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ラクスル、なぜオリックス宮内氏を社外取締役に?

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

印刷・物流サービスのスタートアップ、ラクスルが社外取締役にオリックスの宮内義彦シニア・チェアマン(84)を迎えた。新興企業が上場企業の大物経営者を社外取締役に据えるのは珍しい。宮内氏は、どんな役割を担うのか。日本取締役協会の会長でもある宮内氏とラクスルの松本恭摂社長(35)の2人に聞いた。

オリックスの宮内氏

――宮内氏が社外取締役に就任した経緯は。

宮内氏「ある経済賞に選考委員として参加したとき、賞の候補企業だったラクスルを初めて知った。松本さんに『1回、話しに行ってもいいですか』と言われ、2~3回話しているうちにひきずりこまれた」

松本氏「その通り。引きずり込んだ」

宮内氏「80歳を過ぎた人にそんなこと頼みますか、と思ったけれど、これまでの企業経営の経験からお役に立てるのであればと思い、お引き受けした」

松本氏「僕は会社を日本の産業のインフラに育てるような大きさにまで持っていきたいと思っている。宮内さんはリース業の領域からインフラを作った方だ。先人の常識に自分たちの常識を近づけることで、自分たちの行動を変えていけるのではないかと思った。年齢は関係ない」

――宮内氏の経験や知見を、どのように生かしていきますか。

宮内氏「30年以上も企業を経営し、たくさんの失敗を重ねてきた。しかし僕は『何事にもチャレンジするが、失敗は早く見つけて影響を小さくする。成功は早く見つけ、そこにアクセルを踏む』という方針でやってきた。だからこそ生き延びることができた。『これはいかん』と思ったらパッとやめる」

松本氏「失敗の数が多くないと大きな成功はできない。しかしどこまで粘り、どこで踏み込むか。これが難しい」

宮内氏「実際は、そんなに難しくない。会社の財務や人材の力をきっちり把握すれば、ここを突っ込んでいくと会社がおかしくなるというのがわかる。自分の会社の力をわかっていればやり過ぎかどうかがわかる。己を知ることが大事だ」

――具体的に参考になったアドバイスは。

松本氏「ソフトウエアエンジニアの採用に困っていたときに、宮内さんに『海外で採用すればいいじゃないか』と言われた。海外採用は大変だというのは言い訳だ。頭の中のストッパーが取れ、国内だけでなく海外からも優秀なエンジニアを採用しようと思うようになった。宮内さんのふとした一言に衝撃を受け、いろいろなチャレンジにつながっている」

――宮内氏は大手企業でも社外取締役を経験してきました。新興企業の社外取締役に就任し、これまでと違う点は。

宮内氏「若い社長が率いる企業の社外取締役は初めての経験だ。社外取締役の務めは会社ごとに異なる。大企業の社外取締役は経営者の執行について、本当に会社のためになっているかどうか監督・監視機能を果たすのが務めだ。暴走していると思ったらチェック機能を果たす。しかし伸び盛りの会社は違う。経営者の思いが大きく花開くように助言したい」

松本氏「ガバナンス(企業統治)にはブレーキの役割だけでなく、企業価値を上げるため経営者がアクセルを踏んでいるかを見る役割もある。ちゃんとアクセルを踏んでいるのか見てほしい。ブレーキだけを期待するのではなく、リスクをどのくらい取っていくべきなのかも宮内さんの経験を基に学びたい」

――日米の違いは。

宮内氏「米国では成果報酬の金額が大きく経営者が必死でやるのでブレーキが必要。日本はコンプライアンスやガバナンスを意識し、社長は何もしない方がいいと後ろ向きになりがちだ」

ラクスルの松本社長

――社外取締役を置く企業は増えています。

宮内氏「日本のガバナンスは緒に就いたばかりだ。社外取締役が何をするのか、頼む側も頼まれる側もわかっていないことが少なくない。形だけ整えるのではなく、本当に役に立つガバナンスを作らなくてはいけない。その在り方は会社によって少しずつ異なる」

「間違えやすいのは株主が社外取締役として入る場合だ。取締役としてすべての株主のために考えないといけないのに、株主としての立場が先行してしまうことがある」

――先輩経営者に社外取締役に入ってもらうメリットは何でしょう。

松本氏「企業は成長にしたがって前提条件が変わり、成長痛が起きる。これまでのやり方を急に改めることが必要になる場合もある。自分たちが今後向かっていく景色を見たことのある経営の先輩から、将来出てくる重要な課題を教えてもらうことができる」

(聞き手は佐藤史佳)

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