新型コロナで急増 オンライン採用で成功する5つの鉄則

日経ビジネス
2020/4/7 9:08
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採用活動の基本である面接を実施することが困難になっている

採用活動の基本である面接を実施することが困難になっている

日経ビジネス電子版

新型コロナウイルスにより、企業の人材採用も大きな影響を受けている。外出の自粛が広がっていることもあり、採用活動の基本である面接や会社説明会を実施することが困難になっている。

そのため、オンラインでの面接や会社説明会を導入する会社が増えている。特に東京都の小池百合子知事が3月25日に外出自粛を要請したことで、「『面接は1対1なので大丈夫』というスタンスだった企業までオンライン面接を導入し始めた」(採用コンサルティングなどを行う人材研究所の安藤健氏)。

学生側も就職活動のオンライン化に寛容な姿勢を示している。学生約29万人が登録する「ベネッセi-キャリア」が2月下旬に実施した調査によれば、ウェブでの説明会や面接について「利用したい」または「抵抗はない」と回答した学生は61.7%と半数を超えた。

とはいえ「オンラインできちんと評価できるのか」「評価してもらえるのか」といった不安は会社側、学生側双方にあるのが実情だろう。学生とのつながりや情報量が不足し、ミスマッチが起きることを懸念する声もある。

■「アイスブレイク」が重要に

プリマハムは新型コロナの感染拡大に伴い、2次面接までオンラインで実施する方針を決めた。今後の状況によってはそれ以降の面接をオンライン化することも検討しているという。例年行っていたグループ面接など学生が密集する必要のある選考過程は取りやめる。採用担当者は「事態の推移を見守りつつ、役員面接もオンラインで対応できるように準備を進めている」と語る。

ただ、学生と直接会って向き合いたいとの思いも根強い。「入室時の所作や話す時の姿勢など、対面なら全体的な雰囲気を見られるが、オンライン面接はディスプレーからしか情報を得られない」(プリマハム採用担当者)と考えているためだ。

オンラインによる選考でも対面による採用と変わらず、自社にふさわしい人材を確保することができるのか。オンラインでの人材採用に乗り出した企業は、様々な工夫によって「壁」を乗り越えている。

「1時間の面接の内、15分くらいはアイスブレイクに使う」。こう語るのはカメラ・レンズメーカー、シグマ(川崎市)の人事課採用担当を務める小屋敷裕気氏だ。

アイスブレイクとは緊張を解きほぐすためのちょっとした会話や活動のこと。「ついつい話が盛り上がりすぎてしまうこともある」と小屋敷氏は笑うが、オンラインでの面接では、対面での面接以上にこのアイスブレイクが重要になると感じているという。

シグマは新型コロナの感染拡大を受け3月中旬に説明会の中止を決定。面接は3月下旬まで対面で実施していたが、4月以降は1次面接をオンラインで実施することを決めた。これまでも中途採用や遠方の学生を対象にオンライン面接を行ったケースはあったが、新卒採用の面接を本格的にオンラインで実施するのは今回が初めて。最終面接もオンライン化する可能性が濃厚といい、オンライン面接の重要性は増している。

2018年から採用活動をオンライン化しているUSEN-NEXT HOLDINGS。人事を統括する住谷猛執行役員は「学生の個性をどう引き出すかがオンライン面接の肝であり、面接官のテクニックが問われる」と話す。

2018年から採用活動をオンライン化しているUSEN-NEXT HOLDINGSで、人事を統括する住谷猛執行役員

2018年から採用活動をオンライン化しているUSEN-NEXT HOLDINGSで、人事を統括する住谷猛執行役員

20年の採用活動は新型コロナウイルスの影響もあり、エントリーから最終面接まで全てをオンラインで完結できるようにした。社員が自宅から面接に臨むケースもあるという。住谷氏は「採用活動のオンライン化はやり方次第で通常の面接と同じようにできる」と断言する。

オンライン面接を成功に導くために、住谷氏が実際の面接で取り入れているテクニックが以下の5カ条だ。

1.開始5分は緊張緩和を優先
オンライン面接が不安な学生も少なくない。年の近い若手社員が緊張をほぐしてから、管理職との面接に移行する「アイスブレイク」の時間を設ければ学生も落ちついて面接に臨みやすい。

2.質問は簡潔に、会話はゆっくりと
オンライン面接は直接の会話と比べて声が伝わらないなどのトラブルも起きやすい。学生側の通信環境にも配慮して、ゆっくり話すことを意識するだけでも会話の齟齬(そご)を少なくすることができる。

3.意図的にジェスチャーを多くする
「どう考えますか」などと質問をする際に、自分の手のひらを相手に向けるといったジェスチャーを加える。音声だけではなく、視覚にも訴求するコミュニケーションがやり取りを円滑にする。

4.あえてオフィス内で面接する
オンライン面接は受付業務などのプロセスを省力化できる分、学生が会社の雰囲気を直接感じられないことが欠点。実際に社員が働いている現場を背景にして面接をすれば、社風も伝わりやすい。

5.画面は「にぎやか」に
フォーマルな服装ではなく、明るい色の私服や会社のロゴの入ったTシャツなどを着ることで、砕けた雰囲気を演出。自社製品を画面内に配置すれば話のネタにもなり、学生の企業理解も深められる。

まず大事なのは、シグマの小屋敷氏も挙げていた面接開始直後の雰囲気づくりだ。オンラインは通信がつながればすぐに面接に臨める利便性はあるが、控室での待機時間がある対面での面接に比べて心の準備が難しい。「いきなり中高年の面接官が出てくると学生もびっくりして話しづらいかもしれない」(USEN-NEXTの住谷氏)。同社の最終面接では20代の若手社員がまずは画面で雑談をしてから、住谷氏にバトンタッチするようにしている。

「オンライン面接はパソコンの画面を通してしか相手を見られず、情報が少なくなる」との不安も、工夫次第だという。一部の学生は自宅などで面接を受けられる利点を生かし、思い入れのある物を活用することもあるようだ。

■オンライン採用で海外・地方の学生取りやすく

住谷氏が面接した学生は、画面に映る自室の壁に世界地図を貼っていた。そして「これは小学生のころから見ている地図で、いつしかグローバルの舞台で働きたいとずっと考えていた」とアピールしてきたという。

「オンラインは通常の面接よりも個性を出しやすい。捉え方次第で情報量が不足するというリスクは取り除ける」と住谷氏は話す。シグマの小屋敷氏も「自宅で面接を受ける学生は心なしかリラックスしているように見える。学生の『素』が見えるのは大きなメリットだ」と語る。

企業にとっては、受付人員の配置や、会議室の手配を省けるほか、これまで面接を行っていなかった時間にも設定しやすいなど、採用業務を効率化できるオンラインならではの利点もある。

最大のメリットは「地方の学生を含め面接の機会を増やすことができる」(住谷氏)ことだ。地方の大学に通う就活生は首都圏の学生よりも倍以上の費用がかかるという調査があるが、オンライン面接ならば住む地域は関係ない。企業にとっては、地方や海外の大学に通う優秀な学生を採用することが可能になり、社内の人材もより多様になる。「面接は対面でないと」という常識は、新型コロナウイルス対策をきっかけに大きく変わることだろう。その変化に適応できない企業は、人材獲得競争で後じんを拝することなる。

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス電子版2020年4月3日の記事を再構成]

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