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切れ場の余韻 定席で磨く 上方講談の「続き読み」挑む

文化の風

上方講談の次代を担う実力派、旭堂南龍と旭堂小南陵が相次ぎ「続き読み」に挑戦している。南龍が「一休禅師」を完結。小南陵が「妲妃(だっき)のお百」を継続中のほか、5月には南龍と小南陵がそれぞれ「村正」「正宗」という歴史に名を残す刀工の物語を4回連続披露する。かつては全段を語る続き読みが主流だったが、最近は一話完結が多い。本来のあり方を追求し、語り芸の醍醐味をアピールする。

情感豊かに表現する旭堂小南陵

「かわいそうに」「この子には何の罪もないというのに」「それもこれもみんなあのお百が、お百……」

3月20日。大阪市此花区の此花千鳥亭に、情感豊かな小南陵の美声が響いた。演目は悪女が題材の「妲妃のお百」。昨年12月に前半7回を終え、5月から9月にかけて約15回の後半シリーズを行う。観客を入れず、動画投稿サイトを使い千鳥亭からライブ配信する。

今回語ったのは後半に向けてのプロローグ。大坂の廻船(かいせん)問屋、徳兵衛がお百と密通。女房であるお高のお腹(なか)の子が番頭の子だというお百の讒言(ざんげん)を信じ、身重のお高を追い出してしまう。お高は子を産んだ後に亡くなり、今度は徳兵衛がお百に命を狙われる展開だ。

小南陵の意気込みも並々ならない。「悪女お百だけでなく様々なキャラクターが登場する。生々しさなどをどこまで出すか勉強になる。最後の『切れ場』を面白く語り、次回に期待を持たせるのも見せ所(どころ)になる」

この日の公演名は「お祝いの講談会」。小南陵が府などが主催する2019年度大阪文化祭奨励賞を受賞したからだ。本来なら満員(45席)の観客から祝福されるはずだが、新型コロナウイルス対策で間隔を空けた座席は12席。それでも惜しみない拍手が送られた。小南陵は「賞よりもお客さんの喜ぶ顔がうれしい。講談は一期一会のセッション。多くの方に会場で見ていただけるようになってほしい」と願う。

次代を担う実力派、旭堂南龍

一方の南龍の活躍も目覚ましい。18年11月には27年ぶりの真打ちに昇進し南龍を襲名。19年度に大阪市の咲くやこの花賞を受賞した。この日も小南陵と共演し、昨年12月に全7回を完結した「一休禅師」から2回目の「茶碗(ちゃわん)の諫言(かんげん)」を端正な語りで再び熱演した。

講談全盛期の明治時代には長編の続き読みが大半を占め、一話完結の「読み切り」や一部抜粋の「抜き読み」はほとんどなかったという。「続き読みにこそ本来の面白さがある」と南龍。聴衆は次回がどうなるかを楽しみに講釈場に通った。

南龍は「続き読みで芸の幅も広がった」という。というのも一話完結は面白い所を中心に語るが、続き読みは山と谷の繰り返し。谷をどう面白く表現するかが全体の出来を左右する。「『くすぐり』の笑いを入れたり、逸話を増やしたりして工夫するうちに引き出しが増えてきた」と話す。

共演はほかにもある。昨年11月から今年8月にかけて4回シリーズで南龍と小南陵が交互に語る「上方講談三代記」を進行中。5月には刀剣ブームにあやかり南龍が「妖刀村正」、小南陵が「銘刀正宗」と題し、名刀工の波瀾(はらん)万丈の人生や刀剣を巡る物語を有料でライブ配信する予定だ。

続き読みを増やせるようになったのは昨年1月に大阪唯一の定席、此花千鳥亭ができたことも大きい。定席がなかった頃は落語の合間に埋もれがちだったが、千鳥亭では講談だけを思う存分語ることができる。

東京では神田伯山の活躍で講談人気が広がってきたが、関西ではまだまだだ。人気復活へ切磋琢磨(せっさたくま)する2人。熱い語りに日々磨きをかけている。

(浜部貴司)

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