中国4大銀、中小企業に融資拡大 新型コロナで資金繰り難

2020/4/1 19:30
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中国の中小企業は新型コロナウイルスの打撃を受けている(3月下旬、江蘇省の部品工場)=ロイター

中国の中小企業は新型コロナウイルスの打撃を受けている(3月下旬、江蘇省の部品工場)=ロイター

【香港=木原雄士】中国工商銀行など中国の四大国有銀行が中小企業向けの融資を増やしている。新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化する企業の資金繰りを支える狙いだ。1日までに出そろった2019年12月期決算は4行平均の不良債権比率が低下するなど堅調な内容だったが、景気低迷が続けば不良債権が増加するリスクもある。

19年12月期は手数料収入が増えるなどして、全行が4~5%の増益だった。19年末の不良債権残高は4行計で8181億元(約12兆円)と、18年末と比べて3.2%増えたものの、貸し出しの伸び(9.9%)は下回った。不良債権比率は平均1.41%、要注意先にあたる関注債権比率は2.53%で、いずれも3期連続で低下した。

各行が決算会見で強調したのが新型コロナを受けて資金繰りに苦しむ企業への支援だ。工商銀の谷●(さんずいに樹のつくり)行長(頭取に相当)は1月下旬以降、貸し出しや社債引き受けの形で1500億元を供給したと明らかにした。約1万8千社の融資先に対して返済期限の延長に応じ、うち1万7千社は中小・零細企業だという。

中国建設銀行の劉桂平行長も「感染症の予防と制御に900億元以上を供給した」と強調した。新型コロナによる操業停止や店舗閉鎖で業績が悪化した企業が多く、緊急措置で当面の資金繰りを支える。中国メディアによると、中国農業銀行は2月時点で中小・零細向け融資残高が1兆元を超えた。

各行がこうした手厚い支援を強調するのは、銀行を監督する中国銀行保険監督管理委員会が中小企業の元利払いの期限延長などを指示したためだ。ただ、こうした支援策は企業の業績が改善しなければ、不良債権につながりやすい。

工商銀の谷氏は「今期は資産の質に大きな圧力がかかる」と指摘した。中国銀行の劉堅東・最高リスク責任者(CRO)も「飲食や小売り、輸送などの消費・サービス産業は新型コロナの直接的な影響を受ける。今年上期に延滞債権や不良債権が増える」と認めた。

地方銀行を含む商業銀行全体の不良債権残高は19年末に2兆4135億元と、18年末と比べ19%増えた。19年5月に内モンゴル自治区の包商銀行が事実上破綻するなど、新型コロナの前から地銀の経営不安が相次ぐ。日本総合研究所の関辰一・主任研究員は「体力の弱い中小金融機関の連鎖的な破綻が起こりうる状況だ」と話す。

米格付け会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月末に南京銀行や寧波銀行など地方銀行6行の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。これらの銀行は「中小・零細企業や、新型コロナの影響を受ける業種向け貸し出しの比率が高い」という。S&Pグローバル・レーティングスも2月に「(要注意先などを含む)不良債権比率が2倍になる可能性がある」とする分析をまとめた。

中国の金融システムが世界経済に及ぼすリスクは、08年の世界金融危機の際と比べ格段に高くなっている。四大銀は強固な財務基盤をテコに急ピッチで貸し出しを積み増し、19年末の総資産は100兆元を超えた。直近10年間での総資産の伸びは、米銀トップのJPモルガン・チェースが3割ほどにとどまったが、世界トップの工商銀は2.6倍に達した。

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