「米株は買い時」一致した2人のカリスマの判断
アメリカの著名投資家の言動から局面を探る(上)

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2020/4/18 2:00
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新型コロナウイルスの感染拡大を引き金として、2月下旬に世界各国の株式市場を襲った暴落。それから2カ月近くが過ぎようとしている中、暴落で割安になった株の購入に動き始めるべきか否か、判断に迷う人も多いだろう。そこで米国の著名投資家の言動を通して、既に買い時が訪れたかどうかを探ってみよう。

世界最大の時価総額を誇る米国の株式市場でも、買い時かどうかの判断は分かれている。「もう買いに動いて、相場の反発がもたらす利益を享受すべきだ」。こう主張する積極派の代表格が、米資産運用大手オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長兼共同創業者のハワード・マークス氏。4月6日に自社のウェブサイトで公開した顧客向けのメモで「攻めの投資に転じるべきだ」と訴えた。

■マークス氏は慎重な言い回しから明快な主張に転換

米ウォール街のご意見番の一人として常に言動が注目される同氏。コロナ・ショックがもたらした株式市場の暴落に即座に対応して、3月に複数の顧客向けメモを相次いで公開した。その中で、経済や市場についての考察や投資家が取るべき行動に対する考えを明らかにしてきた。

ただし、投資に対する考えの記述では、「現在は投資に適したタイミングの一つだと考えているが、結果として最善のタイミングとはならない可能性もある」「今資金を全額投じるべきだとは言えないが、同様に全く投資をすべきではないとも言えない」などと遠回しの表現を多用し、断定的な物言いを避けてきた。3月下旬に行った日経マネーのインタビューにも次のように答えていた。

「株価は大きく下落した。少しずつ投資をしていくのは合理的な判断だろう。ただし投資をするかどうかは、個々の投資家の姿勢次第だ。リスクを取っても積極的に投資するのか。それとも損失を回避するために守りを固めるのか。両方を同時にこなすことはできない。どちらの姿勢を取るのか。自分で決めなければならない」

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こうした控えめの姿勢が、「キャリブレーティング(バランスの再調整)」と題した4月6日のメモでは払拭された。マークス氏は投資における攻守のバランスについて論じ、「これまで慎重だった投資家は守り重視から攻め重視に転換し始めるべきだ」と主張した。

論拠として、株をはじめとするリスク資産の市場環境が明確に変わったとの見方も示した。暴落が起きる前までは、投資の不確実性が高い一方でリターン(運用益)は低かった。そのため、守りを固めることが必要だったと指摘。その上で、暴落によって株価は著しく割安になり、ハイイールド債(低格付け債)などの利付商品の利回りも急騰して、投資の魅力が増していると分析した。

さらに、「暴落による損失の多くは既に確定している」とも記し、「投資によってお金を失う懸念は薄れているので、投資によって利益を上げるために市場に参加すべきだ」と強調した。

■立志伝中のトップトレーダーも強気に転じる

著名トレーダーのマーク・ミネルヴィニ氏も、ここに来て積極派に転じた。同氏は、全米トレーダー選手権で優勝。世界的なベストセラーになったジャック・D・シュワッガーの著書『マーケットの魔術師【株式編】』(パンローリング)にトップトレーダーの一人として登場している立志伝中の投資家だ。

ミネルヴィニ氏は常日ごろから、ツイッターで相場観や投資についての考えを頻繁に発信している。暴落が発生した後は、「まだ不確実なことが多過ぎる。買い向かうべきではない」と警鐘を鳴らし続けてきた。

だが、4月9日には「市場は底を打ったようだ。歴史的に見て二番底が訪れる可能性はあるが、市場の心理と動きを見る限りでは、その可能性は低い」とツイート。さらに同月15日にも「二番底を待っていると既に有望な銘柄や市場を引っ張っている銘柄を取り逃がす可能性が高い」とツイートした。

実際、ミネルヴィニ氏はツイートで巣ごもり消費関連銘柄として急騰している動画配信のネットフリックス(NFLX)と米バイオベンチャーのアクセレロン・ファーマ(XLRN)の2銘柄を保有していることを明かした。

■「逆張り」と「順張り」では判断の仕方が異なる

実はマークス氏とミネルヴィニ氏は、投資のスタンスが大きく異なる。マークス氏は、投資している株などの価格が下がったら買い足して保有量を増やす「買い下がり」を実践する逆張りの投資家だ。対するミネルヴィニ氏は、値上がりしている株を買って、さらに値上がりしたところで売って利益を上げようとする「買い上がり」の順張り投資を主軸にしている。

このため、「買い時」と判断した根拠も異なる。マークス氏は、企業が3~5年後に上げると予想される収益に照らして暴落後の株価が著しく割安になっているから、もう買いに動いていいという立場だ。この後に二番底が来て株価が一段と下がることも想定している。そうなっても、いずれは収益力に見合う水準まで値上がりして利益を手にする可能性が高いから、買い始めるべきだと判断した。

一方、ミネルヴィニ氏は、特定の銘柄が年初来高値を付けるなどして値上がりのモメンタム(勢い)が強まり、株価の上昇が続く可能性が高いから買うべきだという判断だ。そのため、期待に反して株価が反落したら、即座に損切りすることを信条にしている。マークス氏が、値上がりの期待が変わらない銘柄については持ち続け、買い下がりも行うのとは対照的だ。

今回は強気に転じる時期が一致したが、逆張りのマークス氏と順張りのミネルヴィニ氏では売買の仕方が大きく異なり、買い時の見極め方も違う点は注目に値するだろう。この機会に、自分は順張りと逆張りのどちらのスタンスなのかを再確認してはいかがだろうか。

彼らの投資に関する考え方やノウハウは、米国株だけでなく、株式投資全般、さらには投資全般に通用するものだ。米国株以外の投資家にも参考になる点が多いはずだ。

■相場の底を待たない点は共通

2人の共通点にも注目したい。それは、相場の底で買おうとはしていない点だ。マークス氏は投資の攻守のバランスについて論じた4月6日のメモで、底を待つことの是非についての持論も展開した。相場の底を予測することは不可能だから、価格が割安だと思ったときに買うべきだと強調した。

ミネルヴィニ氏も、先に紹介したツイートには「市場は底を打ったようだ」という言及があったが、だからといって底を待っていたわけではない。別のツイートでは「『私は相場の底では決して買わない。いつも早めに売る』というロスチャイルド男爵の金言を信奉している」と記し、「買い時は相場の底ではない。底を付けた後に訪れる強気相場こそ買い時だ。それを待つ時間はたっぷりとある」と諭している。

「底値で買おうとは思わない」──。この2人のスタンスの重要性についても、買い時を見定める上で改めて肝に銘じる価値はあるだろう。

(中野目純一)

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