東芝、1部復帰を申請 長期戦略打ちやすく

東証2部の東芝は3日、同1部への復帰を東京証券取引所に申請したと発表した。経営難を受けて事業売却などの構造改革は一定の結果を出したが、デジタル技術を軸とした成長戦略は途上だ。短期的な成果を求める「物言う株主」からの圧力が強まる中、1部復帰をテコに株価水準を引き上げ、長期的な戦略を打ちやすくする狙いがある。
「今、送りました」。3日午前、東芝の本社から東証に申請書類のファイルが次々と送信された。新型コロナウイルスの感染予防のために、対面での手続きを控えた。株式マーケットが不安定な中でも1部復帰を急ぐのには理由がある。
東芝は15年の不正会計発覚をきっかけに経営危機に陥った。その後債務超過に転落し、17年8月に2部に降格した。
傷んだ財務は17年の6千億円の増資や18年の半導体メモリー事業の売却などで立て直した。現在はインフラやエネルギーを中心とした事業構造で収益も安定した。

次の成長に向け、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)を使い、継続課金などで稼ぐ事業モデルを目指すが、収益化までは時間がかかる。
悩みの種が「物言う株主」の動きだ。17年の増資で米投資ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネージメントなど、物言う株主が大株主になった。株価や成長戦略に満足できず、取締役の選任や自社株買いの要求などで経営陣にプレッシャーをかけた。
19年までに7千億円の自社株買いを実施したが、多くの物言う株主は「現在の株価水準は割安」と東芝株を持ち続けている。1部復帰でTOPIXなどの株価指数に採用されれば、投資資金が流入しやすくなる。株価水準が上がれば、物言う株主の圧力は和らぐ可能性はある。
ハードの売り切りが中心だった東芝は、デジタル関連のビジネスのノウハウが少ない。そこで、独シーメンス日本法人や日本IBMの元幹部など外部人材の登用を進めている。1部復帰で知名度を高め、有望な人材採用にもつなげたい考えだ。

これまで1部復帰には監査法人の適正意見がついた有価証券報告書が5年分必要だったが、東証は2月に2年分に短縮した。東芝は19年12月、東証の基準緩和の動きをにらみ、1部復帰に向けた社内組織を立ち上げた。 ただ最短3カ月とされる審査期間は長引きそうだ。過去、不正会計で内部管理体制に問題がある特設注意市場(特注)銘柄になり、1月には子会社の架空取引も発覚。東証は過去5年以内に特注銘柄になった企業が1部に移行申請した場合、内部管理の改善状況を改めて検証するとしている。17年に東証2部から1部へ復帰したシャープは申請から承認まで約5カ月かかった。
東芝株の3日の終値は2449円と前日から3%上げた。日経平均株価が前日比0.01%高と小幅反発にとどまる中、東証1部への復帰申請が好感された。
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