外出自粛でDVや虐待の懸念 相次ぐ相談、対策急務

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、外出自粛や休校生活が長引くなか、家庭内のドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待への懸念が強まっている。外出できないストレスや経済的な不安が引き金になり、暴力が生じやすい。支援団体への相談は増え、国や行政に相談体制の強化を求める動きも出てきた。
「休校で親子で家にこもりきり。子どもが言うことを聞かないとストレスがたまり、つい手を上げてしまう」。社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」(東京)に3月中旬以降、臨時休校を背景とした相談が増え始めた。
多くは子育て中の母親からで、日に十数件の相談が入ることもある。相談員は「活動自粛で他人とのコミュニケーションが減り、誰にも相談できず不安がたまっている」と話す。
こうした相談はDV被害者や子どもを支援する全国の関連団体にも相次いでいる。「夫が在宅ワークと子どもの休校でストレスをため、暴力を振るうようになった」「DVのため母子で家を出る準備をしていたが、自営業の夫の仕事がなくなり、監視するので避難できない」などの声が寄せられている。
全国の施設が受けた相談をまとめたNPO法人「全国女性シェルターネット」は3月30日、行政の電話相談回線や保護施設を増やすよう求める要望書を国に提出した。コロナ対策で罰則を伴う外出制限が出ているフランスやイタリアでは、政府がDV対策を講じている。北仲千里共同代表は「先手を打った対策を進める必要がある」と訴える。
「コロナ対策に伴い家にいられないDV被害者や虐待被害者を助ける支援体制を作ってください」――。3月28日からインターネット上で署名活動を始めたのは、都内で子どもの貧困対策活動などを行う社会福祉士の佐藤真紀さんだ。
佐藤さんによると、親の虐待などで家に居場所がない青少年は日ごろ、避難場所としてカラオケやネットカフェで過ごすことがあるという。「緊急事態宣言で閉鎖が広がれば行き場がなくなる」と署名を呼びかけ、約3万人が賛同。7日に都庁に提出した。
都に求めるのは、緊急避難先や簡便な相談窓口の設置など公的な支援策だ。佐藤さんは「居場所をなくした10代が犯罪に巻きこまれるリスクが高い。緊急避難先など行政の支援策がきちんと届くようにする仕組み作りも重要だ」と話している。
山梨県立大の西沢哲教授(臨床心理)は「家族が長時間過ごすことで、家庭全体が情緒的に不安定になりトラブルが起きやすい。経済的な困窮も予想され、DVや児童虐待のリスクは当然高まる」と指摘する。
休校延長や外出自粛で、身体の傷など被害者のSOSサインを地域の人たちが見つけることも難しくなる。児童相談所の職員などは、対面での相談、面会、交流を控える傾向にあり「虐待の確認がおろそかになるのでは」との懸念の声も上がる。
西沢教授は「市区町村の見守りの感度を上げるのが重要。緊急事態宣言の発令下でも、気になる家庭があれば電話だけでなく、訪問での安否確認も毅然として行うべきだ」と話している。

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