新型コロナで回復期血漿を投与 カナダが臨床試験へ

BP速報
2020/4/13 17:45
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新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供・共同

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供・共同

日経バイオテク

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法開発に関して7日、大きなニュースがあった。カナダが、COVID-19の患者を対象として、世界最大規模の臨床試験をスタートさせるという。

同臨床試験で評価するのは、回復期患者の血漿(けっしょう)を投与するという古典的な治療法である。回復期血漿を用いた治療は、感染症から回復した患者に血液を提供してもらい、患者の血漿に病原体への感染や増殖を防ぐ中和抗体があることを確認した上で、患者に投与するというものだ。インフルエンザウイルス感染症など、様々な感染症に対する治療法として、古くから行われてきた。

今回のCOVID-19に対しては、中国、シンガポール、韓国、米国で少数の患者に回復期血漿の投与が行われ、有効性が示唆されているものの、それらは治療効果を比較するための患者群(対照群)を設定した臨床試験で評価されたわけではなかったため、厳密なデザインに基づく臨床試験の実施が待たれていた。臨床試験の結果などが出ていない段階ではあるものの、感染者の急激な増大に見舞われている米国では2020年3月末に米食品医薬品局(FDA)が、患者1例を対象とした緊急臨床試験開始申請(emergency IND:eIND)を活用してCOVID-19の患者に回復期血漿を投与できるとの考えを示し、ニューヨーク州で患者への投与が始まることになっていた。

こうした状況で今回、カナダの研究グループが回復期血漿を用いた治療について、世界最大規模の臨床試験を開始すると発表したのだ。同臨床試験は、カナダのモントリオール大学、オタワ大学、トロント大学、マクマスター大学、ブリティッシュコロンビア大学など、カナダ全土の大学と病院、合計40施設が中心となり、血液センターの助けを借りて1000例を対象に実施される。

■ウイルス感染が無いことを確認できれば投与が可能

同臨床試験での回復期血漿を用いた治療の流れはこうだ。COVID-19から回復した患者の血漿中に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やエイズウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルスなどの感染が無いことを確かめた上で、通常の献血と同様、45分で採血を実施。その回復期血漿をすぐCOVID-19の患者に投与できるという。回復期血漿を用いた治療について、研究グループは、「リスクのない治療であり、神頼み(Hail Mary)かもしれないが、費用もかからず安価で、すぐに始められる治療法だ」としている。

重要なのは、同臨床試験で回復期血漿投与群に割り付けられた患者は、治癒に向かい、重篤な患者でも救命できる可能性があるということだ。回復期血漿を用いた治療の由来は、動物に毒素を注射し、その病原性を失わせる抗毒素を投与する血清療法であり、1890年代、北里柴三郎の受動免疫の発見の歴史から始まったものだ。回復期血漿を用いた治療は、患者の治療に有効であるだけではなく、健常者に投与しておくことで感染を予防できる可能性もある。

COVID-19の感染拡大で医療崩壊が起こっている国・地域だけではなく、これから医療崩壊が起こり得る日本においても、医師や看護師などの医療従事者に回復期血漿を予防目的で投与することができれば、命を懸けて新型コロナウイルスと闘っている医療従事者の精神的な支えになり、さらに、病院での感染拡大を防ぐことにもつながるだろう。今回カナダで実施される臨床試験で、回復期血漿を用いた治療の有効性が証明されれば、その意義は計り知れない。

(国立感染症研究所客員研究員、東京理科大学名誉教授 千葉丈)

[日経バイオテクオンライン 2020年4月10日掲載]

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