G20エネ相会議、減産数値盛り込めず

【ドバイ=岐部秀光】主要20カ国・地域(G20)のエネルギー相は10日、新型コロナウイルスの感染拡大で混乱する石油市場の安定について、緊急テレビ会議を開いた。「石油輸出国機構(OPEC)プラス」の枠組みで日量1000万バレルの協調減産を打ち出したサウジアラビアやロシアが米国に協調減産への参加を求めたが、共同声明では生産量の具体的な削減目標の設定を見送った。
会議では、エネルギー市場の安定に関する短期の作業グループを創設することを決めた。声明では、エネルギー需給の不均衡が「石油・天然ガス部門を直撃し、他産業にも波及するなどして経済の回復を妨げている」と指摘した。
米国やカナダでは、急激な原油安で採算割れに陥り、生産停止に追い込まれた企業が多いとみられる。しかし、政府として具体的な供給削減の数値の発表には踏み込んでいない。
テレビ会議ではブルイエット米エネルギー長官が、今年末までに米国の原油生産量が世界全体の2%程度に相当する日量200万バレル減ると説明した。一部の市場参加者は減産数値の目標設定を期待していたが、声明には盛り込まれなかった。
ロシアやサウジは、OPECプラスによる減産について「米国の協力が条件」と認識しているもよう。米国やカナダなどで計日量500万バレル程度の減産に期待している。
ロシアのプーチン大統領は10日、トランプ米大統領と電話協議し、原油市場の安定に向けて協議を続けることで一致した。米国の減産への協力を協議したとみられる。
G20議長国で世界最大の石油輸出国でもあるサウジのアブドルアジズ・エネルギー相は10日の会議で「信頼がおけるエネルギーの供給が、医療システムや経済回復を支えるうえで重要になる」と述べ、新型コロナ危機が深刻になるなか、石油市場の安定が重要であるとの認識を強調した。

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