企業、在宅勤務「原則」へ サイバー対策も課題に

2020/4/6 22:10
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在宅勤務は様々な業種で広がっている

在宅勤務は様々な業種で広がっている

緊急事態宣言が発令される見通しとなり、企業は在宅勤務で一段と踏み込んだ対応を求められる。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるには平日の外出人口を減らす必要がある。在宅勤務はすでに広まっているものの、今後は対象人数の拡大や運用の厳格化が不可欠だ。企業で運用は異なるが「原則」として在宅勤務を求める機運が高まるなか、サイバー攻撃のリスク対策なども必要になる。

ジャパンディスプレイ(JDI)は3月下旬から東京の本社で実施してきた在宅勤務を、5月の大型連休明けまで延長することを決めた。役員も対象となり、取締役会や経営会議もウェブで開催する。コロナ問題が起きる前に約200人いた本社の社員は、総務などの20人程度を除き、全員が在宅勤務となる。

キヤノンは東京都の本社と神奈川県の事業所の計5拠点で7日から17日まで、事業を部分的に休止する。先送りできない開発案件などを担当する社員は出社する一方、できるだけ在宅などでのテレワークを拡大していくという。詳細は非公表だが本社には6000人強が勤務している。

東京都の予測によると、都外からの通勤者も含めた都内で働く人の数(昼間就業者数)は、2020年で905万人という。

なかでも顧客に訪問する外勤の従業員は対応が難しい。顧客にコンサルタントやシステムエンジニア(SE)を派遣しているIT(情報技術)企業や、病院に訪問する医薬情報担当者(MR)を抱える医薬品業界などは、対応に追われている。

日本IBMはこれまで、顧客が希望すればSEを顧客の企業に出社させてきた。しかし、緊急事態宣言の発令を見据え、できる限りSEを出社させなくて済むよう、顧客への依頼を始めた。遠隔での作業への切り替えが可能かどうか、顧客企業と協議している。

米製薬大手ファイザーの日本法人は要請に応じてMRが病院を訪問する体制にしていたが、「今後は対面を避け、ウェブ会議システムなどを活用する」(同社)。MRが新型コロナに感染している場合、他の病院などに広げるリスクがあると判断した。

ロックダウン(都市封鎖)を想定した対策を検討する企業も出始めた。レストラン「デニーズ」を展開するセブン&アイ・フードシステムズは、ロックダウンが起きた場合、東京都千代田区にある本部の機能を埼玉、千葉、神奈川の3県の拠点に分散させる。役員の多くが都外に在住しており都内への交通が滞っても業務を続けられるようにし、約370ある全店の臨時休業も検討する。

在宅勤務の拡大などで懸念されるのが、サイバー攻撃のリスクだ。

米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービス「ズーム」は、米国で乗っ取り被害が多発した。主な原因は利用者の設定ミスとみられるが、米連邦捜査局(FBI)が3月に警告を発した。サイバーセキュリティー上の欠陥がソフトに見つかるなどズーム側のミスも続いており、利用を禁止している企業もある。

従業員同士のビデオ会議のやり取りが増えたことで通信回線の混雑に悩む企業も多い。セキュリティー対策のソフトウエアを手がける企業は、問い合わせの拡大を見据えた対応に動いている。

一度限りの「ワンタイムパスワード」などの認証ツールを手がける米デルテクノロジーズの日本法人、EMCジャパン(東京・渋谷)には「在宅で働く社員向けの認証ツールを追加で発注したいという問い合わせが集中している」。EMCジャパンは6日、6月末まで認証ツールを割安に提供すると発表した。

コロナの収束がみえないなか、在宅勤務で事業をどう継続していくのか。企業の試行錯誤は続く。慶応大学の鶴光太郎教授は「強制的にテレワークをすることで、抵抗があった人も『思っていた以上のことができる』と認識し始めている。働き方改革だけでなく、社会の仕組みや組織のあり方が変わる転換点になる」と話している。

(川上梓、中藤玲、島津忠承)

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