「アビガン」治験の詳細明らかに 6月末にも終了

BP速報
2020/4/3 10:57
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新型コロナウイルス感染症を対象に国内で企業治験がスタートした「アビガン」(提供:富士フイルム)

新型コロナウイルス感染症を対象に国内で企業治験がスタートした「アビガン」(提供:富士フイルム)

日経バイオテク

富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が、新型コロナウイルス感染症を対象にスタートさせた抗インフルエンザ薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)の第3相臨床試験(企業治験)の詳細が明らかになった。第3相臨床試験は、重篤ではない肺炎を合併した新型コロナ感染症の患者を対象とし、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を対象に国内で承認されている用法・用量から、投与量を引き上げ、投与期間も長くする。

■目標症例数は96例

第3相臨床試験の対象は、非重篤な肺炎を合併した新型コロナ感染症の患者。20歳から74歳で、ウイルスの有無を検査するRT-PCR検査で新型コロナ陽性となり、胸部画像での肺病変、37.5度以上の発熱、治験薬投与開始前の妊娠検査で陰性を認める入院患者を組み入れる。酸素吸入が必要な患者は組み入れず、労作(身体を動かしている)時のみ呼吸困難を呈する肺炎の患者のみを対象とする。

被験者を、抗菌薬や輸液などの標準治療にアビガンを上乗せする群または標準療法にプラセボ(偽薬)を上乗せする群に割り付け(割り付け割合は非公表)、観察期間である28日間、アビガンの有効性、安全性を評価する。目標症例数は96例。ただし、「数十例を登録後に見直しを行い、必要に応じて症例数を増やす『アダプティブデザイン』とする」(同社の広報担当者)

第3相臨床試験の用法・用量は、1日目のみ1回1800ミリグラム×2回、2日目以降は1回800ミリグラム×2回で、最長14日間、経口投与する。国内で新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を対象に承認されている用法・用量は、1日目は1回1600ミリグラム×2回、2日目以降は1回600ミリグラム×2回で、総投与期間は5日間のため、投与量を引き上げ、投与期間も長くする格好だ。

ただ、富士フイルムは過去に、エボラ出血熱の感染拡大の可能性を念頭に、国内で健常者を対象としたアビガンの治験を実施したことがあり、その際の用法・用量は1日目のみ1回1800ミリグラム×2回、2日目以降は1回800ミリグラム×2回で、総投与期間は22日間だったが、安全性が確認されている。

日本感染症学会の「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対する抗ウイルス薬による治療の考え方」でも、アビガンの用法・用量は1日目のみ1回1800ミリグラム×2回、2日目以降は1回800ミリグラム×2回で、最長14日間とされており、国内の臨床研究でも同じ用法・用量が採用されている。

■解析後「速やかに承認申請」

第3相臨床試験の主要評価項目は、体温、酸素飽和度、胸部画像所見の軽快、新型コロナが陰性化するまでの期間。具体的には、症状軽快後、48時間後に一定の間隔で2回のRT-PCR検査を実施し、2回とも陰性だった患者を抽出して、投与開始から1回目のRT-PCR検査で陰性が出るまでの期間をアビガン群とプラセボ群で比較する。副次評価項目は、有害事象と7ポイントスケールによる患者状態推移とする。

既に被験者の募集を行っている。目標症例数が現状の96例のまま変更がなければ、6月末にも第3相臨床試験が終了する見通し。富士フイルムは「データ解析後、速やかに国内で承認申請したい」(広報担当者)考えだ。

■新型コロナに効く可能性

アビガンは、日本で2014年3月、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を効能・効果として承認された。ただし、既存の抗インフルエンザ薬には無い作用メカニズムを有していることや、動物実験の結果から催奇形性のリスクが懸念されることなどから「既存の抗インフルエンザ薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザ感染症の蔓延に備える医薬品」と位置付けられ、厚生労働相の要請がない限りは、製造などを行わないことなどの承認条件が課されている。なお、日本以外では、承認されている国・地域は無い。

アビガンの作用機序は、宿主(ヒト)の細胞でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝され、一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスの複製に関与するRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられている。加えて、これまでにさまざまな研究が実施され、インフルエンザウイルス以外にも、エボラ出血熱やマールブルグ病など複数の感染症へ有効性を示す可能性が示唆されてきた。

世界的に流行が広がっている新型コロナウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAウイルスだが、同ウイルスに対しても、アビガンがRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害するのではないかと期待され、中国や日本で複数の臨床試験や臨床研究、観察研究が実施されているところだ。

ただし、アビガンの物質特許は19年に失効しており、現在は製造特許だけが有効な状況。そのため、中国では中国企業が後発医薬品を製造・提供している。

(日経バイオテク 久保田文)

[日経バイオテクオンライン 2020年4月2日掲載]

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