ソフトバンク孫氏、スプリント決着も揺らぐファンド

ソフトバンク
2020/4/2 11:48
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一難去ってまた一難となるSBGの孫正義会長兼社長

一難去ってまた一難となるSBGの孫正義会長兼社長

ソフトバンクグループ(SBG)傘下の米携帯通信4位スプリントと、同3位でドイツテレコム傘下のTモバイルUSが合併した。合併で発足する新会社「TモバイルUS」へのSBGの出資比率は2割となる。これまでスプリントへの出資比率は8割で、合併で経営権を手放すことになる。SBGは長年の懸案だった米通信事業と事実上決別できるが、新型コロナウイルスによる金融市場の混乱で「投資会社」としての経営には逆風が吹く。投資ビジネスを成長軌道に戻す道のりは険しい。

「合併完了はあくまで予定通りだが、ほっとしている」。スプリント買収から6年余り、曲折のあったTモバイルUSとの合併にSBG関係者は胸をなで下ろした。

米ベライゾン・コミュニケーションズなど競合に押され、事業環境が厳しくなっていたスプリントがTモバイルUSと合併し、生き残りへの道が開けたからだ。仮に単独のままで、スプリントの経営が行き詰まり企業価値が下がれば、2兆円を超えるスプリントの保有株を巡り、SBGは損失計上を迫られる懸念があった。

新生「TモバイルUS」はSBGの子会社ではなくなり、持ち分法適用会社となる。スプリントは4兆円超を超える負債を抱える「借金会社」だ。SBGはこれまでもスプリントの負債を親会社に代位弁済の義務がない「ノンリコース(非遡及)型」とし、本体に飛び火するリスクを抑えてきた。今回の合併でスプリントは子会社ではなくなるため、連結決算上、SBGのバランスシート(貸借対照表)からはスプリントの有利子負債が減る。

SBGの孫正義会長兼社長はスプリント買収からの道のりを「6年くらい、苦しく長い道のりだった」と振り返る。新会社の経営権はドイツテレコムに譲り、米通信事業に直接は関与しない方針だ。

孫氏を悩ませてきたスプリントの問題は一つの節目を迎える。しかし、ここにきて新たな難題が浮上している。

2日、昨秋1兆円の資金支援を決めたウィーカンパニーを巡り、支援の一環としていた既存株主からの同社株の公開買い付けを見送ると発表した。SBG側は買い付けを巡る当初の合意条件が満たされなかったとしているが、株主の一部は訴訟も辞さない構えだ。経営が悪化した投資先を巡るトラブルは今後も増える可能性もある。

SBGの経営では自社の時価総額(8兆円弱)と中国・アリババ集団、通信子会社ソフトバンクなど保有株の価値(約28兆円以上)の乖離(かいり)が深刻だ。「物言う株主」でSBGに出資する米エリオット・マネジメントの要求もあって、株価下支えに動くSBGは、3月23日に今後1年間で4.5兆円の資産を売却するなどして資金化すると発表した。調達資金のうち2兆円を自社株買いに投じ、残りで負債削減などを進める。

ただ、金融市場の先行きが不透明ななか、資産の売り時をはかっていくのは容易ではない。焦点はアリババ株だ。4.5兆円の資金をつくりだすには、SBG保有分で十数兆円の価値を持つアリババ株の売却が「近道」だが、同社株は巨額資金を運用するSBGのいざという時の信用力の担保になってきた。

「アリババ株が売却される分だけ、SBGの信用力が落ちかねない」(市場関係者)。25日には、SBGの資産売却計画を受けた格付け会社ムーディーズ・ジャパンが「保有資産が割安な価格で現金化され、残った投資先の価値が低下する」としてSBGの発行体格付けを2段階引き下げると発表した。SBGは適切に資産を売却して財務改善も進めるとしており、「(ムーディーズの格下げは)誤った理解だ」と反論。SBGが格付け依頼を取り下げる異例の展開となった。

新生「TモバイルUS」の保有株について孫社長は「売りたい」と漏らしているという。ただし、この保有株については4年間の売却制限がついており、当面はドイツテレコムに対し、一定の比率の持ち分を売ることしかできない。こちらも早期に現金化するのは難しい。

ウィーカンパニーの経営難など運用額10兆円の「ビジョン・ファンド」の綻びが明らかになるなか、コロナの影響はユニコーン(企業価値1000億円以上の未上場企業)など投資先に広がる。3月27日には、持ち分法適用会社である英衛星通信スタートアップが破産を申請した。

ビジョン・ファンドはすでに約90社に出資しており、10兆円分の投資を終えている。コロナでファンド投資先の企業価値が下がれば、そのままSBGの利益は目減りする。2019年10~12月期のファンド事業の営業損益は2251億円の赤字。強気の投資戦略を進めてきた孫氏が正念場を迎えている。(堀田隆文、井川遼)

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