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はんこ2万本引き取りなく 札幌の老舗、当代で閉店へ

「斉藤印房」の壁に並んだケースから、はんこを取り出す3代目の斉藤岩男さん(札幌市中心部の狸小路商店街)=共同

札幌市中心部の狸小路商店街で創業1世紀を超えるはんこ店「斉藤印房」が、3代目の斉藤岩男さん(85)の代で店を閉じる。全国的にはんこ店廃業が相次いでいることもあり、店に並ぶ戦前からの貴重なはんこを含む2万本も引き取り先はなく、廃棄を余儀なくされそうだ。

店の壁に並んだ木製ケースに、はんこがずらりと並ぶ。ツゲの木や水牛の角、象牙。素材やサイズによって、千円台から職人による「世界に一つだけのはんこ」ができる。だが、斉藤さんは「需要がなくなりつつある」とさみしげに話す。

祖父の林次郎さんが1912年ごろに小間物屋を開き、2代目で父の慶蔵さんが32年ごろにはんこを扱い始めた。斉藤さんは大学卒業後の22歳の時、慶蔵さんの病死に伴い後を継いだ。7人兄弟の長男で、教員の夢を諦めて家を支えた。急だったため、父の技術を学ぶ時間もなく、はんこ作りは職人に頼んだ。

当時は決裁など多くの書類に押印が必要で、快調に売れた。だが時代は変わり、100円ショップでもはんこを購入できるようになり、さらにペーパーレス化も進んだ。「今は昔の10分の1も売れない」と話す。

「町のはんこ屋さん」は全国的に廃業が続いており、全日本印章業協会(東京)の徳井孝生会長(53)は「手間をかけて職人が作ったはんこに価値を感じる人が減っている」と話す。同協会によると89年に4370人だった会員数は2019年、941人になった。

斉藤さんは元日を除いて毎日店を開けてきたが、自分の代で店をたたむつもりだ。営々と積み重ねてきたはんこは、同業者に委ねるにも、需要の減少などから引き取りは難しいという。「もう、はんこの時代じゃないが、さみしいよね」。斉藤さんは時を経て黒く変色したはんこを数本つかみ、手のひらで優しく転がした。

〔共同〕

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