今日も走ろう(鏑木毅)

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新社会人、希望胸に進め 夢中で取り組む経験が糧に

2020/4/2 3:00
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新型コロナウイルスの影響で先行きが見えない日々が続く。

4月1日は新年度のスタートだが、今年は入社式も実施できない職場もあると聞く。二十数年前に大学を卒業した私は2浪の上、さらに1年留年し、民間企業への就職は絶望的だった。そのため同期が高い志を持ち入庁する一方、自分は「公務員になるしかない」という状況。当然、意識に隔たりがあった。

富士山頂まで応援に来てくれた県庁時代の職場の仲間と(2005年の富士登山競走)

富士山頂まで応援に来てくれた県庁時代の職場の仲間と(2005年の富士登山競走)

まず挙げれば、私は上司の指示があるまで動かない典型的な指示待ち人間だった。大組織の中で微力な自分の頑張りなど取るに足らないと思え、これまで頑張ってきたスポーツに取り組むような前向きな気持ちになれず、とりあえずは大過なく仕事をやり過ごしていた。

30代で地域振興の仕事に就いた時に転機が訪れた。異動直後、商店街の振興と称してはいるもののいわば体裁を繕うだけといった会議の席で、ある商店主から辛辣な言葉を投げかけられた。「あなた方はこのプロジェクトが失敗しても上司に頭を下げるだけでいいでしょう。私たちには死活問題なんですよ」。引き継ぎもろくにされていない自分に言われても……。そうは思ったけれど、実際何もできない自身の無力ぶりにいら立ちもした。

それからは地域振興に関する本をむさぼり読み、成功している地域を家族旅行を兼ねて訪れては理由を分析した。実際に成功に導いたキーマンに会い、苦労話を披露してもらったこともある。その知識を元に県内各地で住民とコミュニケーションをとり、地域活性化の勉強会やイベントを住民主体で開催するなど、元気のない街や村を活気づけることに夢中になった。そこは役所の常で、のちに異動でその仕事からは離れた。それでもやっと一つのことをやり遂げたという確固たる自信は私を大きく変えた。

サラリーマンは自分が努力しても必ずしもその通りに周囲が認めてくれるとは限らない。そんな時には仕事以外に夢中になれるものも必要だ。30歳前に出合ったトレイルランニングのおかげで私のプライベートは充実し、週末に山を走りながら心身のバランスを保つことができた。

結局40歳で県庁を辞めプロのトレイルランナーに転向することになったのも、決して公務員の仕事が嫌になったからではない。たった一度の人生を世界の舞台で活躍したいと、己の可能性にかけたというのが理由だ。ただその背景にはこのスポーツを通して大好きだった地域振興の仕事に再びかかわることができるという思いもあった。30代に仕事に夢中で取り組んだ経験は無駄ではなかったということ。

仕事が生きがい、人生の全てだなんていう時代は終わったようだ。もちろん、好きな仕事に出合ったなら夢中になって必死で取り組めばいい。いずれ転職するにしても、全力で成し遂げた経験が次のステップにつながるはずだ。多くの場合、仕事は自分の思い通りにならない。嫌々でも頑張るうちにやりがいが発見できるかもしれないし、どうしても無理だと思ったら、仕事以外に夢中になれる何かを探して日々を充実させてみるのもいい。人生の成功のタネはどこに転がっているかは本当にわからないのだから。視界不良、そんな社会情勢だからこそ、新社会人のみなさん、たくさんの希望を胸に前に進んでください。

(プロトレイルランナー)

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