米、雇用ショック不可避 早くも追加景気対策案が浮上

2020/4/3 16:29
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【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスの感染拡大で、米国は「雇用ショック」が避けられない。4~6月期の経済成長率は2桁のマイナス成長となり、失業率も10%を超えるとの予測が強まる。トランプ政権は2兆ドル(約220兆円)の経済対策で雇用を守ると主張するが、急激な景気悪化に政府資金の供給能力が追いつかないリスクが出てきた。

米国は新型コロナの感染者が23万人を超え、一国としては世界最多になった。全米50州のうち40州強が外出などを制限。米国の飲食店の売上高は「3月1~21日の3週間で既に47%も落ち込んだ」(全米レストラン協会)。国内外の人の移動が大幅に減って、米ホテルの稼働率も3月22~28日は23%まで低下した。

製造業や建設業も稼働停止を余儀なくされる。自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)は3月末までとしていた生産休止を延長し「再開時期は未定」(同社)だ。トランプ大統領も4月中の経済活動の本格再開を断念。そのため、ゴールドマン・サックスは4~6月期の経済成長率をマイナス34%(前期比年率換算)と予測。リーマン・ショック直後の08年10~12月期(8.4%減)の4倍もの急激な落ち込みになると警告する。

米経済は雇用を景気の調整弁に使いがちだ。とりわけ全米の雇用の5割を占める中小企業は苦境に立ち、外食業界では既に300万人が解雇されたと試算される。失業保険の申請は3月15~28日の2週間で約1千万件と爆発的に増加。2月の失業者数(580万人)を大幅に上回り、3.5%だった失業率も6月までに10%を突破するとの予測が強まる。

成長率も失業率も過去例のない急激な悪化幅だ。そのため、3月末に決めた2兆ドルの景気対策は、執行のスピードが景気の急落に追いつかない。中小企業には給与補填などに3500億ドルの融資枠を設けた。3日から申請を受け付けるが、500万社ある対象企業に対して、所管の中小企業局の人員は4千人に満たないとされる。中小企業の5割は手元の運転資金が15日分にも満たず、資金繰り破綻の危機が迫る。

ムニューシン財務長官は2日、大人1人に最大1200ドルを配る家計への現金支給も「2週間以内に開始する」と表明した。ただ、低所得層は貯蓄が少なく、米連邦準備理事会(FRB)の調査では、400ドルの予期せぬ支出にも対応できない家計が4割もある。解雇や無給休暇を余儀なくされた家計は、家賃などの支払いに事欠き始めた。

外出制限などで新型コロナの感染爆発が収まれば「6月には経済活動は元に戻る」(トランプ氏)。ゴールドマンも7~9月期の成長率はプラス19%と急回復を見込み、失業率も10~12月期には再び低下軌道に戻るとみる。一時的な株価の急落も下げ止まり感が浮かび、米経済はなおV字回復シナリオを前提に動く。

米政権と連邦議会は、追加の景気対策の検討にも着手する。ペロシ下院議長(民主)は「2兆ドルの対策は経済の救済が目的だった。次はインフラ投資など景気の回復に主眼を置く」と主張。トランプ氏も「新たに2兆ドル規模のインフラ法案が必要だ」と共同歩調をとる。3月末に決めた景気対策は企業や家計の緊急資金支援が柱で、雇用を積み増す大型のインフラ投資などは温存した。

企業倒産が増えて雇用が一段と悪化すれば、景気のV字回復も難しくなる。新型コロナの拡大と経済活動の停止という前例のない複合危機において、政策執行のスピードが何よりも重要になってきた。

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