中国地方 全5県が往来自粛要請、緊急事態宣言にらむ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言をにらみ、中国地方の自治体は感染が広がっている地域への不要不急な往来の自粛要請を相次ぎ出している。各県は宣言の内容次第で自粛要請をさらに強める可能性もある。移動の制限で首都圏や大阪府に拠点を構える企業にも影響が出そうだ。
広島県の湯崎英彦知事は6日開いた記者会見で「東京都、大阪府、神奈川県、福岡県については不要不急の往来は控えてほしい」と話し、感染が拡大している地域への移動自粛を求めた。6日までに中国地方の全県で往来自粛の要請が出たことになる。
広島県で新型コロナの感染が確認された例は6日夕方時点で15人。首都圏などと比べて感染者が急増しているわけではないが、7人では感染経路が不明となっている。
湯崎知事は「クラスターの発生などで感染者が一気に増加する懸念もある」と話した。不特定多数の人が密集する環境を避けるように県民向けにメッセージを発信し、「今後1週間が爆発的な感染拡大を押さえ込めるかどうかの転換点だ」との見方を示した。今週の県内での感染状況次第では、週末の外出自粛の要請を出す可能性があることについても言及した。

政府は緊急事態宣言の発令準備を進めている。湯崎知事は「中身や指定された自治体の対応策を見た上で、往来自粛を強める方向だ」と話した。
感染が確認されていない島根県はこれまで県民に対して東京への往来自粛を求めてきた。丸山達也知事は6日、外出自粛が求められる他地域への行き来の自粛を要請するとともに、不要不急の来県を控えてもらうよう呼びかけた。鳥取県では宣言が出た場合、県民向けのメッセージをホームページで公開する予定だ。
県内での感染の封じ込めに追われているのは山口県。同県は6日、新型コロナ感染症対策本部の会議を開き、今後の対応策について議論した。4~5日に県内で確認された5人の感染者が会社の同僚などで、大阪出張で感染して広がった可能性があり、水際対策を一段と強化する方針だ。
すでに10都道府県への移動自粛を県民に要請してきたが、経済団体を通じて県内企業の経営者に対し、改めて感染拡大地域への出張を控えるように要請。7日から県立美術館で開催予定だった美術展(ハマスホイとデンマーク絵画)は全国から多数の来館者が見込まれるとして、当面の間は開催を見合わせることにした。
村岡嗣政知事は「東京都などで緊急事態宣言が出ても、山口県として直ちにアクションを変えることは考えていない」と話す。まずは県内での感染拡大の防止に注力する方針を強調した。
企業、一段と対応強化
広島銀行は東京、大阪、神戸、名古屋など感染が拡大している地域にも営業店を構えている。同地域の100人弱の行員に対して、時差出勤や一部業務の在宅勤務を推奨しており、営業店の継続は今後も続ける方針だ。ただ、緊急事態宣言の内容次第では顧客の訪問が厳しくなることも考えられる。同行は「メールや電話を通して顧客の資金繰り支援などに務める」と話す。
中国銀行では大阪府と兵庫県の店舗、東京支店で従業員を2班に分け、片方で感染が発生しても業務を継続できるようにした。公共交通機関の混雑を避けるための時差出勤に加え、関西の拠点ではマイカー出勤も認めている。両備グループ(岡山市)も在京拠点の約230人を対象に、原則自宅でのテレワークに移行している。
サンマルクカフェや鎌倉パスタなど関東に約300店の飲食店を展開するサンマルクホールディングスは、3月最終週から土・日曜日の店舗の休業を始め、平日の営業短縮も進めている。
感染者が確認されていない山陰の企業にも動揺が広がる。東京を中心にスイーツのグループ企業を持つ寿スピリッツは、首都圏の商業施設に入居する店舗は施設の動向に合わせ、直営店については都知事による3月下旬の外出自粛要請後は土日を休業している。松本真司取締役は「販売現場あっての社業だけに対応には苦慮している。緊急事態宣言後の動きを見て対策強化を考える」と話す。

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