富士フイルム、新型コロナに「アビガン」国内治験開始

2020/4/1 14:20
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富士フイルムが治験を開始する抗インフルエンザ薬の「アビガン」(提供:富士フイルム)

富士フイルムが治験を開始する抗インフルエンザ薬の「アビガン」(提供:富士フイルム)

日経バイオテク

富士フイルムホールディングスは3月31日、国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象とした「アビガン」(一般名:ファビピラビル)の治験(臨床試験)を開始したと明らかにした。

富士フイルムは、2020年2月下旬に政府からファビピラビルの増産に向けた検討要請を受け、3月上旬に生産を再開。「現在は感染拡大で需要がさらに増える可能性を視野に、サプライチェーンの調整などを進めている」(同社の広報担当者)。並行して、3月に入ってから、企業主導の治験の実施について検討を進めていた。

治験のデザインや施設数、被験者数、組み入れ基準、対照群を設けるかどうかなど、今回実施する治験の詳細はまだ公開されていない。ただ「承認取得を目指した治験になる」(同社の候補担当者)という。

富士フイルム富山化学が創製したファビピラビルは、国内で14年3月、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を効能・効果として製造販売承認を取得した。ただし、既存の抗インフルエンザ薬には無い作用メカニズムを有していることや、動物実験の結果から催奇形性のリスクが懸念されることなどから、ファビピラビルは「既存の抗インフルエンザ薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザ感染症のまん延に備える医薬品」と位置付けられ、厚生労働大臣の要請がない限りは、製造などを行わないことなどの承認条件が課されている。

ファビピラビルの作用機序は、一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスの複製に関与するRNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられている。加えて、これまでにさまざまな研究が実施され、インフルエンザウイルス以外にも、エボラ出血熱やマールブルグ病など複数の感染症へ有効性を示す可能性が示唆されてきた。

世界的に流行が広がっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、一本鎖プラス鎖RNAウイルスだが、同ウイルスに対しても、ファビピラビルが同じようにRNAポリメラーゼを阻害するのではないかと期待され、中国や日本で複数の臨床試験や臨床研究、観察研究が実施されているところだ。ただし、国内では富士フイルムの製造したファビピラビルが投与されているが、ファビピラビルの物質特許は切れていることから、中国では、中国企業が製造・提供しているファビピラビルの後発医薬品が投与されている。20年3月17日には、中国科技部(日本の文部科学省に相当)の生物中心は、2本の臨床試験の結果から、「COVID-19にファビピラビルが有効である」との見解を示している。

■中国の臨床試験のデザインには限界も

うち1本は、中国の3施設で実施されたランダム化非盲検試験。対象は、18歳以上で、胸部CT検査と臨床検査でCOVID-19への感染が確認され、肺炎を呈した中等度の患者240例。同臨床試験は2月20日から3月12日にかけて実施された。

被験者は、標準治療にファビピラビルを上乗せする群と、対照群として、標準治療に中国とロシアで抗インフルエンザ薬として使われている「Arbidor」(一般名:Umifenovir)を上乗せする群に120例ずつ割り付けられた。主要評価項目として用いた、投与7日後の回復率は、ファビピラビル群で71.43%、Arbidor群で55.86%と、ファビピラビル群で有意に高かった。

もう1本は、中国深セン市第三人民医院で実施された非ランダム化非盲検比較試験。対象は、PCR検査で新型コロナウイルス陽性と診断され、発症から7日以内に同医院に入院した16歳から75歳の患者(症状が重篤な患者は除外)。

同臨床試験では、1月30日から2月14日まで入院した35例を、標準療法に加えてファビピラビルの投与にインターフェロンα(IFN-α)吸入を併用する群に割り付けた。また、対照群は、1月24日から1月30日までに入院し、治療を受けていた症例のうち45例を、標準療法に加えて抗HIV薬のロピナビル・リトナビル配合薬の投与にインターフェロンα吸入を併用する群とした。主要評価項目は、胸部CT検査の画像所見の改善率など。その結果、ファビピラビル投与群で91.43%、ロピナビル・リトナビル投与群で62.22%で、ファビピラビル群で有意に高かった。

ただし、いずれの臨床試験も、ランダム化されていなかったり、盲検化されていなかったり、別々の期間に被験者の組み入れを行っていたりと、臨床試験デザインには限界もあり、「COVID-19への有効性を示す十分なエビデンスとは言えない」との指摘も出ている。

(日経バイオテク 久保田文)

[日経バイオテクオンライン 2020年3月31日掲載]

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