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新型コロナで海外競馬が中止 生産界にも影響波及

2020/4/4 3:00
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新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、国内の競馬が無観客態勢に入って1カ月余りが過ぎた。春のG1シリーズ初戦の高松宮記念(3月29日、中京)も、史上初の無観客で行われた。首都圏を中心に感染は拡大傾向で、平常体制への復帰の見通しは立たないが、他競技が軒並み中止・延期される中、数少ないライブスポーツとして生き残っている。

海外主要競馬国でも、現時点で施行中なのは米国の一部と香港、オーストラリア程度。欧州は芝競走のシーズン開幕を前に、各国が開催中止を決定。せり市場の延期も相次ぐなど、生産界にも影響が及んでいる。

JRA史上初の無観客G1として開催された高松宮記念(中京競馬場)=共同

JRA史上初の無観客G1として開催された高松宮記念(中京競馬場)=共同

例年ならこの時期、最大のイベントとなるドバイ国際競走は、3月28日に予定されていたが、22日に中止が決定。遠征した日本馬20頭(地方馬1頭含む)は混乱の中、29日に帰国した。

開催国のアラブ首長国連邦(UAE)当局は、17日に新規ビザの発給を停止した後、徐々に対策を強化し、開催を危ぶむ声も高まったが、国際競走の主催者側はずっと、火消しに躍起だった。22日の中央の開催終了後に現地入りを予定していた日本の関係者にも、直前まで「ビザは有効」として、受け入れる構えをみせたため、渡航予定者は22日夜に成田、関西両国際空港で出発を待っていた。だが、日本時間の22日午後10時すぎに中止が決定。結局、深夜のUターンを強いられた。

どうにか帰国、自宅隔離で騎乗できず

厳しかったのは先に現地入りしていた人々で、アーモンドアイ(ドバイ・ターフ出走予定)の主戦、クリストフ・ルメール騎手も含まれていた。不測の事態に備え、3月20~22日の中央での騎乗を取りやめてのドバイ入りだった。ドバイ国際空港は25日から発着を中止する切迫した状況の中、24日にどうにか帰国したが、直ちに2週間の自宅隔離となり、高松宮記念と4月5日の大阪杯(阪神)は騎乗できない。

20頭の遠征馬も曲折の末、28日に貨物専用空港から出発し、29日に帰国した。ただ、中止決定後の混乱した状況下で調教要員の確保もままならず、出国直前は普段通りの調教はできなかったと思われる。各馬が帰国後、いかに体調を戻していくかが課題となる。

昨年のドバイ・ターフを制したアーモンドアイは連覇を狙って今年も同レースに出走予定だったが、中止となった=ロイター

昨年のドバイ・ターフを制したアーモンドアイは連覇を狙って今年も同レースに出走予定だったが、中止となった=ロイター

今回、遠征した20頭中9頭は国内外のG1優勝馬で、中長距離の活躍馬が多い。アーモンドアイを筆頭に、昨年のオークス馬ラヴズオンリーユー、昨年の香港ヴァーズでG1初制覇を果たしたグローリーヴェイズ、1600メートルG1を3勝のアドマイヤマーズなども含まれる。

帰国後の検疫(3週)と体調回復に要する期間を考慮すると、国内で走るのは早くても5月。大阪杯は顔ぶれが手薄になり出走は12頭に。G1勝ち馬は5頭だが、直近1年の勝ち馬は牝馬2頭だけ。毎度のことだが、ノーザンファーム関係馬の遠征が多い。調整の主導権を取りやすく、外国人騎手を手軽に起用できるのが選好の理由だが、思わぬリスクが表面化した。

欧州は総崩れ、米国も追い込まれ…

海外の状況を示すのは、英国の専門紙「レーシングポスト」電子版。日本を含む主要競馬国の出馬表が掲載されるが、ここ数週間は開催の多い週末も、日本、香港、豪州と米国の一部が出てくるだけで、欧州の場名の脇には軒並み、「abandoned」(中止)の表示が並ぶ。英国の統括機関は3月17日に4月いっぱいの中止を決定。現時点でフランスは4月15日まで、アイルランドも4月19日までの休止が決まっている。

一方、米国はフロリダ州の各場が開催を続けているが、5月2日に予定されていたケンタッキーダービー(G1)は9月5日への延期が決定。西海岸最大規模のサンタアニタ競馬場(カリフォルニア州)は、27日の開催が当日に中止。感染者数が急増したニューヨーク近郊のアケダクト競馬場は、付設の駐車場が大規模な臨時のウイルス検査場に転用されている。

無観客とはいえ、開催が続いている意味は大きい。一寸先は闇だが、日本では3歳クラシックの前哨戦を全て消化し、4月の桜花賞、皐月賞のメンバーも固まった。だが、ケンタッキーダービーの場合、北米だけでなく、日本やドバイでも予選に当たる競走があり、着順に応じて与えられるポイントで、20の出走枠を争う。予選が正常に実施できないと本選もできない。4カ月余りの大幅な延期となったのはこんな事情があるためだが、現在の感染拡大状況をみると、9月開催も不透明といえる。

セレクトセールの売却額どうなるか

国内外の生産界への影響も広がっている。3~4月は米国で調教済み2歳馬のせり市場が行われるが、大手のファシグティプトン社はカリフォルニア州で予定されていたせり市場を6月に延期した。フランスでもアルカナ社が5月予定だった2歳馬市場を6月に延期している。

国内では4月28日に日本中央競馬会(JRA)が直接、育成した2歳馬を販売するブリーズアップセールが中山競馬場で開催予定。従来は一般の観覧も可能だったが、今回は現時点では出席者を絞って開催する方向だ。5月12日には札幌で、同15日には船橋で、調教済み2歳馬市場が開催予定で、現時点で変更の発表はない。

昨年は売却総額が200億円を突破したセレクトセール。今年はコロナウイルス感染の影響が懸念される

昨年は売却総額が200億円を突破したセレクトセール。今年はコロナウイルス感染の影響が懸念される

少し先の話だが、注目されるのは、昨年まで右肩上がりで実績を伸ばしてきた日本競走馬協会主催の「セレクトセール」である。昨年は2日間の売却総額が205億1600万円(税抜き)と、初めて200億円の大台を突破した。今年は7月13、14両日に開催予定だが、ディープインパクトとキングカメハメハという国内種牡馬界の2トップが昨夏にこの世を去り、高額馬が出にくい状況になっている。

コロナショックで株式や不動産などの価格が下落すると、業績を支えていた富裕層を直撃する。この市場はアベノミクスによる資産効果で業績を伸ばしてきた経緯があり、無事に開かれた場合、今後を占う試金石となりそうだ。

せり市場は資金力のある人々が集まる社交の場の性格を帯びており、貴族のスポーツだったかつての競馬の雰囲気を残す。雰囲気が盛り上がる中で競り合いが展開され、価格も上がるという構造に支えられていただけに、人が集まることが規制される状況は致命的で、欧州ではせり市場のオンライン化を図る動きも出始めている。

(野元賢一)

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