中国、初のマイナス成長 1~3月6.8%減
新型コロナ、打撃大きく

【北京=原田逸策】中国国家統計局が17日発表した2020年1~3月の国内総生産(GDP)は物価の変動を除いた実質で前年同期と比べて6.8%減った。19年10~12月(プラス6.0%)から大きく落ちこみ、四半期の成長率としては記録がある1992年以降で初めてのマイナスだった。新型コロナウイルスの感染拡大で、1月下旬から2月に経済活動を全面的に停止した影響が出た。
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成長率は日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調査した市場予想の平均(マイナス3.7%)を下回った。景気の実感に近い名目成長率は前年同期比でマイナス5.3%だった。

中国は92年以降の四半期の成長率を公表しているが、08年のリーマン・ショック時も含めて1度もマイナスを記録したことがなかった。これまでは19年7~9月と同10~12月の6%が最低だった。91年以前は通年の成長率しかわからないが、マイナス成長は社会が大混乱した文化大革命が終わった76年(マイナス1.6%)を最後にない。
前期比の実質成長率(季節調整済み)はマイナス9.8%だった。19年10~12月(1.5%)から大きく落ちこみ、統計を遡れる10年10~12月以降で初めてのマイナス。先進国で一般的に用いる、前期比の成長率が1年間つづくと仮定した「年率換算」の成長率はマイナス34%程度になる。新型コロナの打撃の大きさを印象づける結果だ。
17日はGDPと同時に他の統計も公表した。
工業生産は1~3月に前年同期比8.4%減った。減少幅は1~2月(同13.5%減)から縮小した。3月単月では1.1%減った。主力の携帯電話やパソコン、自動車の生産が振るわなかった。
スーパーや百貨店、電子商取引(EC)などの売上高を合計した社会消費品小売総額は1~3月に前年同期比19.0%減った。減少幅は1~2月(同20.5%減)から縮小した。3月単月では15.8%減だった。自動車や家具、衣服などの販売が振るわなかった。
工場やオフィスビルの建設など固定資産投資は1~3月に前年同期比16.1%減った。減少幅は1~2月(同24.5%減)から縮小した。作業員をなかなか確保できず、春節(旧正月)休暇から工事が止まったままの事業も少なくない。
中国では1月に新型コロナの感染が急速に広がり、1月下旬から2月にかけて多くの人が自宅にこもって外出を控えた。防疫活動で物流も寸断され、原材料や部品の輸送が止まるなどして工場の生産にも響いた。3月からは経済活動も正常化しつつあるが、新型コロナの感染対策と両にらみの状況は変わっていない。
今後は習近平(シー・ジンピン)指導部がどんな経済対策を打ち出すかが焦点となる。日米欧は巨額の財政出動を柱とする対策をまとめたが、中国は包括的な対策をまだ公表していない。需要の穴を埋める巨額の財政出動をするには、開幕を3月5日から延期した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の承認が要る。当面は全人代をいつ開くかが注目される。

3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
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