EU、コロナ経済対策巡り南北対立再燃 被害にも格差

2020/4/2 19:37
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イタリアでは新型コロナウイルスの感染が急拡大した(3月31日、イタリアのミラノ中心部)=ロイター

イタリアでは新型コロナウイルスの感染が急拡大した(3月31日、イタリアのミラノ中心部)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】新型コロナウイルス感染拡大を受けた経済対策を巡って欧州連合(EU)加盟国間の亀裂が深まっている。感染危機が深刻なイタリアやスペインなど南欧諸国が救済基金や「コロナ債」と呼ぶユーロ共同債券の発行を求めるのに対し、オランダなど北部欧州は財政規律重視の姿勢を崩さない。リーマン・ショック後の債務危機時のような南北対立が再燃してきた。

「とても不快だ。EUの精神に反している」。ポルトガルのコスタ首相は3月27日、オランダのフクストラ財務相の発言に怒りを爆発させた。同氏はEUの会合で新型コロナの危機を乗り越えるために十分な財政余地のない国を調査すべきだと主張した。スペインを名指ししたとされ、同国のアランチャ・ゴンザレス外相は「EUという同じボートに乗っているのに」と嘆いた。

EUは各国に柔軟な財政出動を認めるため、財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えるなどのルールを一時停止することを決めた。未曽有の危機に結束して立ち向かう姿勢を示したかに見えたが、財政を巡る立ち位置の溝が根深いことを露呈した。

3月26日、EU首脳は欧州債務危機時に設けられた救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)の活用と、コロナ債の発行で合意できなかった。市場ではESM活用では合意できるとみられていたが、オランダが最後まで反対した。

ESMは4100億ユーロの融資能力を持ち、資金繰りに困った国を国債購入などを通じて支える仕組み。合意すれば各国はGDPの2%に当たる額の予備的な信用枠を申請でき、支援を受ける国は欧州委員会による財政状況の監視を受けるルールがある。イタリアが無条件の活用を求め、オランダはこれを拒否した。

コロナ債の実現はハードルがさらに高い。仏伊スペインなど9カ国は3月25日、書簡でミシェルEU大統領に実現を求めたが、オランダやドイツなど北部欧州は反対した。債券の共同発行は債務を共通にし、財政状態の良い北部欧州が、南欧の借金を肩代わりすることにつながる。債務危機時のように自国民の反発が高まりかねず、メルケル独首相は「ESMで十分」と主張した。

新型コロナの被害は北部よりも南欧で深刻な状況にある。イタリアやスペインの死者数は1万人前後に達する。これに対し、オランダやドイツの死者数は1000人前後にとどまる。南欧で死者が急増する一因として、債務危機を受けた緊縮財政の一環として公的サービスを削られて病床が減ったことを挙げる声もある。

「この危機にともに立ち向かえないなら、欧州は存在理由を失う」。コンテ伊首相は地元紙に語った。同国では他国の支援姿勢が積極的でないと不満が募る。伊野党の極右「同盟」のサルビーニ党首は「必要ならEUにさよならを言う」と反EUの姿勢を強めている。

ユーロ圏は2020年前半はマイナス成長が見込まれる。ドイツ銀行の欧州ウェルスマネジメント部門のチュアン・フィン最高投資責任者(CIO)は「金融政策と財政政策を最大限活用すべきだ」と訴える。ユーロ圏財務相会合は7日のテレビ会議で具体策を話し合う。

ミシェル氏は3月31日、フォンデアライエン欧州委員長、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁との協議の後、「いかなる選択肢も検討されるべきだ」と訴えた。危機時の足並みの乱れは経済面以外にも悪影響を及ぼしかねず、EU懐疑派を勢いづかせる懸念もある。

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