コロナ・ショックは「直下型地震」 V字回復も?
広木隆のザ・相場道

日経マネー連載
2020/4/13 2:00
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コロナ・ショックを2007~08年のグローバル金融危機と比較する分析が増えている。確かに株価下落率や米VIX(恐怖指数)の跳ね上がり方など、いずれも当時に並ぶか、それを超えるような衝撃だ。市場で起きていることも同じように見える。損失を出したファンドがポジションをアンワインド(巻き戻し)する動きが、売りを加速させているというものだ。

当時は米リーマン・ブラザーズ破綻を引き金とする市場の大混乱に先行する格好で、割安な銘柄が一段と売り込まれ、割高な銘柄が一段と買われた。これがいわゆる「クオンツ・ショック」だ。

こうした中、割高な銘柄を売り割安な銘柄を買う「マーケット・ニュートラル戦略」を採用するファンドの多くが統計的にはあり得ないほどの損失を被った。彼らが行うペアトレード(組み合わせ取引)では、買った銘柄が上がらず、売った銘柄が一段と上がる「股裂き」状態となったためだ。

それに伴う巨額損失が、ポジションのアンワインドを引き起こした。典型が米ゴールドマン・サックスの当時の主力ファンド「グローバル・アルファ・ファンド」だ。サブプライムローン問題の余波でファンドの解約が相次ぎ、それが同ファンドのアンワインドにつながった。これが相場の下げを加速させた面がある。

今回の暴落にも似た構図があったようだ。3月半ばには異様な値動きをする銘柄が多く見られたが、やはり世界最大級のヘッジファンドのアンワインドが背景にあるとの見方がある。

■08年の相場暴落はバブル崩壊の一角

相場の風景にはデジャブ(既視感)を覚えるが、実は大きな違いがある。ファンドのアンワインドによる市場混乱のタイミングだ。

クオンツ・ショックはリーマン破綻の1年以上も前の07年8月に起きた。それに続くパリバ・ショックで世間はようやくサブプライムローンの問題が金融市場を揺さぶっていると知った。08年3月の米ベアー・スターンズの破綻を経て、その半年後、リーマン・ブラザーズの破綻へとつながった。

グローバル金融危機の本質は、金融機関が創り出したクレジット・バブルの崩壊だった。08年秋のリーマン・ブラザーズ破綻による市場の大暴落は、07年から続く未曽有のクレジット・バブル崩壊劇の、最後にあらわになった氷山の一角にすぎないのだ。

バブルは破裂すると表現されるが、実際には風船が破裂するようにではなく、穴が開いたタイヤから空気が抜けるように徐々にしぼむものだ。そして、その最終局面に阿鼻叫喚のカタストロフィー(破滅的結末)が待っている。グローバル金融危機は、危機の顕在化(07年夏)からクライマックス(08年秋)、そして収束(09年春)まで結局2年近くを要した。

■今回の相場下落で2番底はない?

それに対して、コロナ・ショックは進行のスピードが速い。コロナ・ショックは突発的に起こり、株価暴落もVIXの上昇も、信用収縮も景況感の悪化も、そしてファンドのアンワインドも一気に同時発生している。実はこの展開の速さの差が、グローバル金融危機とコロナ・ショックの本質的な違いを表している。

コロナ・ショックは直下型の激震だ。東日本大震災同様、災害が招いた危機だ。一気にセリング・クライマックスに達したとすれば逆にV字回復の可能性も高い。

結論を分かりやすく総括しておこう。リーマン・ショックの本質はクレジット・バブルの崩壊だ。だから危機の前に戻るには、時間がかかった。バブルに基づいていた経済状態にすぐに戻るにはもう一度バブルを創り出す必要があるが、そんなことは不可能だからだ。複雑骨折した経済を長い時間をかけて治癒しリハビリするしかない。

それに対して自然災害型のコロナ・ショックは感染拡大さえ収まればV字回復する可能性がある。つまり2番底はない。リーマン・ショックは市場急落の08年秋の半年後に2番底があった。今回はそれがあっても浅い可能性がある。

V字回復の予兆はある。3月末に発表された20年3月の中国のPMI(製造業購買担当者景気指数)は前月比16.3ポイント改善の52と、市場予想を大幅に上回った。予断は許さないが、これが数カ月後の日本や欧米で起こらないと考える合理的根拠もないのだ。

今年前半の日経平均予想
1万8000~2万500円
【ここに注意】 現在の値動きだけ見れば2008年の急落時と同じ。ただ、2番底ではなくV字回復型の値動きか。

広木 隆(ひろき・たかし)

国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。

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