緊急事態の「網」全国に拡大 自治体、対策急ぐ
休業要請に温度差 経済活動さらに縮小も

2020/4/17 0:00 (2020/4/17 5:40更新)
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人通りの少ない京都・祇園の「花見小路」(16日午後)

人通りの少ない京都・祇園の「花見小路」(16日午後)

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、政府は16日、緊急事態宣言の対象を全国に広げた。感染者増に危機感を強めていた地域では、これを機に対策をさらに進める構えだ。一方で地域経済が疲弊する中、東京などと同様の休業要請を地元に求められるのかという問題も生じる。各地の知事は難しい選択を迫られそうだ。

「法的裏付けのある国の宣言の対象に追加されれば、県民は危機感を強め、より外出を控えるようになるだろう」。10日に県独自の緊急事態宣言を出していた愛知県幹部は16日、外出自粛などを一段と強く求めていく方針を強調した。

一方、新潟県の花角英世知事は16日、「県民にお願いしてきたことを急に変えなければいけない状況が今、私には理解できない」と述べた。愛媛県の中村時広知事は「朝令暮改という言葉が浮かぶ。慌てて変えるのはどうかと思う」と話した。

一部反発が上がることも辞さず政府が緊急事態宣言を全国に広げるのは、感染拡大に歯止めがかかっていないためだ。

首都圏など7都府県に緊急事態宣言が出されたのは7日。それ以降も1日平均約500人の新規感染者が出ているうえ、7都府県以外の地域でも新規感染が増える傾向にある。感染拡大地域から帰省するなどした人が影響しているとの見方が出ていた。

地方での人出はそれほど減っていないとのデータもある。スマートフォンを通じて集めた位置情報をもとに米グーグルがまとめた報告書によると、緊急事態宣言が出ていた東京都の11日の駅の人出は平時と比べて59%減だった。これに対し、対象外の北海道は39%減にとどまった。

大型連休を控えて外出自粛が緩む懸念もあった。政府は危機感を強め、緊急事態の網を全国に掛けることにした。

新たに対象となった地域は、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく休業要請などの検討に入る。法令上の対象は1千平方メートルを超える商業施設(生活必需品売り場を除く)や、映画館、遊興施設などだ。

こうした施設は、既に宣言の対象になっている首都圏や大阪などでは休業している例が多い。一方、対象外の地方では営業を続けているケースが大半だ。各県はこうした施設に休業を求めるかを検討するとみられる。

ただ大企業が集まる都市圏とは異なり、地域経済が疲弊する地方で東京と同様の休業要請を出せば、地元に大きな打撃となる可能性がある。

企業の間には、既に営業縮小の範囲を全国に拡大する動きが出始めている。すかいらーくホールディングスは18日から全国約3000店のレストランの営業時間の短縮を決めた。現在は7都府県の約1900店で深夜営業を自粛しており、他地域にも広げる。

大林組は全国の工事現場を対象に、工事中断を前提として発注者と協議することを検討する。すでに15日時点で7都府県の工事現場約350カ所については「中断に向けた協議をする」と表明していた。

今後の具体策は各知事の判断に委ねられる。財政難の中、東京のように休業への協力金を支払う余力がある自治体はほとんどなく、在宅勤務を求めようにも「テレワークの環境も整っていない」(秋田県)。東京とは異なる環境にある地方は、さらに難しいかじ取りを求められそうだ。

政府の決断の背景には、国の対応が遅いとの批判もあったとみられる。小池百合子都知事が休業要請などでより厳格な対応を示すと、与党からも「都に比べて国は遅い」との声が上がった。報道各社の世論調査では緊急事態宣言の発令が遅いとの回答も多かった。

「だったら全国でやったほうがいいんじゃないか」。12日、安倍晋三首相は首相官邸での西村康稔経済財政・再生相らとの協議で、全国に対象を拡大する考えを漏らした。出席した事務方は、感染者の増加ペースなどを考慮すると地方にも対象を広げる必要があると説明していた。

政権内には「全国に対象を広げると、関係のない地域の経済まで傷めてしまう」との慎重論もあった。だが首相は日本全体で感染拡大を抑え込む意思を明確に示す方向にかじを切った。

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