新型コロナに貼るワクチン、米ピッツバーグ大学が開発

米ピッツバーグ大学の研究者らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の表面にある突起状のスパイク(S)タンパク質を抗原(攻撃の標的)とし、微細な針を並べた「マイクロニードルパッチ」で投与するワクチン候補を開発し、マウスで抗体価の上昇を確認したと1日に報告した。
研究者らは、SARS-CoV-2との類似性が高い重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)のコロナウイルスに関する研究を行ってきており、免疫反応の誘導において重要なSタンパク質について、豊富な情報を持っている。こうした経験が速やかな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン候補の開発に結びついた。今回開発したワクチンは、先に臨床試験が開始された、メッセンジャーRNA(mRNA)ベースのワクチンとは異なる。
ワクチンは、多数の微細な針がシート状に並んだマイクロニードルアレイ(MNA)を使ったマイクロニードルパッチで皮膚から投与する。糖とタンパク質からなるMNAは、皮膚に貼ると溶解し、含まれている抗原分子が浸透して、強力な免疫を誘導する。貼り付けても痛みはないという。マイクロニードルパッチのSARS-CoV-2ワクチンをマウスに投与したところ2週間で中和抗体が誘導されたという。
マイクロニードルワクチンは、使い捨て注射器などの滅菌に用いるガンマ線照射を行っても、その効果を維持していた。この特性は、ヒトを対象とする製品化において重要だ。また、Sタンパク質の製造には細胞を用いるため、スケールアップは容易だ。精製とマイクロニードル化も工業規模で行えるうえに、完成品は室温での輸送と保管が可能だという。
現在研究者らは米食品医薬品局(FDA)に臨床試験の開始許可を申請するための準備を進めており、今後数カ月以内に安全性を確かめる第一相の臨床試験を開始できると予想している。臨床試験終了までには通常なら1年以上かかるが、これまでに経験したことのない事態であるため、商品化までの過程が加速される可能性はあると、研究者らは考えている。
(ライター 大西淳子)
[日経バイオテクオンライン 2020年4月7日掲載]