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コロナが早める経済指標の「賞味期限」

人通りが大幅に減った東京・渋谷のスクランブル交差点。主要な経済指標が緊急事態宣言の影響を織り込むのは数週間先になる

景気の悪化を示す経済指標の公表が国内外で相次いでいる。新型コロナウイルスが主因なのは明白だが、今の局面ではデータの鮮度が重要となる。感染拡大のテンポは刻々と変化しており、日本では7日に政府が東京都などに緊急事態宣言を発令する事態に追い込まれた。先行きを読む上で、各指標の調査から発表までのタイムラグを見極める必要がある。

2週間後ではもう古い?

4月上旬、米国は雇用ショックに揺れた。3日に米労働省が3月の雇用統計を発表。非農業部門の就業者数は前月と比べて70万1000人減少した。就業者の減少は2010年9月以来9年半ぶりだ。これを受けてダウ工業株30種平均は3日に反落したが、その後、コロナの感染拡大が近く峠を越えるとの期待から上昇に転じるなど、神経質な展開となっている。

注意すべきなのは、この米雇用統計は2週間前までのデータしか反映できていない点だ。足元の雇用情勢は一段の悪化が予想されるが、その度合いをどう見るかは市場関係者の中でも意見が分かれる。

経済協力開発機構(OECD)が8日発表した3月の景気先行指数(CLI)は前月を0.8ポイント下回り98.8となった。下げ幅は過去最大で、水準も2009年9月以来、10年半ぶりの低さとなった。CLIは景気循環を半年ほど先取りするとされるが、今回はOECD自身が「都市封鎖がいつまで続くか分からず、先取りの性格が大幅に失われている」と表明した。

日本では8日、内閣府が3月の景気ウオッチャー調査を発表。街角景気の現状判断指数(DI)は前月から13.2ポイント下がり、14.2まで落ち込んだ。2008年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災の直後を下回る水準で、比較可能な02年以降で最悪となった。調査期間は3月25日から31日。全国で景気に敏感な業種・職種の経営者や現場の担当者ら約2千人に現状を聞いており、指標としては鮮度が高い。

もともと景気ウオッチャーは故・堺屋太一氏が経済企画庁(現内閣府)の長官時代に「景気動向をもっと早期に把握できないか」との問題意識のもとに発案されており、政府が発表する他の経済指標に比べて、集計から発表までが速やかだ。たとえば内閣府が7日発表したのは、2月の景気動向指数。景気の現状を示す一致指数(CI、2015年=100)は95.8で、前月から0.6ポイント上昇した。同指数は9項目の統計指標から算出する。2月時点では生産や出荷の統計には影響が表れず、むしろプラスに寄与した。

政府は毎月公式の景気判断として「月例経済報告」を示す。この判断を決めるうえでも、直近の動きがわかる景気ウオッチャーは重視されている。それでも今月は緊急事態宣言の影響までは織り込めず、足元の景況感はさらに悪化している可能性が高い。

複数の指標を組み合わせる

こうした指標のタイムラグにどう向き合えばいいのか。大和証券の山本賢治エコノミストは「一つの指標で現状を捉えるのが難しい」として、一般的ではないものを含めて複数の指標を複眼的にみる重要性を指摘する。

山本氏が米景気を測る上で注目するのが、週次ベースで公開される経済指標だ。車社会である米国では外出抑制の影響が燃料消費量に表れる。サービス消費については、ホテル空室率やレストラン予約、米プロバスケットボールNBAの試合やブロードウェイ劇場の観客数などを参考にみることもあるが、イベント自体が開催されていないこともあり、現状ではマクロデータから捉えるのは難しいという。

日本国内はそもそも週次で公開される経済指標が少ない。資源エネルギー庁が発表するガソリンの店頭価格や東京電力ホールディングス(9501)の電力使用見通し(でんき予報)などエネルギー系のデータは鮮度が高く参考になりそうだ。

(平野麻理子、福井環)

[日経ヴェリタス2020年4月12日号]

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