トランプ氏、原油減産圧力 再選にらみ「口先介入」
支持基盤のシェール企業支援

2020/4/3 22:45 (2020/4/4 3:46更新)
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トランプ米大統領は国内のシェールオイル業者の経営悪化を懸念している=AP

トランプ米大統領は国内のシェールオイル業者の経営悪化を懸念している=AP

【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領が主要産油国のサウジアラビアとロシアに減産を強く働きかけ始めた。2日には両国計の減産量が日量で「1500万バレルにのぼる可能性もある」と指摘し、両国とのエネルギー担当高官による対話も進めた。発言の背景には11月の米大統領選への焦りがある。現在のような原油安が続けば支持基盤であるシェールオイル企業の業績が悪化し、トランプ氏の再選戦略に逆風が吹きかねないためだ。

「みんなにとってすばらしいニュースだ!」。トランプ氏は2日の米メディアのインタビューで、サウジとロシアが日量約1000万バレルの減産に近く合意すると指摘し、ツイッターで歓迎した。この「口先介入」で原油相場が急上昇すると、追加の書き込みで「1500万バレル」と踏み込んだ。

一連の発言を受け、ニューヨークの原油先物市場では、指標となる米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)相場が反発し、一時は前日より35%高い1バレル27ドル台に達した。北海ブレント先物も一時は50%近く上がった。米株式相場も上昇した。

トランプ氏がサウジとロシアに減産を迫るのは米国を世界最大の産油国に押し上げたシェール企業の経営が苦しくなっているためだ。3月上旬に協調減産を巡るロシアとの協議が決裂したサウジは1日から約2割の大幅増産を始めると表明し、WTIは一時、1バレル20ドルを下回った。同日には中堅のシェール企業、米ホワイティング・ペトロリアムが経営破綻した。

硬い岩盤層を砕き石油やガスを取り出す米国のシェール企業の主な操業地はペンシルベニア、オハイオ、テキサス州など。いずれも大統領選の行方を左右する激戦州だ。早期に原油価格を引き上げないとエネルギー企業の収益が一段と悪化し、激戦州でトランプ氏の求心力が低下しかねない。

新型コロナウイルスを巡る経済収縮が起こる前は、世界の石油消費が日量1億バレル強で、米、サウジ、ロシアの生産量はそれぞれ1000万バレルを超えていた。だが、新型コロナの感染拡大を防ぐための都市封鎖や国際旅客便の運航減で、世界需要は日量2000万~3000万バレル規模で減り始めたとみられている。

トランプ政権はこれまで、有数の産油国であるイラン、ベネズエラの政府や石油関連企業を経済制裁の対象に指定し、国際市場から締め出してきた。その間に米国のシェール企業が増産した。

サウジが率いる石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国は2017年に協調減産を始めたが、その穴を埋める形でシェール企業がシェアを奪った。協調減産の努力を骨抜きにしてきた米シェール企業に対し、サウジやロシアは不満を募らせた。

仮にサウジとロシアが協調減産に再び合意したとしても、トランプ氏が指摘する日量で計1000万バレルを超える大幅減産を実現するには、両国がそれぞれ生産を少なくとも4~5割は削減しなくてはならない。米国のシェール企業も減産に乗り出さない限り、実現するかどうかは不透明だ。

■6日にも減産緊急協議 世界最大の石油輸出国サウジアラビアは2日、同国が率いる石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国に緊急会合の開催を呼び掛けた。需要減に対応する協調減産の可能性を協議する。サウジは3月上旬以降、大幅増産を表明して原油価格を急落させることで、市場での存在感の大きさを誇示した。これを背景に価格決定への影響力を取り戻す狙いだ。
 ブルームバーグ通信によると、OPECとロシアなどで構成する「OPECプラス」は6日にテレビ会議を開く予定。
 サウジの緊急会合の呼び掛けで目を引いたのは対象国の拡大だ。OPECプラスに加え「ほかの産油国グループ」にも参加を求めた。シェールオイルの増産で世界最大の産油国に浮上したにもかかわらず、これまでは国際的な生産調整の枠外だった米国の存在がサウジ側の念頭にある。
 サウジはこれまで、石油市場の「需給調整役(スイングプロデューサー)」を自任してきた。1日には予告通り、石油生産の2割増産に取りかかり、ロシア、米国を加えた世界トップ3の産油国による価格とシェアを巡る「戦争」に突入した。
 原油価格の急落はサウジの財政に打撃を与える。同国の実力者ムハンマド皇太子が熱望する国営石油会社サウジアラムコの海外上場も一段と困難にする。それでも増産に踏み切ったのは、サウジを軸とした石油市場の秩序を再構築する方が長期的には利益になると判断したためかもしれない。
 サウジの強みは、1バレルあたり2.8ドルという圧倒的な生産コストの低さと、不測の事態に即応できる余剰生産能力の大きさだ。「石油の時代」が終わりに近づき、高コストのライバルが市場を去れば、自分たちが最後に残るとの自負がある。だからこそ義務づけられた水準を上回る減産で市場の安定に貢献してきた。
 こうしたサウジの犠牲への「ただ乗り」は許さない――。サウジの強引な増産には、米ロに向けたそんなメッセージが込められていた。(ドバイ=岐部秀光)
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