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株はビギナーの兄妹、暴落相場の本質を知る

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(2)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。自ら先生役として登場し、初心者である架空の若者2人に株のイロハを教えていくという筋立てです。一緒に基本を学んでいきましょう!

登場人物


実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営。株式投資で運用資産を約3億円に増やし、アーリーリタイアを果たした(容姿は本人と変えています)。

大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年(架空)。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。


ゴローの妹(架空)。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに投資を学ぶという役どころ。今回から登場。

旅行先で出会ったろくすけさんから株式投資について教わることになったゴロー(25歳)。東京に戻ってから最初の土曜日に、喫茶店でろくすけさんと待ち合わせます。先に着いていたろくすけさんの席に近づいたゴローの後ろには、別の人影が……。

ゴロー:ろくすけさん、先に来ていらっしゃったんですね。

ろくすけ:やあ、ゴロー君、しばらくぶりだね。おやっ、隣にいるのは?

ゴロー:妹のナナコです。大学の経営学部に通っていて、証券投資理論の授業を取っているそうです。ろくすけさんのことを話したら、自分も話を聞いてみたいと言って付いてきたんですよ。

ナナコ:ろくすけさん、初めまして。私もお話を伺ってもいいですか? 私が受けている講義の担当教授は、理論ばかりでなく、かなり実践的なところまで踏み込んで教えてくださるので、私もだんだん投資に興味が出てきて。

ろくすけ:それはいい授業を取りましたね。もちろん、歓迎しますよ。

「コロナ・ショック」で暴落した株式市場をどう見る?

ゴロー:早速ですが、大変なことになりましたね! 新型コロナウイルスの感染拡大を引き金に株式市場が暴落して。今も荒れ模様が続いています。僕も東京に帰ってから、日経平均株価を毎日チェックするようになったのですが、1日の内にも激しく上下に動くので、驚いています。

株式投資で資産を増やすことには依然として興味があるんですが、暴落後の市場の動きを見て、何だか怖くなってきました。「株は怖い。絶対に手を出すな」と父が言っていたのも無理もない気がして……。

ナナコ:アニキは昔から怖がりで、慎重だよねぇ。駅にも遅くとも出発の30分前には着いてないと気が済まないタイプなんだから。

ゴロー:それはおまえ、駅の風情を味わいたいからだよ。長い歴史の中で、様々な出会いと別れを演出してきた駅には、悠久のロマンが息づいているんだ。

ナナコ:そのロマンは全く分からないけど(笑)。ろくすけさん、すみません。アニキはこういう性格の人なので。

素人考えで恐縮ですが、私の見方はアニキとは違います。暴落が起きて、株価がすごく安くなったんだから、いずれは上がる。だから、今はピンチではなくチャンスなのではないかと感じています。株式市場が持ち直して本格的な上昇が始まる前に、早く買っておいた方がいいんじゃないかと。

今日付いてきたのは、そんな考えもあって、今の株式市場の状態をどう見ているのか。ろくすけさんのお見立てを伺いたかったからなんです。

ろくすけ:なるほど。二人の話はどちらもとてもよく分かるよ。ゴロー君の駅の話もね(笑)。

二人に共通して言えるのは、相場がこれからどう動くのか、その行方を気にし過ぎているということだ。株式の売買に今参加している人たちは、先行きが不透明だからとてもヒステリックになっている。それが株式市場全体に大きな影響を及ぼしていると思う。日経平均が一日で数百円も下がったら、翌日には逆に数百円上がったりする今の変動の激しい市場は、株式投資を長年続けてきたベテランの個人投資家でも対処が難しい。

ミスター・マーケットの不可解な動き

ゴロー:ただひたすら株価が下がっていくのかと思えば、国が緊急事態宣言を出すとなったら急に盛り返したりして、全く理解に苦しみます。

ろくすけ:そうだね。今の市場の動きは、もう理屈で説明が付くものではない。個別企業の株価の動きを見てみよう。これは、私が保有しているHOYA(7741) の株価の推移を示したチャートだ。

