「緊急事態」の週末、商店街に思わぬ人出 不安の声も

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が7都府県に緊急事態宣言を発令して初の週末。東京都心の繁華街からは人影が消えたが、生活圏にある商店街は土日とも普段とあまり変わらぬ人出でにぎわった。食品や日用品を求めに来た買い物客は「こんなに人がいるのか」と驚き、商店主からは「感染が怖い」と不安の声も漏れた。
11日午後、戸越銀座商店街(東京・品川)は、カップ麺や菓子類、洗剤などが入った袋を持った多くの買い物客が行き来していた。全長約1.3キロに約400店が軒を連ねる。学習塾やカラオケ店、大手のファミリーレストランなどに「臨時休業」の張り紙がある一方、日用雑貨や食品を扱う小規模な店の多くは営業を続けていた。
都が飲食店に営業時間の短縮を求めるなか、すし店「鮨 勢家」は11日から、にぎり1人前(税込み1050円)などランチのメニューを100円引きで提供し始めた。通常、午後10時半までの営業時間は同8時までに短縮。その分昼の営業時間を1時間延ばして午後2時までとし、ランチでの収入確保を目指す。
「通常の週末と人出は変わらない。大型商業施設が休業し、商店街に人が流れてきているのだろう」。輸入飲料などの商品補充に追われていた食品専門店の男性店長(50)はこう分析した。大型施設の休業で問屋からは普段の2~3割安く商品を仕入れられるようになり、お酒や菓子類、パスタなど日持ちする食品の売れ行きが好調。予想外の混雑ぶりに今後は入店制限も検討するという。
戸越銀座の近くに住む通訳の女性(52)は普段は駅の反対にある大型スーパーを利用するが、この日は夫と商店街を訪れて野菜やカップ麺など約10日分の食料を買い込んだ。「屋内施設は人の出入りが多く、換気も気になる。ただ、こんなに人が多いとは……」と驚きの表情を浮かべた。
ショウロンポウや唐揚げを持ち帰り販売する店の前には順番待ちの行列ができ、買い物客に「残りわずかです」などと大きな声で呼びかけている店員もいた。
衣料品販売店を営んでいる40代の女性は、週末に入る前の人出を見てきて11日から店を閉めた。「買い物に来てくれるのはありがたいが、危機感が足りないのではないか。たくさんの人を相手に接客するのが怖くなった」と話す。店では布マスクも扱っており、店舗の前に集金箱を置いて、接客を伴わない形で販売をしていた。

新宿閑散、人まばら
百貨店や商業施設が集まるJR新宿駅付近は11日、仕事中とみられるスーツ姿の人らがまばらに歩く程度で閑散としていた。

新型コロナウイルスの関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
■ワクチン・治療薬 ■国内 ■海外 ■感染状況 ■論文・調査 ■Nikkei Asia
-
【よく読まれている記事】
- 新型コロナウイルスは体内にいつまで残るのか
- 「コロナに決してかからない人」はいるのか?