米、失業保険申請過去最大 雇用の安全網拡充急ぐ

2020/4/2 18:00
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職業相談所に並ぶ人々(3月17日、米ラスベガス)=AP

職業相談所に並ぶ人々(3月17日、米ラスベガス)=AP

【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスによる経済活動の大幅縮小で、米産業界では一時的に従業員を帰休・解雇する「レイオフ」が広がる。レイオフは職場復帰を原則とするケースが多いが、事業再開が遅れれば長期失業は避けられない。米政権は給与補填など企業の安全網づくりを急ぐが、ネット通販などが採用を大幅に増やすなど労働市場には柔軟さも垣間見える。

米労働省が2日発表した3月28日までの1週間分の失業保険申請数は、664万8千件だった。

市場予想(約260万件)を大きく上回り、過去最多だった前の週(330万7千件)の約2倍となった。通常の景気悪化時は段階的に失業者が増えるが、今回は経済活動が急停止したため、急激に雇用が悪化した。

米国特有のレイオフ制度の影響も大きい。レイオフは原則として将来の職場復帰を可能にしつつ、労働者を一時的に解雇したり帰休させたりする仕組みだ。日欧では景気悪化時も給与カットなどで雇用の維持を優先するが、米経済は雇用そのものが調整弁となる。企業はキャッシュフローの悪化を防いで事業を維持し、労働者はレイオフ時に原則として政府から失業給付を受けることができる。

ホテル大手の米ハイアットは1日、期間を5月31日までと当面区切って、従業員の減給と一時解雇に踏み切った。ホテル業界は新型コロナで稼働率が激減しており、ハイアットの雇用調整は米国内の従業員の7割が対象になりそうだ。マリオット・インターナショナルも3月半ばから60~90日間を前提に、数万人の従業員のほぼ全員を時短勤務か一時解雇とした。

小売業界も店舗の一時閉鎖が続く。百貨店のメーシーズは3月30日、13万人いる従業員の大半を一時解雇すると発表した。同社は「事業再開後に従業員を段階的に呼び戻す」とするが、時期は未定だ。製造業でもゼネラル・エレクトリック(GE)は、航空機の修理・メンテナンス部門の5割の従業員を対象に90日間の一時帰休を決めた。

2月時点の失業者は580万人で、失業率は3.5%だった。その後、3月中下旬の2週間で約1千万人が失業保険の給付を申請。職場復帰の時期などレイオフの程度にもよるが、失業率の急上昇は避けられない。米ゴールドマン・サックスは失業率が4~6月期中に13%に達し、金融危機直後の最悪時(10%)を大きく上回るとみる。

米政権は雇用悪化の歯止めに必死だ。3月末に成立した2兆ドルの景気対策では、中小企業の給与支払いを事実上肩代わりする制度を盛り込んだ。3500億ドル(約38兆円)の枠を設け、ムニューシン財務長官は「これで離職した従業員を呼び戻してほしい」と訴える。大手航空会社などへの資金供給も、雇用維持を条件とした。

トランプ大統領は「6月には経済活動を再開させたい」と主張する。民間調査機関も新型コロナの感染拡大が落ち着く時期を5~6月とみている。ゴールドマンは10~12月期には失業率が再び10%を切り、21年末には6%まで低下すると予測する。飲食店などサービス業の営業再開で、労働者の職場復帰が段階的に進むとみるからだ。

米労働市場には柔軟さがある。在宅勤務などで大手量販店の需要は増加。ウォルマートは15万人を追加雇用すると決め、ドラッグストア大手のCVSヘルスも5万人を臨時採用する。宅配需要の急増でアマゾン・ドット・コムは10万人を新規採用する。米経済は失業が拡大しつつある一方、早くも雇用の受け皿が生まれている。

もっとも、景気悪化が長引けば職場復帰が難しくなって本格的な失職につながる。GEは一時帰休だけでなく、航空機エンジン部門の1割にあたる2600人を解雇した。雇用の本格調整を避けるには、新型コロナの感染拡大に早期に歯止めをかける必要がある。

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