7割減要請も人絶えぬ都心 「仕事回らぬ」戸惑う声

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、安倍晋三首相が11日に緊急事態宣言の7都府県に要請した「オフィス出勤者7割減」。休み明けの13日朝、都市部ではそれでも出勤する人々の姿が見られた。「資料を使うため仕方なく出社した」「7割減では仕事が回らない」との声が漏れる一方、在宅勤務の本格化に備えて家電量販店にパソコン周辺機器を買いに訪れる会社員もいた。
東京都心は13日朝、気温が10度に届かない冷え込み。丸の内では雨脚が時折強まるなか、コート姿の人々が傘を差し、足早に職場に向かった。
東京都練馬区の男性(36)が勤める警備関連会社は、在宅組と出勤組が隔週で出勤している。首相の7割減要請を受けても出番の変更はなく、男性は今週は出勤。「電車に乗っている人の数も減っている。日常と違うので不安」と話す。
先週は自宅で事務仕事を中心にこなした。仕事がしやすいようにノートパソコンを新たに購入。「非常事態に慣れないが、少しでも快適に仕事ができるように工夫したい」と前向きに話した。
「社内にしかない資料を使う仕事があり、仕方なく出社した」と話すのは不動産会社勤務の男性(40)。社内は原則テレワークで、男性も在宅勤務を織り交ぜているが「テレワークが増えたからか社内システムの通信速度が遅く能率が上がらない」と不満を漏らした。
「出勤者を7割も減らせば仕事は回らなくなる」と話したのは金融会社に勤める横浜市の女性(40)。交代で在宅勤務をしているが、人が少ないので週に3日は出勤しているという。「電車は以前よりすいているが座れるほどではない。感染リスクがある中、来なくてもいいなら来たくはないのが本音」と明かした。
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大阪市の阪急大阪梅田駅構内も13日午前、多くのマスク姿の通勤客らが行き交っていた。
「乗客は少なくなったが7割までは減っていない印象」と語ったのは大阪市の部品メーカーに勤める男性会社員(47)。会社は13日から在宅勤務を本格導入したが、対象は営業など一部社員に限定。工場で品質管理や保守点検を担当する男性はこの日も50分ほどかけて通勤した。「在宅勤務をしたくてもできない人は多いのでは」と話した。
東京・霞が関の官公庁街も、変わらず出勤する人の姿がみられた。午前9時までに出勤した財務省の30代男性職員は「発令後から登庁する職員は大幅に減らしている。これ以上減らせば予算執行の作業などにも支障をきたす」と話した。
外務省の女性職員(40)は「省内に感染者が出たが、機密資料が多くて持ち帰れない仕事がほとんど」と話す。同省を含むほとんどの省庁が出勤する職員をほぼ半減させているが、「7割減らすのは非現実的」と漏らす官僚は少なくなかった。
東京・秋葉原にある家電量販店のパソコン周辺機器売り場には開店直後から会社員らの姿が目立った。千葉県浦安市の自宅でテレワークをするという会社員の男性(54)は、この日開かれる社内のウェブ会議で使う光通信用ケーブルを買うため、朝から足を運んだ。
「地元の店は感染防止のため休業中。せっかくの在宅勤務だが、その環境を整えるために結局繁華街に来ないといけないなんて」とこぼした。
川崎市のシェアオフィスを朝から訪れたのはIT企業に勤める横浜市在住の男性会社員(39)。緊急事態宣言後、原則在宅勤務になったが、自宅は臨時休校以来、小学生を含む3人の子どもがいて集中できず、やむを得ずシェアオフィスを使っている。
ただ「接続が不安定でウェブ会議がいつも途切れる」。これまでは出社することもあったが、首相の出勤7割減の要請で「さらに勤怠管理が厳しくなりそう。会社も自宅も居場所がなく、いつまで続くか」と苦笑いした。

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