業務チャット「Teams」利用1.4倍 世界の在宅勤務お助け
新型コロナウイルスの感染拡大で外出を制限する国や都市が増えるのに伴い「在宅」で使うサービスの利用が急拡大している。米マイクロソフトの職場向け協業アプリは3月中旬の1週間で世界全体での利用者が4割近く増え、米スラック・テクノロジーズは1人あたりの利用量が約2割伸びた。一方で通信量の増加に伴うネットインフラへの負荷を抑えるため、動画配信各社は画質の抑制に動いている。

マイクロソフトは3月11日時点で3200万人だった協業アプリ「Teams(チームズ)」の1日あたりの利用者数が、翌週の3月18日までに1200万人増えて4400万人に達した。19年11月時点では2千万人だったので、4カ月の増加分が1週間で一気に押し寄せた格好だ。

スラックは3月10日時点で1千万人だった利用者数が25日までに1250万人に増えた。「利用者が増えるだけでなく、より深く使われるようになっている」とスチュワート・バターフィールド最高経営責任者(CEO)は言う。1人あたりのメッセージの送信量が20%増えているという。
クラウドを使う書類共有サービス、米ボックスのアーロン・レヴィCEOも「過去最高の利用水準だ」と話す。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービスの利用者も急速に増えている。
背景には、新型コロナの感染拡大を封じ込めるために不要不急の外出を禁じる動きが拡大している現実がある。

外出制限はカリフォルニア州やニューヨーク州など米国の31州(30日時点)のほか、フランスやスペイン、インドなどにも広がり、対象は世界で20億人を上回る。米調査会社グローバル・ワークプレース・アナリティクスのケイト・リスター氏によれば、米国だけで既に7500万人が在宅勤務に移行したという。ズームなどは学校の遠隔授業での利用も伸びている。
アクセスが急増するなかで、いかに接続障害を起こさないかが課題になりつつある。マイクロソフトでチームズを担当するケイディ・ダンダス氏は、データセンターでの処理能力を直近1カ月で約7倍に増やしたと明かす。インフラとしての重要性が高まるなかで、関連サービスを提供する企業の役割の重みも増している。
動画各社は負荷軽減へ画質抑制
在宅勤務やオンライン授業でのネットサービスの利用が増えるなかで、インターネットの通信網にかかる負荷への懸念も高まっている。そこで欧州連合(EU)や各地の通信会社などはトラフィック量が多く娯楽要素が強い動画配信サービスに対し、データ量を抑えるために画質を抑制するよう求め始めた。
米ネットフリックスは3月19日から欧州で、映像1秒あたりのデータ量を示す「ビットレート」を下げる取り組みを始めた。EUでデジタル政策を担当するティエリー・ブルトン欧州委員の要請に応えたもので、視聴端末や通信環境に応じてビットレートを最適化する技術を応用する。
ネットフリックスの広報担当者は「高品質なサービスを保証しつつ、25%のトラフィック削減を期待する」と話した。同社は中南米やオーストラリア、インドなどでも同様の施策に取り組んでいる。
米ユーチューブはこれまで「ハイビジョン画質(HD)」で動画を流していたが、画面を構成する画素数が4割弱で済む「標準画質(SD)」での再生を基本にするように改めた。利用者の意思でHDに切り替えることは引き続き可能だ。20日に欧州で始めたのを皮切りに、24日以降は日本を含む世界各地に対象を拡大している。
このほか、米ウォルト・ディズニーやフェイスブックなども欧州など一部地域での画質制限に動いている。米AT&Tが3月26日以降日ごとに開示しているデータによれば、同社のネットワークの1日あたりのトラフィックは前月の同じ日と比べて2~3割増のペースで推移している。
(シリコンバレー=佐藤浩実)

関連企業・業界
関連キーワード