HOYAはメガネレンズや医療用の内視鏡、半導体や液晶の製造工程で使う部品や材料などを製造している。この会社の株価は、今年2月26日の終値では1万60円だったが、3月13日には7737円まで下げる場面があった。割合で示すと、約23%の減少だ。ところが、その2週間後の3月27日には一時1万160円まで上昇した。今度は約31%の上昇幅だ。

ゴロー君、この前、島根県の温泉津(ゆのつ)温泉で話し込んだ時に、「企業の株価は、その企業の価値の増加に伴って上昇する」と説明したのを覚えているよね?

ゴロー:企業が成長して価値が高まると、株価も高くなる。企業の成長とは業績の拡大であり、業績が拡大すれば企業の価値が高まって、株価も上がるとシンプルに考えればいい。そう教わりました。

ろくすけ:そうだ。わずか1カ月の間にHOYAの業況が目まぐるしく変わり、会社の価値が上下に2~3割も動くなんてことは、事業の内容からしてもちょっと考えにくい。でも株価は、短期には売買をしている人々の感情的な反応で動く部分が非常に大きいんだ。短期の株価変動は、「ミスター・マーケット」のご機嫌次第というわけだ。

ゴロー:ミ、ミスター・マーケット?

ろくすけ:そう。「投資の神様」と呼ばれている米国の投資家ウォーレン・バフェットの名前くらいは聞いたことがあるよね。ミスター・マーケットというのは、そのバフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムという大投資家が株式市場の特性を分かりやすく伝えるために創り出したキャラクターなんだ。

グレアムは、「市場の値付けというのは、あなたの個人事業のパートナーである、ミスター・マーケットという名の非常に世話好きな男によってなされたものだと考えなさい」と言った。

イラスト/木山綾子
 割安株投資の父 ベンジャミン・グレアムの名言
 
 この項目の締めくくりとして、例え話をしよう。ある個人企業に1000ドルの出資をしていると想像してほしい。共同出資者の一人には、ミスター・マーケットという名の非常に世話好きな男がいる。

 彼は、あなたの持ち分の現在価値に関する自分の考えを毎日教えてくれ、さらにはその価格であなたの持ち分を買い取ってもいいし、同じ単位価格で自分の持ち分を分けてもいいと言ってくる。

 彼の価値評価が、企業成長やあなた自身が考える将来性に見合っており、適切なものに思えるときもあるだろう。その反面、ミスター・マーケットはしばしば理性を失い、あなたには彼が常軌を逸した価格を提示しているように思えることもある。

 もしもあなたが慎重な投資家あるいは思慮深い実業家ならば、自分の出資分1000ドルに関する価値評価を、ミスター・マーケットの言葉によって決めるだろうか? そうするのは、あなたが彼と同意見のとき、また彼と取引したいと望むときだけである。

 彼が途方もない高値を提示してきたときに全持ち分を彼に売ることができたり、あるいは安値のときに彼の持ち分を買い取ることができれば、それはあなたにとって幸運だろう。しかし、それ以外のときには、事業内容や財務状況に関する報告書に基づいて、持ち分の価値評価について自分なりの考えを持つのが賢明なのである。

出所:ベンジャミン・グレアム、ジェイソン・ツバイク著『新賢明なる投資家』(パンローリング)

ろくすけ:ミスター・マーケットがしばしば理性を失い、常軌を逸した価格を提示する点について私なりに解釈すると、それはミスター・マーケットが情緒不安定だからだ。機嫌の良い時には企業の良いところばかり見えて非常に高い値段を付ける。逆に落ち込んでいる時にはこの世の終わりのような値段を付けてしまうというわけだ。

ナナコ:その説明だけ聞いていると、コミカルでちょっとカワイイかも! まだ株式投資を始めていないからそう感じるのでしょうけど。今は新型コロナウイルスの感染拡大によって、ミスター・マーケットさんの情緒不安定に拍車がかかっているということですね。

