源はまったく克服できていない。そのことを発見します。ちっとも上達していないとがっくりきますが、それがゴルフの本質であることを、やがて痛いほどわかるものなのです」

うまく打てただけではいけない。完璧を求めてひたすら練習したホーガンだったが、それは逆戻りをしないためだったのだ。それこそがホーガンにとっての完璧だった。

「手帳には練習したことだけでなく、試合で起きたことも書きました。試合で起きたミスやナイスショットを書いておき、なぜミスが出たのか、うまくできたのかを考えます。そしてそれをテーマにして練習するのです」

具体的なこととして、試合でバックスイングが大き過ぎたり、テンポが速くてミスが生じたりしたときは、練習で5番アイアンの距離をドライバーで打つようにしたという。ホーガンのコンパクトなスイングはそのような練習から作り上げられたのだ。

ホーガンの教え・その8「練習したことのないショットを試合で使ったことはない」

ホーガンが猛練習によってショットに完璧を求めたのは、練習で完璧に打てても、試合ではうまく打てないことがあることを知っていたからだ。

「おおよそ正しいでは正しいことには決してならない。それと同じで、そこそこうまく打てても、それはうまく打てたことにはならない。完璧に打ててこそ、ようやく試合でも使えるのです。それでも試合では常にうまく打てるとは限らない。試合ではたった1発しか打てないからです」

実にホーガンらしい言葉だ。「ゴルフはミスして当たり前、ミスのゲームだ」などと言ったりするが、ホーガンはミスを許せない完璧主義者だった。

しかし、だからこそ、バスと正面衝突し、骨盤の複雑骨折、左足くるぶしや肋骨を骨折し、医師から再起不能と言われても、11カ月後には足を引きずりながら試合に復帰して2位、その5カ月後には全米オープンで優勝を成し遂げてしまうのだ。出場するだけでなく、出場したら完璧なゴルフを実行する精神力の強さもあったのだ。

「私は練習したことのないショットを試合で使ったことはない」

そのホーガンの言葉は、単に慎重だったわけでなく、完璧を求めていたからに他ならない。

我々アマチュアはその正反対に、ほとんど練習したこともないクラブをコースで使い、やったこともないショットを試そうとする。そんなことを平気で行いながら、良いスコアで上がろうとする。そんなゴルフは、ホーガンにとっては無謀どころか、冒涜(ぼうとく)に値するものであり、「顔を洗って出直してこい」と言われるに違いない。いや、ホーガンの冷徹さからすれば、完全に無視されることだろう。

とにかくホーガンからすれば、「一も二も練習あるのみ。コースでうまく打つには、練習で完璧なまでにうまく打てるようにすること。そして、自信は練習以外につかめることはあり得ないことがわかる」ということになる。

「上手な人ほど練習している。下手な人ほど練習しない」

練習しないでうまくなることなどあり得ないのだ。

(文:本條強、イラスト:サイトウトモミ)

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