桐谷さんがコロナ・ショックの中で注目した優待

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株主優待
日経マネー
2020/4/21 2:00
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株主優待で日々の暮らしをほぼまかなう「優待名人」として知られる桐谷広人さん。2月下旬のコロナ・ショック以降、割安になった優待株を買い進め、保有銘柄はついに1000銘柄に達したという。桐谷さんは、混乱が続く株式相場にどう向き合っているのか。

桐谷広人(きりたに・ひろと)70歳。元プロ棋士(七段)。1984年の失恋をきっかけに株式投資を始め、現在は株主優待銘柄に投資する。癒やされる人柄も人気の理由

桐谷広人(きりたに・ひろと)70歳。元プロ棋士(七段)。1984年の失恋をきっかけに株式投資を始め、現在は株主優待銘柄に投資する。癒やされる人柄も人気の理由

■株価下落で利回り4%以上の銘柄が続出

「私は、ずっと買っていますよ。2月末の暴落時には『チャンス!』と思って、たくさん買いました」と桐谷さんは明るく話す。優待と配当を合わせた総合利回りが4%以上で買い、多くの銘柄に分散投資で損切りはしない──というのが桐谷さんの信条。コロナ・ショック以降の株価下落で利回りが上がり、条件に合う銘柄が続出している。その中から厳選して買ったのが下表の銘柄。最近、株主優待を新設したものや、優待制度を拡充した銘柄が中心だ。これまでは利回りが低かったために買えなかった銘柄を積極的に買っている。また、株価上昇で一旦は売却したものの、コロナ・ショックで再び株価が下落した銘柄を改めて買い直したケースもある。

※株価などデータは4月7日時点

※株価などデータは4月7日時点

「あまりにも利回りが良過ぎて検索したら、配当利回りだけで4%以上の銘柄が1000超。2~3年前には数十社しかなかったんですよ。今は優待と配当を合わせて10%以上という銘柄も多くありますから、超バーゲンセールでした」と桐谷さんは振り返る。

■まさかの誤発注で逃した株も

ただ悲しくなる出来事もあった。山陰合同銀行(8381)の誤発注だ。同行の株主優待は1000株以上でギフトカード。かねて株価600円で買い指し値を入れていたところ2月下旬の急落で591円で約定。「でも1000株でいいのに、間違って1万株も発注していたんです。この銘柄だけに591万円も使ってしまいました。これは痛かった」

購入後に株価が上がれば売却したかったが、株価はその後も続落。損切りしない桐谷さんは持ち続けるしかなかった。「本当はノエビアホールディングス(4928)も買うつもりでした。1000株以上の優待がとてもよくて欲しかったんです。でも誤発注でノエビアまで買うことはできませんでした」。残念ながらノエビア購入計画は実現しなかったが、少しずつ証券口座に資金を移し、投資金額がさほど大きくはない銘柄をコツコツと買い続けている。今回の暴落で保有銘柄数はとうとう1000を超えたほどだ。

■過去の暴落時を乗り越えた経験が支えに

変動の激しい相場にも動ぜず淡々と株を買い続けている桐谷さん。「今回の暴落でハラハラしたとかいうことは全くありませんね」と動じない。その域に達するには、過去に暴落を経験したことが大きいという。36年に及ぶ投資歴の中で、桐谷さんは平成バブル崩壊やリーマン・ショックなど数々の暴落を経験している。「バブル崩壊の時には企業が倒産して株が紙切れになり、ITバブル崩壊時には株価が269分の1まで下落した光通信(9435)のような銘柄もありました。でも、その後、市場に残った株の株価はちゃんと回復しています。確かにコロナ・ショックで株価は当面、低迷するかもしれません。でも人間は何かあると解決する知恵を持っています。だから長期的に見れば一時的なことで、いつかは回復すると思っています」と前向きだ。

■基本は「余裕資金と分散投資」

現在のように変動が激しいマーケットでの株式投資には注意点もある。「投資は余裕資金で行い、複数銘柄に分散投資する」ということだ。

過去の暴落時で桐谷さんが最もつらかったことは、信用取引を行っていたために、追い証で売りたくない株を売ったり、生活資金までつぎ込んだりしなくてはならなかったこと。「バブル崩壊時に大変な思いをしたので信用取引はやめようと思っていたのに、また始めてしまったんですね。そこに起こったのがリーマン・ショック。お金をどうしよう……と、夜も眠れないほどでした」

そこで信用取引を一切やめ、余裕資金で現物株取引のみに徹するようにした。過去の暴落時の経験から分散投資を心掛けている。また含み損を抱えたとしても、株主優待をもらっていれば我慢し続けることはできる、と優待投資へとスタイルを変えた。「優待投資は最低単元株が最も利回りが高くなる場合が多い。だから優待株を100株ずつ買って分散投資するようにしています」

今回の下落局面は株価の下げが急で底値が見えず、買うに買えない怖さも感じる。「『落ちるナイフはつかむな』と言いますが、私のあくまで個人的な経験から言えば、落ちるナイフはどんどんつかみたい。血だらけになるかもしれませんが、時間がたてば傷も治ります。優待をもらいながら反転を待てばいいんです」

(佐藤由紀子)

[日経マネー2020年6月号の記事を再構成]

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