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保健所激務、連日深夜まで 検体回収や経路追跡に奔走

(更新)
医療機関からウイルス検査用の検体を運ぶ保健師(東京都内)=一部画像処理しています

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、最前線で業務に当たる各地の保健所。検査のための検体回収から感染経路の追跡調査など、現場の職員の仕事は過酷を極める。感染ルート追跡のための聞き取りでは、偏見などへの恐れから調査への理解も得にくい。食事の時間も満足にとれない勤務は連日深夜まで続く。ある保健師の今を取材した。

東京都西部を管轄する、ある保健所。深夜11時ごろ、1日の仕事を終えた保健師の40代の女性はため息をつきながらはたと気づいた。「ああ、何か気持ちが悪いと思ったら、昼も夜も食べてなかったのか……」

この保健所で、感染症対策を担う職員は補充要員を含めて9人。朝から深夜までの勤務は週末も続く。「無理をしてでもそれぞれ週に1日は休ませる」状態だ。

女性の担当は「積極的疫学調査」。感染者が確認された際、発症から2週間前の行動を聞き取って感染経路を推定する。発症後、2メートル以内の距離で会話するなどした「濃厚接触者」も割り出す。

接触者を含む聞き取り調査の対象は1日当たり計約50人に及ぶこともあるという。日本が感染拡大の重要施策として掲げてきたクラスター(小規模な感染者集団)対策の最前線を担う。

保健師らの出勤は午前8時半。管内の感染者は13日までで計約60人と都全体の3%程度だが、最近は感染者の報告が10件程度届く日も珍しくない。医療機関に車を走らせ、ウイルスの有無をチェックするPCR検査用の検体を回収する役割も担う。

検体は「バイオハザード」と物々しく書かれた密閉袋の中に入れられる。緩衝材と冷却剤を詰めたアイスボックスで保健所に持ち帰り、搬送業者に託して検査を担う都健康安全研究センターに送る。

感染者への聞き取り調査は困難を極める。「言いたくない。相手に迷惑がかかるだろ」と行動歴を明かしたがらない人もいる。立ち寄り先の店や企業が休業に追い込まれることや、知人が好奇の目にさらされるのを危惧するためだ。

「まず、(接触した)ご本人に今の状況を正直に伝えてあげましょう」と粘り強く説得する。

意識がない状態で搬送される人もいる。混乱する家族に患者の行動歴を尋ねるときには、「そんなことを話せる状況ではないのに」と心が痛む。

感染した人の立ち寄り先の関係者は濃厚接触者と判断されれば、14日間の健康観察の対象になる。感染者の発生対応が終わる午後6時ごろ、濃厚接触者への健康観察の連絡が始まる。

体調の変化や体温を聞き取り、必要があれば受診を促す。壁一面に張られたホワイトボードは対象者の名前でびっしり埋まっている。「ネズミ算式に増えていく。何人いるのか数える時間もない」

仕事が終わっても家族との時間は十分にとれない。9歳の娘の通う小学校は休校中で、日中の世話は夫や近くに住む父母にお願いする。感染症のプロとして、適切な感染対策をしながら仕事をしているが、娘は「ママが感染したらどうしよう」と不安がる。娘の涙ぐむ声に後ろ髪を引かれながら、職場へ足を踏み出す。

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