中国、新型コロナで広がるネット新サービス - 日本経済新聞
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中国、新型コロナで広がるネット新サービス

(更新)

新型コロナウイルスが1月から大流行した中国では、市民がいち早く巣ごもり生活を強いられた。在宅の勤務や教育、買い物でオンラインサービスの利用が増えるとともに、その範囲も広がっている。ただ日本ならプライバシーとの関係を問われそうな分野でも使われており、ある種の社会実験として参考になりそうだ。

「イノベーティブな墓参りが行われた」。中国民政省は7日、こんな声明を発表した。中国は6日まで、先祖や友人の墓参りをする伝統行事「清明節」の三連休だった。民政省は新型コロナの感染拡大を防ぐため、事前に公的な「ネット墓参り」を推奨していた。

お墓の掃除代行サービスなら日本にもあるが、中国では今年、地方政府が専用サイトを開設し、積極的にネット墓参りを募った。サイトでは「献花」「焼香」などのメニューを選択でき、当局はSNS(交流サイト)などの公式アカウントで代行の様子を流した。

価格は例えば、上海市政府は35元(約540円)を標準としたが、ネット検索すれば民営業者による1千元の豪華版の情報も出てくる。日本ではネットで弔電を打てるが、それが進化した感じだろうか。

民政省によると、延べ2631万人余りがこのサービスを使った。中央政府が薦めた手法だけに、ネット上には前向きな報道ばかりが目立つ。しかし、過去に業者が提供したネット墓参りを分析した記事には「ちょっと軽い感じがする」との市民の本音も残る。

中国では、ネット検索大手の百度(バイドゥ)などが提供するスマートフォン向け無償地図アプリが定番だが、こちらも評価の難しいサービスが登場した。新型コロナの感染者が出た地点を地図上に全てプロットし、公表しているのだ。

アプリによっては、利用者から最も近い発生地点や、発生時間を「本日」「直近7日間」などと区切って検索する機能がある。個人の感染リスク回避にはとても役に立つだろう。しかし、感染者が出た建物の名称まで特定されるため、入居する会社の信用や不動産の価格に影響しかねない。

一方で、日本のネットでも問題になっている新型コロナ関連のデマを特定する機能も現れた。ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)が運営する無償ニュースサイトは「較真」と呼ぶフェイクニュースの指摘コーナーを設けている。

例えば、「東京が4月2日にロックダウン(都市封鎖)される」との情報は3月31日時点でデマだと明記している。取材や専門家の見解をもとに「正しい」「まだ分からない」と冷静に一覧にしており、メディアとしての責任を前向きに果たしているといえる。

中国では、北京市の小さな光ディスク販売店が、03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行を機にネット通販へ転業し、現在の京東集団(JDドットコム)へと育った前例がある。感染症が生んだ新サービスをキワモノと決めつけず、注視しておくのが得策だろう。

(アジアテック担当部長 山田周平)

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