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将棋AI受賞に複雑な思いも 「エルモ囲い」が升田賞

2017年には将棋ソフト「PONANZA」が佐藤天彦名人(当時)と対戦し、2連勝した

将棋界最高の栄誉の一つが、人間以外の存在に贈られることになった。「ソフトの名前がここまでなじんだ戦法はないのでは」(瀬川晶司六段)、「アマチュアにも分かりやすい。賞にふさわしい」(中川大輔八段)。1日に開かれた2019年度「升田幸三賞」の選考会では、選考委員から将棋ソフト「elmo(エルモ)」が広めた「エルモ囲い」を評価する声が相次ぎ、受賞が決まった。将棋AI(人工知能)ともいわれるソフト発の戦法が同賞を受けるのは初めてだ。

中原誠名誉王座の「中原囲い」「中原流相掛かり」、藤井猛九段の「藤井システム」、近藤正和六段の「ゴキゲン中飛車」――。「新手一生」を掲げた名棋士、升田幸三実力制第四代名人にちなむ同賞の過去の受賞者にはそうそうたる棋士の名前が並ぶ。自身の名前や愛称がつく戦法を作り上げて同賞を受けることは、将棋の歴史にその名を残すことに他ならない。

将棋AIが広めた「エルモ囲い」の代表的な形。振り飛車への有力な対抗策とされ、プロ棋士も公式戦で採用するようになった

それだけに、AIの受賞が決まったことに複雑な感情を抱く棋士もいる。「"悔しい"を通り越して、寂しいとも思う」。考案した「飯島流引き角戦法」で09年度の升田賞を受けた飯島栄治七段はこう打ち明ける。「夢が無い話だが、人間だけで新戦法を生み出すのは、もう難しいかもしれない」

今やエルモなどの将棋ソフトの多くは、誰でもダウンロードでき、プロ・アマを問わず、研究に利用されている。AIがトップ棋士をしのぐ棋力を持つに至った現在、「影響を受けていない戦法はない」(瀬川六段)のが実情だ。選考委員としてエルモ囲いを推した中川八段も、「今後もソフトばかりが受賞するようだと棋士の存在意義が問われる」と危惧する。

人間の復権はなるか――。AIにも詳しい将棋界の第一人者、羽生善治九段はかねて、こう指摘する。「将棋のAIはいろんな選択肢、可能性を示してくれる。AIが出した答えを記憶して、という姿勢ではなく、AIで人間の発想の幅を広げて新しいものを生み出していく。それが一つの理想」

飯島七段も諦めてはいない。「ソフトを使えば対抗策もすぐ出てきてしまうので、もちろん簡単ではないですが」と前置きしたうえで「自分で考えた手をソフトでブラッシュアップしたりして、チャンスがあればまた新戦法を作りたい」と自らを鼓舞するように語った。

(柏崎海一郎)

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