「劇場が否定される」裏方が語る公演自粛
新型コロナ対策で舞台監督が苦言

2020/4/9 2:00
保存
共有
印刷
その他

舞台監督として40年のベテランである大仁田雅彦氏

舞台監督として40年のベテランである大仁田雅彦氏

「新国立劇場のオペラ『ジュリオ・チェーザレ』の場合、40フィートコンテナ(約12メートル×2.5メートル×2.5メートル)で12本(基)分の舞台装置や大道具がパリから日本に到着し、うち半分近くを劇場に搬入していた。それをすべてパリまで返却することになったんです」。オペラなどの舞台監督で組織する「ザ・スタッフ」のメンバーで、昭和音楽大学教授でもある大仁田雅彦氏は語る。パリ・オペラ座から舞台装置や大道具などを借りて、4月7日から上演予定だったが、すべて中止になった。

新型コロナウイルスの感染拡大によって舞台公演の中止が相次いでいるが、多くがギリギリまで実現を目指して準備しているため、関係者には金銭面はもちろん、精神、体力にも大きな負担がかかっている。中でも実態を知るのは、リハーサルから終演後の撤収まで全体の進行を決める舞台監督だ。「今の状態が続けば、主催者はチケットの払い戻しをしながらリハーサルのコストを負う。次の公演を手掛ける体力がなくなる主催者もいるでしょう」と大仁田氏。

9年前の東日本大震災とは全く違うという。「今回は、劇場自体が閉鎖空間として否定される風潮にある。それが痛い」と大仁田氏。オペラやバレエ、ミュージカルなどの会場に「危険」というイメージが付いてしまった。しかし日本の劇場の体制や裏方スタッフの水準の高さは近年、海外でも注目され、見学者もしばしば訪れる。舞台監督はいわばそのトップで、日本の場合、仕事が細分化した欧米の裏方と違い、予算管理や海外との交渉、楽譜を見ながらのリハーサルの進行など何でもできる人が多い。

一方で日本では、企業にもユニオン(組合)にも属さない、フリーの舞台監督、スタッフがたくさんいるという。「そういう人たちは特に、これから厳しい」と大仁田氏は心配している。

(瀬崎久見子)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]