ハンガリーの首相権限、無期限に拡大 「独裁」か - 日本経済新聞
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ハンガリーの首相権限、無期限に拡大 「独裁」か

【ベルリン=石川潤】ハンガリー議会は30日、強権統治で知られるオルバン首相の権限を期限を定めず、大幅に拡大する法案を可決した。新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態に対応するための措置だが、無期限の首相権限の拡大は極めて異例で、野党側が独裁につながりかねないと強く批判している。

オルバン政権はすでに非常事態を宣言し、学校の封鎖や市民の移動制限などの措置を導入している。今回の法案は、非常事態に伴う政府の権限拡大を無期限に引き延ばす内容で、議会のチェックなどが働かない事実上の「権力の白紙委任」(地元メディア)となる可能性がある。

野党側が問題視するのは、新型コロナとの戦いを妨げるような「フェイクニュース」を流した場合、最大で5年間収監されるという項目が法案に盛り込まれた点だ。政府に批判的なメディアや個人への威嚇に利用されかねないとみている。

オルバン政権はこれまでもメディアを強く統制し、世論を巧みに誘導して政権基盤を安定させてきた。経営の苦しい独立系メディアを一段と追い込み、報道の自由を奪うことも考えられる。

オルバン政権は法案について「期限を明示できないのは(新型コロナの終息まで)どれだけかかるかが分からないためだ」などと説明する。感染拡大の阻止が狙いで、独裁との批判は当たらないとの姿勢だ。

非常事態に伴う権限拡大は欧州のほかの国でもみられるが、期限を区切ることが多く、議会などによる何らかのチェックが欠かせない。オルバン政権はこれまで、民主主義の原則をないがしろにする言動を重ねてきた。

ハンガリーと共に欧州連合(EU)を構成するドイツの公共放送ドイチェ・ウェレは、ハンガリーが「無期限、無制限の権力を持つ欧州で唯一の国」になると非難する。

イタリアのレンツィ元首相は30日「EUは行動し、オルバン氏に考えを変えさせなければならない」と指摘した。欧州評議会も「非常措置は厳密に釣り合いの取れたものでなければならない」と批判する。

米ジョン・ホプキンス大学によると、30日時点でハンガリーの感染者数は447人、死者は15人にのぼる。2010年から続くオルバン政権は「非リベラル民主主義」を掲げ、難民受け入れの是非などを巡ってEUと激しく対立してきた。

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