まずはお宝株を見極める目を持つ

ろくすけ:その通り。そしてミスター・マーケットが情緒不安定になるのは、株式市場で株の売買に参加している人は皆、程度の差こそあれ、ミスター・マーケットと同じ気質を持っているからだ。だからこそ、参加者の総和である株式市場も情緒不安定になると言い換えることもできる。

市場の参加者たちが情緒不安定になって取引したために、この世の終わりのような値段、すなわち、会社の価値に比べて著しく低い価格になった株が今はたくさんある。それらの株は、いわばバーゲンセールの状態だと言っていい。

でも、新型コロナウイルスの感染拡大が終息したら、その時には世の中の価値観や行動様式ががらりと変わっていて、もしかしたら企業としての価値が大きく損なわれて減少している会社もあるかもしれない。そうなれば、「安物買いの銭失い」になってしまう。まだ株式投資に対する知識も心構えも不十分な中で、「バーゲンセールを逃してはいけない」と焦って、株式市場にやみくもに飛び込んではいけないよ。

ゴロー:そうかぁ。生兵法も怪我のもとですよね。焦って変なものをつかんでは大変なことになる。発車ベルが鳴ったからといって、確認もせずに違う方面に向かう列車に飛び乗ってはいけない!

ろくすけ:ゴロー君はたまに本質を突いてくるよね(笑)。まさにそう。それに、バーゲンセールを狙うにしても、「お宝株」を買っておきたいだろう? 安ければ何でもいいというわけではないはずだ。

確かに株式市場の暴落で全般的に大きく下がったから、今はすごく割安な価格で買うチャンスではある。私もお宝株をお値打ち価格で手に入れるチャンスと思ったから、3月半ばごろに持ち株の中で優先順位の低い銘柄を売って、お宝と感じていた株を積極的に買った。先述したHOYAの株価も大きく下がっていたので、買い足して保有株数を増やした。もちろん、新規に買い入れた株もある。

お宝株を割安な価格で買って、その成長を見つめながら、価格が大きく上昇するのを待つ。長い時間をかけてお宝株を育てるという意識が一番大事だ。そのためには、まずお宝株の候補を見極める目を持つことが必要だ。

ゴロー:前回おっしゃっていた、企業を分析する力を身に付けることですね。

ろくすけ:そうだ。まず分析を通じて企業の現状を理解すると共に将来の姿を予測する。そして、自分なりにその企業の価値を見定めることが重要だ。

稼ぐ力が現在から将来にかけて大きいと予想される会社には、高い価値がある。稼ぐ力が時と共に強まっていけば、それに応じて会社の価値も高まっていく。このように収益力の拡大に応じて価値を高めていく会社の株こそ、お宝株だと私は考えている。

先にも確認したように、企業の価値が高まれば株価の上昇も期待できる。こうしたお宝株をその価値、すなわち適正な価格よりも大幅に割安な価格で手に入れることができれば、いずれ株価の大幅な上昇が見込めるということだから、これほど心強いことはないだろう。

ナナコ:足元の株価をはるかに上回る価値がその企業にあることを十分に理解していれば、ミスター・マーケットさんがしつこく玄関をノックしてきても、「間に合ってます」と追い返すこともできますね。

ろくすけ:その通り。その会社には高い価値があり、いずれにそれに見合う水準まで株価が上昇することが見込めると強く信じることができれば、短期の値動きに振り回されて動揺することも徐々になくなっていくよ。そのためにも、企業を分析する方法をしっかりと勉強して自分のものにすることが大事だ。

今は割安に買うために株価が割安になるタイミングを見計らう必要はまだない。景気はしばらく低迷するだろうし、株式市場もまだ荒れ続けるだろうから、割安な価格で買える局面はまた訪れる。それまでに企業を見る目をしっかりと養おう。

ゴロー・ナナコ:よろしくお願いします!

(次回に続く)

今回のまとめ
株価は短期では売買する人の感情で大きく揺れ動く

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著者 :
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