時代に挑んだ日本画に光 京都市京セラ美術館
文化の風

関西タイムライン
2020/4/10 2:01
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丹羽阿樹子「遠矢」など近代の日本画が並ぶコレクションルーム

丹羽阿樹子「遠矢」など近代の日本画が並ぶコレクションルーム

京都市美術館が大規模な改装を経て5月、京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンする。1933年の開館以来、80年以上かけて収集した所蔵品を展示する常設展示スペースを大幅に拡充。ほとんど扱わなかった現代美術にも本格的に対応する。

同館は国内で2番目に古い公立美術館。洋風建築に和風の屋根が載る本館は和洋折衷の外観はほぼそのままに内装を一新した。建物に向かって右側、南回廊1階の約1000平方メートルが常設展用「コレクションルーム」。年4回、季節ごとに展示を入れ替える。

大弓を引く女性

春展示(6月21日まで)は日本画を中心に約100点。その内の一点、丹羽阿樹子「遠矢」(35年)に目が止まった。ワンピースにハイヒールを着用した若い女性が身の丈ほどもある弓を引き絞る。今にも矢を放とうとする姿をほぼ等身大で描いた大作だ。

印象に残るのはワンピースの鮮やかな黄色。たんぽぽやスミレの咲く草原の緑色に映える。だがじっくりと見ていると、都会的な身なりの女性が大弓を引く異様さが気にかかってくる。

同館の山田諭学芸課長は「丹羽阿樹子は現在ではほとんど知られていない日本画家。『遠矢』は彼女の代表作にあたる」と話す。現在では弓矢というと数十メートル離れた的を狙ってまっすぐに矢を放つ弓道のイメージが強いが、「遠矢」とは戦場で弓矢を使った時代の実戦的な射法のこと。遠くにいる敵を狙い、上空に向けて放物線を描くように矢を放つのが特徴だ。

美しく着飾った女性が狙う矢の先には競技用の的ではなく、生きた敵がいるのかもしれない。女性のパーマネントをかけた巻き髪や真っ赤なルージュには昭和初期当時のモダンさが際立つ。「まだ女性の身分がそれほど高くなかった時代の心意気を感じさせる」(山田学芸課長)

和洋折衷の外観はそのまま

和洋折衷の外観はそのまま

同館はこれまで常設展スペースが狭かったが、今後は約3700点の豊富な所蔵品を順に鑑賞できる。夏季(6月25日~9月22日)で展示予定なのが榊原紫峰の「獅子」(27年)だ。2頭のつがいの獅子が向かい合う姿を描いた作品で、雄の獅子の下肢はいまにも獲物に飛びかかろうとするように筋が浮き立ち、画面全体に緊張感が漂う。

京都市動物園でライオンが生き餌をはむのを間近に観察して描いたといい、筋肉の表現は極めて写実的だ。だが、記号化されたような毛並みや強調された骨格には、東洋画の伝統の獅子の造形が色濃く受け継がれているように思える。

■江戸期の作品も

現代美術用に新設した展示棟が「東山キューブ」。約1000平方メートルの広さに天井までの高さも5メートルと余裕を持たせた。記念展として「杉本博司 瑠璃の浄土」(6月14日まで)を開く。光学ガラス製の五輪塔をずらりと並べ、塔の一部である球形のガラスをのぞき込むと世界各地の海が見られる作品などを展示する。

本館の北回廊は企画展のスペース。円山応挙など京都における江戸美術を紹介する「江戸から明治へ 近代への飛躍」(6月14日まで)を開催する。12月6日まで3部構成で開く開館記念展「京都の美術250年の夢」の第1部だ。

新進作家向けの展示スペース「ザ・トライアングル」も新設。新館長に就いた建築家の青木淳氏は「動物園など近隣施設を訪れた人もふらりと入りやすいよう導線を整えた。より多くの人がいろいろな目的で美術にかかわることができる、出会いの場にしたい」と話す。伝統と革新が交差する京都を代表する美術館が誕生した。

(山本紗世)

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