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中央競馬、緊急事態宣言も開催 ひそむ感染リスク

2020/4/18 3:00
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月7日に東京や大阪など7都府県を対象に緊急事態宣言が出された。無観客での開催が続く中央競馬の動向にも注目が集まったが、日本中央競馬会(JRA)は8日、無観客開催の続行を発表した。ただ、JRA職員にも感染者が複数発生。競走馬や騎手の移動制限、JRAの本部(東京都港区)閉鎖などの対策を講じているが、競馬続行による感染拡大リスクは拭いきれない。

緊急事態宣言後、初の週末となった12日の桜花賞は熱戦だった=共同

緊急事態宣言後、初の週末となった12日の桜花賞は熱戦だった=共同

緊急事態が宣言されて初めて迎えた週末の12日、阪神競馬場では3歳牝馬によるクラシックの第1弾、桜花賞(G1)が行われた。雨が降りしきるなか、重馬場をものともせず、デアリングタクト(栗東・杉山晴紀厩舎)が鮮やかな差し切り勝ちを決める見応えのあるレースだった。阪神競馬場があるのは緊急事態宣言の対象となった兵庫県の宝塚市。無観客とはいえ、宣言が出されても蹄音(ていおん)は消えなかった。

16日に対象地域は全国に拡大されたが、JRAの抱える競馬場のうち、東京(東京都府中市)、中山(千葉県船橋市)、阪神、小倉(北九州市)が緊急事態宣言の当初の対象地域内にあった。

■感染対策強化し開催続行

宣言のあった7日にJRAは対応を協議。内部でも続行か中止かで意見が分かれたもようだが、苦慮のうえ、感染対策を強化しての続行を決めた。平地オープンと障害競走を除き、18日から5月3日までのレースでは、東日本の調教拠点である美浦トレーニング・センター(茨城県美浦村)所属馬は中山・東京、西日本の栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市)所属馬は阪神・京都にしか出走できないこととした。福島競馬場(福島市)でのレースにはどちらの所属馬でも出走できるが、東西の移動を原則として制限した。

土、日曜の競馬場間の騎手の移動も一部を除いて禁じた。また、公正確保のためにレース前日から騎手が入る「調整ルーム」内での感染を防ぐため、自宅やホテルなどを「認定調整ルーム」とし、騎手がレース当日にそこから競馬場に向かうことも4月11、12日の開催から認めた。ほかにもJRA本部の閉鎖やメディアの取材人数の制限なども実施した。

水面下では19日に中山で予定される3歳クラシック三冠の第一関門、皐月賞(G1)を福島で開催する案や、19日まで予定されている阪神競馬の終了を12日に早め、18日からは京都競馬場(京都市)で開催する案など、当初の宣言の対象地域外で競馬を行うことも検討課題に上った。だが、予定通りの日程消化を目指し、感染対策を強化しての開催続行とした。

続行の背景には、こうした状況でも馬券売り上げが堅調なことがある。中央競馬は2月29日から無観客で行われ、馬券発売は電話・インターネット経由のみだが、売り上げは当初の想定より好調に推移している。直近でも4月11日は中山、阪神、福島の合計で前年比1.0%増。通常時より増える開催日さえある。

中央競馬の売り上げの1割と、利益の半分は国庫に納付されている。自宅からネットで参加できる競馬を開催することにより、週末の外出抑制につながっているという見方もある。こうした事情から多くの関係者は競馬が続くことの意義は大きいと主張する。

東西の人馬の移動制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を講じ、競馬開催は続行されている(滋賀県栗東市のJRA栗東トレーニング・センター)

東西の人馬の移動制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を講じ、競馬開催は続行されている(滋賀県栗東市のJRA栗東トレーニング・センター)

ただ、綱渡りの状態で開催を続けていることは確かだ。緊急事態宣言が出される前の4月3日、JRAは職員の新型コロナウイルスへの感染を発表。12日時点で感染者は5人を数える。

感染対策を進めても、不安な点はなお残る。まず競馬開催に伴うJRA職員の移動が多い。週末は本部や美浦、栗東両トレセンなどの事業所から、競馬場や場外発売所などに職員を派遣して競馬を開催している。遠距離の出張者も多い。

最初に感染が判明した職員も3月末に東京の本部から阪神競馬場の調整ルームに出張して執務していた。その際、3人の騎手と短時間ながらも接触していたため、4月4、5日の競馬で3騎手の騎乗が取りやめとなった。

■移動に伴うリスクは避けられない

JRAは無観客での開催が始まって以降、「できるだけ移動が少ない職員で対応するように切り替えている」というが、獣医や審判などの専門職は人員が足りず、出張せざるを得ない状況が続く。

例えば、愛知県から九州までの西日本地域では通常時、競馬場や場外発売所で400人が執務している。無観客開催やそれに伴う場外発売所の休止で、現在は140人にまで減っているが、そのうち本部や競馬学校(千葉県白井市)などからの遠距離の出張者は50人を占める。3分の1は出張者の手を借りなければならない。

厩舎関係者でも、東西の人馬の移動は抑えたとはいえ、双方の馬が出走できる福島への移動は残る。栗東からは馬運車で約10時間という長距離の移動となる。馬運車は基本的に1台に4頭を載せるが、この間、ドライバーに加え、各馬の担当者も同乗する。車内に1人でも感染者がいた場合、リスクの高い空間となる。結果的に検査で陰性だったとはいえ、美浦の厩舎従業員が発熱し、新型コロナウイルスへの感染予防措置のため11日の当該厩舎の所属馬を競走から除外する事態も発生した。

JRAはどのような状況になった場合、開催中止となるのかについて、「いまのところ、何人の騎手、あるいは関係者が陽性になったらという基準は設けていない。状況次第で適切に判断する」と説明する。明確な判断基準がないまま開催を続け、感染が拡大する――。開催続行による社会的意義が大きいことは確かだが、こうしたリスクをはらんだまま、競馬界が走り続けていることも忘れてはならないだろう。

(関根慶太郎)

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