政府が「緊急事態」宣言へ、北海道に2度目の逆風

政府が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言に踏み切る方針を固め、北海道経済も難局に直面する。北海道は緊急事態の対象地域に含まれない公算が大きいが、首都圏など都市部の需要に支えられてきた観光や食産業などに与える打撃は大きい。東京に拠点を持つ企業は店舗の営業や職員の勤務体制の見直しに追われた。
政府は7日にも複数の地域を対象に住民の外出自粛などを求める緊急事態宣言を発令する方針。対象地域は東京や大阪などが想定されている。宣言の出た地域の具体的な措置は各都道府県知事が決めるが、住民の外出自粛や学校の休校、多くの人が集まる店舗への休業要請などが挙がる。
対象地域として想定される関東や関西地方に拠点を構える道内企業は対応を急ぐ。北洋銀行は6日から、東京都内の店舗で行員20人による交代勤務を始めた。感染リスクを避けるため、一部の行員は最大1週間程度の自宅待機にする。北海道銀行も都内の店舗で17人の行員による交代勤務の導入を検討している。
家具大手のカンディハウス(北海道旭川市)は都内や大阪市内のショップを土日は臨時休業にしている。今回は各知事による詳しい中身を注視しており、平日に来店客への対応を予約制にすることも検討している。3、4月の新生活スタートの時期と重なるだけに「需要は確実にある」(染谷哲義専務)とみて、情報発信に腐心している。
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本州からの人の移動は一部制限されるとみられ、北海道でも様々な影響が懸念される。外出自粛の環境下で旅行需要は望めない。すでに売り上げが落ち込んでいる道内のホテルや旅館は一層厳しい状況におかれる。札幌市中心部のホテルの担当者は「道内向けのプランも動けなくなる。客足がさらに減少する可能性がある」と話す。
緊急事態宣言による営業への影響も不透明で、対策を取りかねている施設も多い。JRタワーホテル日航札幌(札幌市)はレストランの営業を短縮したり、休止したりしているが、中村正彦マーケティング部長は「今後の状況を見てさらなる対応を考える」と話す。
HATANO観光グループ(東京・渋谷)は3月末、北海道函館市の湯の川温泉で運営する「割烹(かっぽう)旅館若松」の休業を6月末まで延長することを決めた。首都圏などの感染拡大で大型連休も集客が見込めず、4月を見込んでいた再開の判断を先送りしている。宣言が出れば休業や廃業の判断を迫られる施設も増えそうだ。
JR北海道は北海道知事から特段の要請がないかぎり、運行を休止しない方針。ただ緊急事態宣言による運休はしないとする一方、外出自粛などで利用者の減少が続けば減便には含みを残す。2月28日に出された北海道の緊急事態宣言下で利用者が激減し、一部の列車を減便していた。
札幌市営地下鉄は減便すればかえって車内での乗客同士の密度が高まる恐れがあることから、6日午後時点で減便などは検討していない。
北海道でも外出自粛やテレワークの普及で家庭の光熱費が増加する一方、企業は店舗や拠点の営業時間を短縮している。北海道内の3月の電力需要実績(速報ベース)は27.3億キロワット時と前年同月から1%減った。緊急事態宣言で工場など大口向けの消費量が減れば、エネルギー各社の業績に逆風となりそうだ。
(塩崎健太郎)

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