ドイツ、1月6日の初動カギ コロナ大量検査可能に

2020/4/5 0:00
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国内の研究所が総出で検査にあたっている(3月26日、ベルリン)=ロイター

国内の研究所が総出で検査にあたっている(3月26日、ベルリン)=ロイター

【ベルリン=石川潤】新型コロナウイルスの感染が広がる欧州で、ドイツの低い死亡率の要因とされる大規模検査に注目が集まっている。その背景には驚くほどの初動の早さと、平時からインフルエンザなどの感染症に備えていた数百の民間の研究機関との連携がある。ドライブスルー式や自宅への訪問による検査など様々な方法を導入し、大量に検査をしても医療現場に混乱が生じないよう工夫を凝らしている。

3月上旬のある深夜。ベルリンで暮らす50代の男性のもとに防護服とマスク姿の医師が現れた。職場の同僚が新型コロナに感染したためで、訪問は事前に告げられていた。男性と妻、2人の子供に対してその場で手際よく検査を実施。男性が自己隔離に入ると、2日後には「陽性」の結果が伝えられた。

現在、ドイツの1日当たりの検査数は5万件程度で、1日2千件程度の日本の25倍に達する。日本の医療関係者からは大規模な検査をすれば医療関係者の負担が急増するとの懸念が出ている。検査を増やすにつれ、ドイツでも医療関係者の感染が増えつつある。

ただ、院内感染の抑止に向け、一般患者の治療の場から検査場所を切り離すための多くの工夫をこらしている。患者を病院に呼び出さず、医師が自宅に訪問して検査する例も少なくない。ハンブルクの民間研究所は、自宅で検査キットを使って検体を施設に送る郵送検査の取り組みも始めた。

病院外のドライブスルー式の検査も急増している。感染が疑われる患者は主治医と電話で相談して検査の予約を取り、車で病院の駐車場や公共施設の一角などに設けられた検査場を訪れる。運転席の窓を開けて顔を向けると、防護服の医療スタッフが口から検体を素早く採取。検査は5分ほどで終わり、2日以内に結果が届く仕組みだ。感染者が多いドイツ西部のニーダーザクセン州だけでもこうした院外の検査センターは30を超える。

感染リスクがどれだけ高いかを診断するインターネットのサイトやスマートフォンのアプリも登場した。設問に答えて感染の可能性を判定し、必要に応じてテレビ電話での相談予約や臨時の検査場への訪問などを勧める。ドイツでは検査で陽性と判定されても、軽症なら自宅での自己隔離が可能で、医療現場に過度な負担がかからないようにしている。

ドイツで医療崩壊を防ぎながら大規模な検査が実施できているのは、専門家の初動が早かったことも背景にある。独政府の感染症対策の専門機関であるロベルト・コッホ研究所は中国での新型コロナウイルスの検出が伝わったばかりの1月6日に内部で作業グループを設置した。

ドイツ初の感染者が見つかった1月末には2交代制に移行。ほどなく新型コロナは従来型インフルエンザよりも約10倍危険だと結論づけた。これを受け、感染が広がった場合の対応策を策定。専門医と学者、医療技術者が交代で週末も検査できる態勢を即時に立ち上げられるようにした。「早い時期に警戒態勢に入ったことで検査能力を高める時間を稼ぐことができた」(ウィーラー所長)

国の機関だけでなくドイツ全土の民間研究機関を総動員できたことも大きい。日本では検査は公的機関が中心となって担っているが、ドイツでは数百の民間機関も従事。普段はインフルエンザ検査などに使っている設備を24時間稼働できる態勢にし、検査スピードを飛躍的に高めた。処理能力が1日4千件を超える研究機関もある。

ただ、大規模検査は必要な材料や設備、スタッフの不足といった問題にも直面している。死亡率は低いが、感染者は今なお増え続けている。メルケル首相は1日「我々の目指すところからはまだかなり遠い」と語った。

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