緊急事態拡大、身構える市民 「休業補償は」「出勤は」

2020/4/16 19:24 (2020/4/17 6:32更新)
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人通りがまばらな名古屋市中心部の繁華街(16日、同市中区)

人通りがまばらな名古屋市中心部の繁華街(16日、同市中区)

新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を防ぐため、7都府県に出された政府の緊急事態宣言が16日、全国に広がった。感染者数がまだゼロの岩手県や1桁の鹿児島県では商店主が休業要請の有無に気をもむ一方で、中小企業からは「時差出勤を検討する」と身構える声も。すでに独自に緊急事態を宣言していた愛知県の市民らは「いよいよか」と緊迫感を漂わせた。

「感染者はいないが、すでに自粛ムード。客足は少なく東日本大震災後よりも深刻だ」。岩手県中央部、矢巾町の駅に近い県道沿いで飲食店を50年ほど経営してきた小笠原義彦さん(72)はため息をつく。

同県は16日午後6時現在、全国で唯一、新型コロナの感染者が出ていない。緊急事態宣言の対象となれば、知事は外出自粛や店舗の営業制限などを求めることができる。「休業しても家賃はかかる。今後も営業を続けられるかどうか」と知事の対応を気にしていた。

全国チェーンのカラオケ店や居酒屋などがすでに休業している盛岡大通商店街(盛岡市)。人通りは減ったが、規模の小さい地元の飲食店の多くは営業を続けている。

商店街協同組合の中村正樹事務局長(57)は「休業要請が出るなら東京都などのような補償は欠かせない」と強調する。売り上げがなくなれば、経営体力の乏しい小規模店は存続にかかわる。「地元の店舗がどんどん減る可能性がある。収束したころに商店街の多様性が失われていることがないようにしてほしい」と訴えた。

岩手県久慈市に本社がある地場の建設大手、宮城建設は約30人の事務職員が毎日出勤している。4月から社内会議を中止するなど警戒を強めていたが、ほぼ全員がマイカー通勤のため、在宅勤務やテレワークには踏み切っていなかった。

16日付で新型コロナに対応して事業継続計画を見直すよう各事業所に指示したばかりだが、総務部の飯田隆司部長は「緊急事態宣言が出れば、さらに上を行く対応が必要になる」と話す。時差出勤などを視野に17日朝から今後の対応について話し合う方針。「県内にまだ感染者が出ていないが、ゴールデンウイークになれば帰省者もいる。全国で緊張感を持つことは大事だ」と受け止めた。

16日午後6時現在で感染確認が4人と九州で最も少ない鹿児島県。突然の政府方針に戸惑いの声が広がった。

JR鹿児島中央駅(鹿児島市)の商業施設「アミュプラザ鹿児島」の運営会社は16日夕、発令に備えて急きょ会議を開いた。担当者は「全国で感染者が急増しているが、県内はまだ数人。どういった要請があるか分からず、すぐに対応は決められない」と話す。現在は時間を短縮し、営業を続けている。

「県民の外出は減るだろう」。鹿児島市最大の繁華街、天文館で物産店を経営する男性(66)は表情を曇らせる。7都府県を対象にした7日の緊急事態宣言を境に観光客はぱったりと姿を消したが、県内から訪れる客足に大きな変化はなく、全体の客数は以前の3割減ほどにとどまっていた。

「従業員の雇用もあり、今後が心配」と言いつつ、政府の判断には「後手後手になって県内でも感染が拡大するよりは良い」と理解を示す。「従業員やお客さんのためになんとか店を開きたいが、休業要請が出れば休むしかない」と話した。

■拡大要請した愛知や京都、理解示す声

1週間前に独自に緊急事態宣言を出していた愛知県。当初から感染者数が全国上位だっただけに、県内で働く人たちからは政府の判断に理解を示す声が多かった。

「ようやく政府が動いた」。商社の役員を務める名古屋市の男性(58)は納得した表情で語った。すでに営業の大部分を自粛し、取引先や社内の会食も控えている。「社内で感染者が出ることも想定している。対象に入ることで、在宅勤務の一層の促進を考えたい」と重く受け止めた。

県は10日、独自の「緊急事態宣言」を出して不要不急の外出自粛を呼びかけた。同市に住む男性会社員(59)は「それでもナイトクラブに出入りする人がいる。皆がより気を引き締めるために、全国での宣言が必要だった」と評価した。

一方で、名古屋市の50代の女性会社員は「愛知は感染者が多く、最初から宣言を出すべきだった。気をつけるべきなのかそうではないのか、混乱を招いた」と首をかしげる。同県豊橋市の男性(44)も「7都府県に緊急事態宣言が出た後、豊橋に『疎開』してきた人がいた。最初から全国で出せば良かった」と政府の判断の遅れを批判した。

京都府と京都市も10日に宣言の対象地域に追加するよう政府に要請すると発表していた。

地元のラーメンチェーン店で働く京都市南区の男性(65)は「神社仏閣は人がガラガラ。感染の収束が見えない以上、京都が緊急事態宣言の対象になるのはやむをえない」と話す。勤務先のラーメン店では4月に入り、客数が通常の2割まで落ち込み、28日までの自主休業を決めたばかり。「宣言が出た以上、京都でも休業する店舗は一層増えると思う。生活が維持できるよう国は十分な支援をしてほしい」と求めた。

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