米流通にコロナ感染不安広がる アマゾンでは抗議のスト

2020/4/2 4:31 (2020/4/2 7:40更新)
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新型コロナ感染者が見つかった施設の閉鎖を求めるストを起こしたアマゾン従業員ら(30日、ニューヨーク市)=AP

新型コロナ感染者が見つかった施設の閉鎖を求めるストを起こしたアマゾン従業員ら(30日、ニューヨーク市)=AP

新型コロナウイルスの感染拡大局面で事業を続ける米流通企業が、安全面の不安を訴える従業員らの反発に直面している。アマゾン・ドット・コムや食料品宅配サービス大手インスタカートでは、感染予防対策のあり方や非常時下の待遇に対する抗議のストライキが起きている。労働者らの反発が強まれば事業の継続や収益にも響く恐れがあるだけに、各社の悩みは深まる一方だ。

アマゾンではニューヨーク市郊外のスタテン島にある物流施設周辺で3月30日昼、小規模なストライキが起きた。施設内で新型コロナの感染者が確認されたにもかかわらず、物流倉庫を稼働させ続けた会社側の姿勢に抗議するためだ。

ストライキを主導した従業員のクリス・スモールズ氏は「アマゾンはいつも労働者と地域の安全を保つより、見えないところで問題を処理することを選ぶ」と非難した。アマゾンに対し、感染者の出た倉庫を即座に閉鎖するよう求めた。

従業員側とアマゾン側の言い分は食い違っている。アマゾンの広報担当者は「スモールズ氏は感染した従業員の近くにいたため2週間の自宅待機を指示したが、これを無視して出社し、従業員らを危険にさらした」と主張。同氏を解雇した。ストライキ参加者も「同拠点の5千人の従業員のうち15人にすぎない」という。この物流倉庫に入る従業員をすべて検温しているとして「非難には根拠がない」と訴えた。

ストライキが起こった物流拠点はニューヨーク市周辺では規模が最大級。マンハッタンなど市中心部へ配送する商品の大部分を保管しており、短期間であっても全面閉鎖となれば業務に支障が出る。配送が止まれば、新型コロナによる外出制限でネット通販に頼っている市民らから不満が吹き出るのは必至だ。早期の幕引きを図ろうとする姿勢にはアマゾンの焦りも透けて見える。

もっとも、アマゾンの対応をめぐっては米司法当局も批判を強めている。ニューヨーク州のジェームズ司法長官は3月30日、「ストライキの権利はニューヨークの法律で認められており、経営者側からの報復行為は固く禁じられている」と主張。アマゾンによる従業員の解雇は「不道徳で非人道的だ」と非難し、全米労働関係委員会の調査を要請した。

アマゾンは新型コロナの感染者が見つかったケンタッキー州にある物流拠点でも、州知事の指示に従って3月26日に約1週間の閉鎖を決めている。4月1日にはミシガン州にある物流拠点でも従業員らが安全な労働条件の確保を求めてストライキを実施する計画が明らかになった。労働者側や当局の圧力が強まれば、アマゾンが今後、新型コロナの感染者が出た物流倉庫の運営方針について見直しを迫られる可能性は高い。

食料品宅配のインスタカートでも3月30日、配達業務を受託する一部の運転手が1回の注文当たり5ドルの危険手当支給など待遇の改善を求めて計画的なボイコットを実施した。会社側は「業務に全く影響を与えなかった」と説明するものの、運転手側は手指の消毒剤を配布するなどの対応について「悪趣味なジョークだ」と批判を強めており、対立は長期化する可能性がある。

「巣ごもり消費」の拡大で需要増に直面するアマゾンは米国で10万人、インスタカートは北米で30万人規模の新たな雇用を創出するとそれぞれ表明している。両社はともにレストランやバーなどで職を失った人々の一時的な雇用の受け皿となることを目指しているが、従業員の間で勤務中に感染することへの不安が広がれば、採用活動が難航するおそれもある。

感染リスクにさらされながら業務を続ける従業員らに報いるため、ウォルマートは1人当たり150~300ドルの特別ボーナスを4月2日に支給することを決めた。総額は3億6500万ドル(約400億円)以上に上る見通しだ。アマゾンも従業員らに報いるため、米国内の最低時給を15ドルから17ドルに引き上げるなどの待遇改善を表明している。

アマゾンは時給引き上げについて一時的な措置としているものの、流通各社は軒並み従業員の待遇改善に動いており、採用競争力の観点から元に戻すのは容易ではない。長期的な固定費の上昇につながれば、業績を圧迫する要因となる。

(ニューヨーク=高橋そら、シリコンバレー=白石武志)

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