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大阪に博覧会資料2万点、熱気を後世へ 乃村工芸社

時を刻む

石川さんが持つのは1877年に東京で開かれた第1回内国勧業博覧会の錦絵(大阪市)

ディスプレーデザイン大手、乃村工芸社の大阪事業所(大阪市浪速区)には19世紀以降、国内外で開かれてきた様々な博覧会の資料コレクションがある。公式記録やポスター、パンフレット、記念品など、その数は約2万点に及ぶ。データベース化された資料からは、開催された時期に人々をひきつけていた事物やその時代を覆っていた空気をうかがい知ることができる。

コレクションの中核になっているのは大阪府の博覧会研究家、寺下勍(つよし)さん(2014年死去)が40年以上かけて収集した品々だ。

博覧会のパビリオンやディスプレーの多くは閉会後に取り壊される仮設の建物・装飾であり、ポスターやパンフなども意識して保存しなければなくなってしまう。ディスプレー業界の企業を渡り歩いた寺下さんは、こうした資料が失われていくことを惜しみ、個人で収集を始めたという。

先人の業績に光

珍しい"お宝"収集を追求するのではなく、あくまで研究資料を集めるというのが寺下さんの姿勢で、収集品をもとに日本で開かれたすべての博覧会の年表作りを進めた。研究会を組織して日本の博覧会について調査し、展示に関わった先人の業績に光を当てた。

集めた膨大な資料を保管するため堺市の自宅近くに別の住宅を借りていた。乃村工芸社に資料を寄贈したのは01年。現在もコレクションの管理を担当する石川敦子さんらが4年近くかけて資料を整理し、データベースを作った。「博物館に寄贈すると眠ったままになってしまうかもしれない。活用し、社会の役に立ててほしいというのが寺下さんの希望でした」

コレクションには様々な博覧会の記念グッズも。手前は幻となった万博(1940年開催予定)の入場券

寄贈資料には、明治期の内国勧業博覧会を描いた錦絵や昭和期に全国各地で開かれた多様な博覧会の会場を描いた図版、1940年に東京で開催される予定だった幻の万博の会報、戦後復興期の50年に開かれた神戸博覧会で制作された小磯良平画伯のモダンなポスターなど貴重な品々がある。

同社は他からも博覧会関連資料の寄贈を受け入れ、自社が関わった博覧会の展示資料なども加えて「博覧会資料コレクション」としてインターネットで公開。公的機関が開く展覧会への貸し出しもしている。2005年の愛知万博の関係資料は、運営組織の内部文書や多様な記念品など2千点近くに上っている。

文化研究に活用

錦絵や図版、ポスターなどを見ると、その時代の空気がうかがえる。明治期は産業振興や近代国家建設、戦前は国威発揚や国防、戦後は復興、地域振興の色彩が濃くにじみ出ている。

研究者らには閲覧を許しており、橋爪紳也大阪府立大特別教授の提唱で博覧会文化史研究会が組織され、関心を持つ若手研究者や企業の実務家が増えていった。佐野真由子京都大教授らによる博覧会研究会には石川さんも加わった。参加した研究者や実務家の論文をまとめた「万国博覧会と人間の歴史」(思文閣)が15年に出版され、その後の研究成果をまとめた続編がこの7月に出る予定だ。

25年国際博覧会(大阪・関西万博)が決まって以降、万博関係者らの閲覧や貸し出し依頼が増えている。長崎歴史文化博物館(長崎市)では7月から8月にかけ同社の博覧会資料コレクションを多く展示する展覧会「博覧会の世紀」が開かれる。

担当の学芸員、竹内有理さんは「長崎では江戸時代に博覧会の前身とも言える異国文化の見せ物興行があった。日本の博覧会の通史を見ていただければ」と語る。博覧会資料コレクションにはいずれ25年万博の資料が多く加わるはずだ。それらは博覧会の歴史の中でどのような位置づけがされるだろうか。

(堀田昇吾)

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